第16話 ストレート
泣き続けて疲れ果てた美鈴は風呂から上がった。そして一通のメールが届いていることに気がついた。
『今日はありがとう。今日の堺さん元気なかったよね。俺でよければ話してくれないかな、メールでも電話でもいいから聞くよ。』
美鈴にとってここまで気にしてくれる零に感謝していた。いつも悩んでいるときに話を聞いてくれているのは零だ。そんな零の気持ちに応えて付き合ったらこの心は少しは楽になるのかと思う。しかし、本気で自分のことを思ってくれる零に前の恋を忘れるという理由で付き合うのは、失礼すぎる。零はそれでも良いと言ってくれるのかもしれないが、罪悪感で押しつぶされそうになる。
『いつもありがとう、坂口くん。ちょっとね、失恋しちゃって悲しかったの。でも今日坂口くんと話せて楽になったの、本当にありがとう。』
美鈴は溢れ出して来る零への感謝の言葉をメールで送る。すると直後に零から着信があった。美鈴は驚いて携帯を落としそうになりながら、慌てて電話に出る。
「は、は、はい!」
「ごめん、堺さん。急に電話して、驚かせちゃった?」
「う、ううん。大丈夫だよ」
「こんなとこで伝えるのカッコ悪いけど、俺、堺さん……美鈴のこと本当に好きだ。俺が笑顔にしたい。美鈴は今すぐには俺と付き合うとかは難しいかもしれないけど、考えてはくれないかな」
美鈴は急に名前で呼ばれ、胸の鼓動が早くなっていくのを感じた。
「でも、私、坂口くん……」
「零でいいよ」
「……れ、零……のことちゃんと好きになってないし、中途半端な気持ちで応えるのはできないよ……」
「じゃあ、俺のこと好きになって」
急に零の声のトーンが下がった。美鈴はその変化に驚きうまく声が出てこない。
「う……」
「ごめんごめん、言いすぎた。無理しなくてもいいから俺のことも考えて見てくれないかな」
「でも……」
「あ、もうこんな時間。じゃあ、おやすみ。急に電話してごめんね、ありがとう」
美鈴が返事をする間も無く電話が切れる。まだ胸の鼓動は高ぶったままだ。零はいつも余裕そうで明るい声をしていたのに、今日はやけに低く感情が詰まった声に少し怖くなった。しかし美鈴にとってストレートすぎる告白はやけに胸の奥深くまで突き刺る。零の低い声が頭の中を何回も駆け巡る。そのまま美鈴は眠りについた。
電話をしている間に一通のメールが届いていることに、美鈴は気づいてはいなかった。
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