第5話 恋の訪れ
冬菜は美鈴の急な女子会から家に帰ってきた。家に帰ってからも頭の中は奏汰のことがグルグルグルグル駆け巡る。お風呂に入ってる時も、ご飯を食べている時も、上の空だった。
奏汰のことが好きかもしれない。
氷の上で起こった出来事が、あの時の奏汰が、頭から離れない。なかなか寝付けずにいた。
チリリンという目覚ましの細かい音が鳴り響く。
「ん、もう朝か」
なかなか寝付けずに遅くまで起きていたため寝不足だった。いつも通りに朝食を食べ支度を済ませる。
「行ってきます!」
冬菜は今にも寝そうな目をこすりながら玄関を出た。が、一瞬で目が覚めた。
「よ、冬菜、おはよ」
「……お、おはよっ」
たまたま出る時間が被った奏汰が家の前で、ひらひらと手を振っている。心の準備が整わないまま冬菜は奏汰と顔をあわせることになった。
「一緒に学校行こ」
と奏汰に言われる。「うん」と返事をするもののいつもみたいに話せない。奏汰の方が見れなかった。
(本当に私どうしちゃったんだろ…)
いつもより、元気のない冬菜を見て奏汰が心配そうに言った。
「冬菜昨日から少し元気なさそうに見えるけど、大丈夫?熱とかない?」
と言われ急に手をおでこに当てられた。冬菜は顔が火照った。恥ずかしくなってとっさに奏汰の手を振り払ってしまった。
「っごめん」
奏汰は驚いた表情で冬菜を見る。そして、悲しい顔をした。
「俺こそ……急に触ったりしてごめん」
「ごめん……大丈夫……」
2人の間に沈黙が訪れた。いつもと違う相手の雰囲気に何も言葉を発することができなかった。その微妙な雰囲気のまま学校に到着した。席に着く。冬菜の斜め前が奏汰の席だ。冬菜は自然と奏汰を眺めてしまう。
丸一日授業は集中して聞けなかった。そんな放課後ふと目に入ったのは、奏汰がクラスメイトの女子と楽しく会話している光景だ。
今までだったら気にせずに見ていたのに、なんだか嫌な気持ちになる。何を話しているのか気になる。自分にもその笑顔で話しかけて欲しいと思う。この感情って何だったっけ。その答えがようやくわかった。
「私奏くんのこと好きだ……」
冬菜はようやく自分の感情を受け入れた。なんだか少しだけスッキリしたような気もした。
「冬菜帰ろ!」
「あ、うん!みずちゃん待って〜!」
いつも通りの美鈴との帰り道。
「みずちゃん……私ね、奏くんのこと好きなんだって分かった」
「気付けてよかった」
「ありがとう、みずちゃん」
「みずちゃん大好き〜」と言いながら冬菜は美鈴に抱きついた。
「冬菜が頑張ってるのなら…私も頑張らなきゃな」
「祐羽くん?」
「うん、なんか祐羽何考えてるか分からないし。私も頑張って今の現状を受け止めて頑張ろうと思う」
「私は、みずちゃんのこと応援するよ!私でよかったら話聞くからね!」
「ありがと〜、やっぱり冬菜は私の親友だよ!」
「そう言われると、照れるな〜。私もだよ!親友!」
本当に友達になれて、親友になれてよかったと思う2人だった。指先が凍るような寒い冬の風が吹き、ふんわり綿菓子のような雪が空から舞い降りてくる。
「…あ、雪だ」
寒い冬の風が恋を連れてきてくれたような。そんな気がした。
第4話読んでいただき、ありがとうございました。少しずつ文章がちゃんとしてきてればいいのですが…
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イメージ画像がプロローグの前、第3話第4話と、鉛筆書きですがキャラのイラストを掲載しましたので、よかったら見てください!
第4話のイラストは祐羽ですが、彼は第4話には登場しませんでした!