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第7話 好きだよ

挿絵(By みてみん)


 

 奏汰は決断をした。


「祐羽、美鈴。クリスマスに冬菜に告ろうと思う。頼む!手伝ってくれ!」


 奏汰は二人を教室の窓側の隅に呼び、両手を合わせて祐羽と美鈴に頼む。やっと告白しようと思った奏汰だったが、なかなか勇気が出ないのでクリスマスという雰囲気に頼ろうと思った。


「おー、奏汰。ついに!俺はいいよ!」


「私もいいよ」


「まじで!二人ともありがとう!」


 美鈴は冬菜の気持ちも知っていたがそれは言わなかった。

 美鈴は二人の想いがやっと通じると思いクリスマスがとても楽しみだった。


「あれ、三人とも何してるの?」


  先生に頼また仕事を終え冬菜が戻ってきた。


「ん?あぁ、ク、クリスマス4人でどっか行かないかって話してた」


 突然の冬菜の登場に奏汰は動揺が隠せない。


「そうクリスマス。冬菜もいいでしょ?」


 美鈴が聞く。


「……うん!行く行く!!楽しみだなー!」


 冬菜は無邪気な笑顔でうんっと頷いた。そんな冬菜を見た奏汰は冬菜の喜ぶ顔が可愛くて、つい見とれてしまう。


「そ、奏くん!わ、私の顔なんかついてた?!」


 それに気づいた冬菜が照れて顔を赤くして聞いた。ハッと我に戻った奏汰は慌てて答える。


「……いや、大丈夫!かわ……ぃ……」


 可愛いと言おうとした奏汰は最後まで言い切れず、顔が真っ赤なのが冬菜にばれないように窓の外をみる。


「かわ?ごめん、聞き取れなかった……」


「き、気にすんな!!大したことじゃないから!」


 なんのことかさっぱり分からなさそうにする冬菜と、照れる奏汰を見ていた祐羽と美鈴が、目を見合わせてクスッと笑った。



*****







「みずちゃん、今日も図書当番?」


「そー!ごめんね、冬菜」


「大丈夫だよ!頑張ってね〜!バイバイ!」


「うん。ありがと、バイバイ!」


 と、廊下で冬菜と別れてからカバンを取りに教室へと戻った。

 ーーガラッ

 教室のドアを開くと祐羽がぽつんと窓際の席に座って、何を考えているのか外を眺めていた。教室を見回し誰もいないことを確認して言った。


「ゆ、祐羽」


「よ、美鈴。どうした?」


 祐羽は少しかしこまった雰囲気の美鈴を不思議に思う。


「………あすかって誰?」


 美鈴はついに聞いた。祐羽は息を飲んで、目を丸くした。


「なんで……それを……?」


 祐羽は、いつもより低く重たい声で少し震えながら呟いた。


「マラソン大会の時、祐羽倒れたでしょ。その時保健室で祐羽がうなされながら あすか って囁いてたの。本当に苦しそうだったから、何かあるのかなって思って」



 祐羽は座りながら下を向いて頭を抱えながら答えた。


「……忘れろ」


 絞り出すような低い声、いつもの明るくてふざけた感じの祐羽とはほど遠く、美鈴は別の人を見ているように感じた。


「なんで……なんで!祐羽悩んでるんじゃないの?今だって、苦しそう!!」


「……お前には、関係ない」


 美鈴は我慢してきた涙が一気に溢れ落ち、泣きながら叫ぶようにして答える。


「どうして!!なんで話してくれないの!!!奏汰でも冬菜でも私でも!!みんな祐羽の友達なの!心配なの!!どうして……何にも……」


 祐羽が思いっきり机を叩いて立ち上がる。

 美鈴は驚いて一歩後ずさり後ろの机にぶつかる。


「お前らには、関係ないっつってんだろ!!話したって誰も俺の気持ちなんてわかんねぇよ!!」


「分かってあげたい!!けど言ってくれなきゃ何もできない!!!」



 祐羽は目から流れる涙を手で隠しながら叫ぶ。


「俺のことなんてどうでもいいだろ!!ほっといてくれよ!!」




「……祐羽のバカ」




 美鈴は、泣きながら教室を飛び出した。他の生徒の目線も気にせず図書室に駆け込む。そのまましゃがみこんで泣きじゃくる。

 零が図書室のドアを開くと目の前で美鈴が床に座りこんで泣いている。美鈴は零が入ってきたことには気がついていなかった。


「……どうして何も私は祐羽のことが好きで心配で心配で……なんで……なんで……どうして何も話して」


「……」


 美鈴が泣きながら独り言を呟く。零はおもむろに美鈴を後ろから抱きしめた。


「……え」


 やっと美鈴は零が図書室に入ってきたことに気づいた。


「……坂口くん?」


「いきなりごめん、でも堺さん苦しそうだった。俺でよかったら、何でも聞くし話して。思いっきり泣いていいよ」


 美鈴は零の方を振り返る。零は優しく微笑む。零が美鈴の頭を優しく撫でる。それに甘えるように美鈴は大声で泣いた。


「……わたしっわたし、本当に、心配で、でももうどうしていいか、もうわかんない」


 美鈴は自分が何を言っているのかわからなかった。しかし零はうんうんといいながら黙って頭を撫でながら聞いた。







「……堺さん。落ち着いた?」


 零は泣き止んだ美鈴を心配そうに眺めた。


「うん。ごめんね、坂口くん。坂口くんのセーター涙で濡れちゃった !」


 慌ててハンカチをポケットから出して零のセーターを拭いた。


「大丈夫だよ、これぐらい」


 といって零はセーターを拭く美鈴の手を掴んだ。


「えっ?」


 美鈴は驚いて顔を上げる。










「好きだよ。堺さんのことが」











 美鈴はいきなりの告白に驚いて声も出ない。


「……わたし」


「返事は今じゃなくて全然いいし、うん。でも、堺さんが安堂だっけ、あいつを見ているように、俺は堺さんを見てるから。それだけは知っといて。俺だったら堺さんをこんな風に泣かせたりはしない。いきなり困らせてごめんね」


「……ううん、大丈夫」


「じゃ、仕事の時間の終わるし俺先帰るね、じゃあ、堺さんまたね」


「うん、今日はごめんね!ありがとう!バイバイ!」


 零は笑顔で図書室を出て行った。美鈴は突然の出来事に頭の処理が追いつかず、その場に立ち尽くした。


「坂口くん……」




 美鈴の祐羽一筋の 心 に少し亀裂が入った。




*****



 奏汰は帰ろうと祐羽を呼びに教室へ向かった。すると六組の教室から、美鈴が泣きながら勢いよく飛び出していった。奏汰は慌てて教室のドアを開く。そこには祐羽が頭を抱えて泣いていた。









第7話ありがとうございました!少し長くなってしまいました!

感想、アドバイス、ブックマークなど是非よろしくお願いいたします…!!


臨場感みたいなのを出すのは難しいですね…分かりずらかった本当にすいません…

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