表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/7

6.家族とのひと時

 あとがきにこの物語が生まれた経緯などをぶちまけますので、ネタバレを控えたい人はページトップから次に飛ぶのをお勧めします。

 茜ちゃんの家から五分くらいのところに私の家はある。

「ただいま帰りました。」

 古い日本家屋で比較しなくとも広い我が家だが、ここには私を含めて三人しか住んでいない。以前は祖父母がいたが、二人とも私が幼いころに病気で他界している。

「お帰り。今日もお疲れ様。」

 靴を脱いで立ち上がったところで父さんが出てきた。家にいるときは藤色や菫色などの紫系の色の和服を着流している。帯は緩め。色に関しては単純に父さんの好み。帯に関しては、決してだらしない、ずぼら、出鱈目といった性格ではないが、プライベートではあえて気を抜いているらしい。職業柄、不定休なうえに常に気を張っていなくてはならないが故だと思う。

「母さんは?」

「部屋で手紙を書いているよ。大分イレギュラーなものらしくて、急に書き始めたから今日のご飯は僕のだよ。」

 着替えなどを済ませて夕飯の準備をする。母さんがいつ来るかわからないから盛り付けは後にして味噌汁やおかずなどを温めなおす。味噌汁がちょうどいい温度になったところで母さんが部屋から出てきた。

「何かあった?」

「・・・どうやら、本家の方でトラブルがあったらしくて、その解決の為に資料を求められたから、纏めたものと手紙を送ったわ。あと、その事と御家には関係ない話ではあるけど、よくないことが起きているという知らせもあったわ。」

心労によるものだろう、かなり顔色が悪い。資料をそろえるのが大変だったのか、”よくない知らせ”が深刻だったのか。

 それはそれとして、今日の夕飯は手がかかっている。母さんの分だけ。まずおかずも味噌汁もご飯の炊き具合も母さんの好みに合わせている。特に筑前煮。具材の種類はもちろん、具材の大きさから、味付け、味の濃さ、盛り付けに至るまで徹底されている。母さんの分だけなんか見栄えが違う。やり過ぎ。

「とりあえず、ご飯にしよう。」

「ええ・・・そうね。」

父さんがそう言うと母さんは座布団に座った。・・・これは結構大事かもしれない。

 こういう時は決まって父さんから聞いた馴れ初めの話を思い出す。母さんと出会ったのは大学。同じ大学の同じ学部、学科は違ったらしいけど。父さんが四年生、母さんが一年生の時のこと、学食の隅でうなだれている母さんに声をかけたのだという。なんでも幼馴染の剣崎さん(茜ちゃんのお父さん)に、同じく幼馴染の鞘師さん(茜ちゃんのお母さん・旧姓)と一緒に告白して振られて落ち込んでいたところだったとか。父さん曰く、「放っておいたら死にそうだった。」くらいの落ち込み様だったから、見ず知らずの仲なのにも拘らず必死に励ましたそうな。その甲斐あってか一コマ分潰したけれども何とかなったらしい。それからというもの、しばらくの間は父さんが母さんを探しては励まし続け、もうすぐ冬休みになるって時に父さんの方から告白した。初めは断ったらしいけれども、それからは会う理由が励ましから口説きに変わり、まだ付き合ってもいないのに母さんの実家、つまりここにまで足を運んだらしく、とうとう母さんが折れたそう。これは母さんから聞いた話だけど、母さんの方はこれ以上迷惑をかけるのは申し訳ないと思っていたらしく、頑なにに断っていたのだが、冬休みの件の時に今は亡き祖父から本心を問い質されてようやく素直に慣れたとのこと。こういう話は普通母親がするものだと思うけど。今でも、二人の仲の良さは変わらない。下世話な話をすると、正直なところ茜ちゃんのところみたいに二人目三人目がいてもおかしくないと思ったので二人に聞いてみたら、二人に同じことを返された。

『これ以上あの人のこと以外で手のかかることを増やしたくない。』

それまで厳しめの人だと思っていた母さんから父さんと同じ惚気を聞いてかなりの衝撃を受けたのを覚えている。

 そんな父さんがここまでしているのだから、母さんのストレスは相当なものだろうと思うが、それでも、茜ちゃんのことは聞いておきたかった。

「少し訊きたいことがあるのだけど、剣崎さんの娘さんの茜ちゃん、知ってる?」

「ああ、剣崎さんの。そうだなあ。」

 先の通り、剣崎夫妻と母さんは幼馴染ということもあり今でも家族ぐるみの付き合いがある。しかし、茜ちゃんが高校に入って初めて知ったという通り、私も存在と名前くらいしか知らなかった。いつも行っていた道場にはなぜか茜ちゃんだけは一度も姿を現さなかったからだ。茜ちゃんのご兄弟のことは知っていて、向こうの私のことを知っている。

「そういえば弓道部に入ったらしいね。ところで、識遠は何か知っていることはあるのかい?」

「剣道の経験がないこと、それでいて、達人並みの才能があること。」

「うん?もしかして、茜ちゃんと相対したことがあるのかい。」

「実は・・・」

 ここで今日起きたことを説明した。隠す必要はないと思ったから包み隠さず話した。

「ふむ。まず、茜ちゃんの技能については秘匿。目撃者には口止めをすること。」

 思っていたよりも重い言葉に息をのむ。茜ちゃんの将来にとって大事なことであるため詳しくは話せない、話を纏めるとそういうことだった。

「今回のことに関しては意図的に隠してきた私達にも非があるから、これ以上は言わない。けれども何か尋ねられてもこれ以上は言わない。」

「隠していた理由も?」

「それこそ話の核心だと思わないかい。ただ、これからも茜ちゃんとの付き合い続いて、より親密な関係になったときは、もしかしたら話すかもしれない。いや、話さなければならない。」

 それからは、この話はしなかった。




「夜遅くにすまないね。」

「構わねぇよ。こっちもようやく落ち着いたところだ。それにしても珍しいなお前からなんて。」

「あの人はちょっとお疲れでね。まあ、単に急用ってだけなんだけど。剛君の娘さん、茜ちゃんについてなんだ。」

「茜?なんでまた。」

「”あれ”をみたいなんだ。」

「は?何言ってんだ、あんなもん見る機会なんてあるわけ・・・」

「それがね・・・」

「偶然ってことか・・・まあ、仕方ない。茜には釘刺しておく。わざわざ悪かったな。」

「こっちこそ、こんな時間に悪かったね。それじゃあ。」

「ああ。」

 というわけでここからネタバレ。








 この話は私が長距離を歩く際や風呂に入っているときなど、暇なときに考えていた妄想にあれこれ手を加えて作り上げようとしている作品です。

 大元を辿れば、オリジナルの世界観で複数作品を作り、最後に全登場人物を突っ込んで大騒ぎ、というのを考えたところに行きつきます。その中の一つの世界を舞台に、全く違う話作ったらどうだろうか、というコンセプトの元、風呂場で作られたのがこれとは違うお話で、そちらが完結してしまったのでじゃあ新しい話作るか、という流れでできたのがこのお話の元ネタです。

 大まかな流れしかなく、二人が出会って、なんだか識遠が襲われる話、二人で旅する話、逆恨みで茜が襲われる話、番外編だけどラスボス戦する話、その後のお話、という構成になっています。番外編では兎子が主役なのですが、クロスオーバーとして風呂場でできた話の世界にお出かけします。ですので、そこにいくまでにはその話も書いてしまいたいなと思っていたりもします。ぶっちゃけ、前作った話の方が個人的には楽しかったです。

 長々と書いてしまい申し訳ありません。もし、これからもお付き合いくださるのであればよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ