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5.少女の最近と日常について

茜ちゃんの家庭についての説明回になります。ちなみに、茜ちゃんの誕生日は9月16日です。

 斑鳩先輩との打ち合いの後、斑鳩先輩が真っ先に口にした言葉は、

「なにあれ、やばい」

いつもの少し緩めな感じが少しも感じられない声での一言だった。

 控えの方の壁近くで見てた先輩たちの方に行くと何か話していたようだけどよくは聞こえなかった。あれでよかったのか識遠先輩に確認したら、相手の動きがなんとなくわかるやつについて聞かれたので、しかめっ面で相手をビビらせるやつのことと一緒に答えたら、なんだか難しい顔をしていた。私の中ではそれぞれ《見切り》と《こわいかお》って名前を付けてる。由来は国民的な育成ゲームから。

 竹刀を収納したところでほかの部員が来始めたのでこの話はお開きになった。いつも通り一年生は体力作りをして、そのあとは矢あげなどをして今日の部活は終わった。練習が終わった後は軽いミーティングをしてから着替えをして帰る。ミーティングの時に先生がいないなんていうのはざらにある。

 私たち一年は体操着から着替えるけど、先輩たちは袴から着替える。ここで、先輩たちは大きく二つのパターンに分かれる。一つは袴を置いていくパターン。袴は一日に二、三時間くらいしか着ないうえに普段着ることはない。そのためハンガーに掛けて置いて行ってしまうのである。多くの先輩はこのパターンに入る。もう一つは、几帳面に毎日持っていくパターン。識遠先輩はこっちの方だ。

 道場を出ていく時間にもだいぶ差がある。早い人だと五分ぐらいで着替えてそそくさと帰ってしまう。こういった人たちはバスや電車の時間を気にして早く帰る人たちだ。対照的にのんびり着替えながらしゃべっている人たちもいる。歩いて帰る人や迎えを待っている人たちだ。転移系の魔法はあるけど、陣を書いて指定した陣への転移が一般的な上に魔力の消費が多い。重さや体積と比例して多くなるから、人一人と荷物をあわせると普通の人が一日に使うことができる魔力の三分の二くらいは使う。早いところ現実的でない。限定的な転移装置トランスポーターはあるけど、公共施設とか観光施設の一部くらい。だから、魔法があるのに車なんかの乗り物が普通に使われている。

 なんか余計な考え事をしていた気もするけど、要は早く着替えて先輩を待っているということ。先輩は素早く着替えて素早く帰るタイプだから言うほど待たない。

「待たせてごめんね。」

「全然待ってません。先輩着替えるの早いですから。」

「ありがとうございました。」

「ありがとうございました。」

 道場に礼をしてから二人で並んで帰る。偶然にも先輩の家と私の家は同じ方にあるからこうして一緒に帰ることができる。途中いろんなことを話す。今日の出来事、昨日読んだ本のこと、この間食べたお菓子のこと。他愛も無いことばかりだけど、何より幸せな時だ。憧れの先輩がいる、そういう人は日本中に沢山いるだろうけど、その人と二人きりの時間を過ごすことができる人は果たしてどれほどいるだろうか。柄にもなく詩的な言い回しになったけど、それはもうとにかく幸せなのだ。ただ学校から家へ帰るだけ、日常のありふれたことがこれほど大事だと、そんな思う日が来るとは。

 歩いて十五分もすれば私の家に着く。先輩の家はここからさらに五分ほど行ったところ。

「では先輩、また。」

「うん、またね。」

先輩が角を曲がるまで見送ってから玄関を開ける。

「ただいまー。」

「おかえりー。ごはんまだかかるからゆっくりしてていいわよー。」

 我が家は両親が共働きで、お母さんの方が早く帰ることが多いからご飯の支度はいつもお母さんがしている。いつもならもう出来上がってる頃だけど、台所の方からは香ばしい匂いとじゅわあという音が聞こえている。なるほど、確かに揚げ物は時間がかかる。

 二階にある私の部屋に戻っててきぱきと着替えを済ませて洗濯物を持っていく。いつもならあるはずのお父さんたちの服と、それからお祖父ちゃんの道着がない。そういえば靴もなかった。どうやらみんな帰ってきてないらしい。

「ねー、まだ誰も帰ってきてないのー?」

「そうなのー。お父さんもお兄ちゃんたちも遅くなるっていうからー、お祖父ちゃんが戻ってきたら先に食べちゃいましょー。」

 別に、お父さんたちは同じ会社に勤めてるわけじゃない。みんな別々の会社だ(一人はまだ学生だけど)。いつもばらばらの時間に帰ってきて、早く帰ってくるときも遅く帰ってくるときもそれぞれ違う。だから、そろって遅いのはかなり珍しい。

 お祖父ちゃんはすぐ隣にある剣道場の師範をしている。剣崎家の現当主であり、日本一の達人。割と早いころから当主になったらしく年よりも多くの苦労をしてきたとか。そのせいかはわからないけど、かなり柔軟な頭を持っている。というのも、おじいちゃんは基本、毎日朝七時から夜七時まで道場を開けそこで教えている。もちろん日によって来る人数や時間帯がまちまち。そんなに長いこと道場にいても仕方ない、的なことを前におじいちゃんに言ったことがあったけど、その時は、

「剣を振りたいと思った人が、剣を振りたいと思った時に、剣を振る場所がない。これは悲しいことだと思う。さまざまな働き方があるこの時代、剣道への向き合い方もそれだけの数があるだろう。剣道の教えを衰えさせず、広めていくには相応のやり方を考えて行っていく必要がある。」

と言って、広い時間帯で道場を開けている理由を話してくれた。おそらく、まだ学校帰りの子供や早めに仕事をあがった大人の人たちの相手をしてるんだろう。

 結局、四人が帰ってきて全員そろったのは八時半を過ぎたころだった。一番遅かったのは二番目のお兄ちゃんで、そのころには私はご飯も食べ終わって、お風呂から上がってさえいた。軽くお話をして、片付けはやっておく、って言われたけど、帰りが遅くなって疲れている人に片付けを任せられるほど薄情じゃない。うちではご飯の後片付けは私達兄妹がやっている。前にお父さんとお祖父ちゃんがやったことがあったけど、二人も超が付くくらい不器用でお皿を何枚も割ったからそれ以来やってない、やらせることができない。剣道も仕事もできるんだけどなあ。

 一段落したら課題と予習をして、寝る前に日記を書く。これは先輩と知り合ってから書き始めた。万が一先輩との思い出や約束を忘れることがないようにと思ってだ。書きながらそれまでのを読み返してにやけるまでが日課。

 書き終わると眠気が襲ってきた。今日はよく眠れる気がする。

時間があるときに紙に書いたのを書き直したのですが、なんだか長いような気がしたので一部カットしました。具体的には帰り道での会話です。六話目も書いたのですがあげるのは明日以降にします。

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