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おめでとう、俺は美少女に進化した。  作者: 和久井 透夏
第11章 まさにどろヌマ(前編)
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第85話 弟の人生がヤバイっ

「落ち着け、まず、そもそもの問題として、お前は今そんな事をしている場合なのか? 漫画の連載や受験勉強に忙しいんじゃないか?」


 なんとか論点をずらそうと、俺は優司の今の状況について話してみる。

 実際、かなり多忙なはずで、恋人を作ってる暇なんてあるだろうか、いやない。そうに違いない。


「実はさ、夏にどろヌマの単行本化が決まったんだ。来週から連載も単行本化の直しで隔週になる」

「なんだそうなのか、すごいじゃないか」


 口ではそうは言いつつも、俺はその事に関してはあまり驚かなかった。

 どろヌマもかなり人気が出てきているので、いつかは単行本になるだろうと思っていたからだ。

 それでも、嬉しい事には変わりないが。


「ありがとう、それでさ、最近すばるさんが+プレアデス+として、マチルダのコスプレしたり、マチルダをイメージしたファッションとか提案してくれてるんだけど……」

「そ、そうなのか……」


 なんでそこで急に+プレアデス+の話になるのか。

 思わず俺は身構える。


「それが結構人気で、そのせいか、普段漫画とか読まない女の人とかにもどろヌマを読んでくれたりしてるらしいんだ」

「へ、へー……」


 知っている。


 というか、全部俺が計算してやったことだ。

 正直ここまで上手くいくとは思ってなかったが。


「それで、編集部の方でも、どろヌマの第一巻を大々的に売り出していこうって話になってきてるみたいで、今すばるさんの事務所に打診してるらしいんだ。上手くいけば、すばるさんがどろヌマの公式コスプレイヤーとしてどろヌマを宣伝してくれるかも」

「そうなの!?」


 思わず大きな声を出してしまった。

 そんな話、初めて聞いた。


 まだ事務所に話を持ちかけている段階というなら俺がまだ知らなくても仕方ないが、まさかこんな形で先にその事を知る事になろうとは。


 一宮雨莉のせいで、基本的に俺に仕事の拒否権は無いので、その仕事を受けるかどうかは完全に美咲さん達次第だが、俺としては、楽しそうなのでやってみたい。


「まだ企画の段階でどうなるかはわからないらしいんだけど、担当さんが教えてくれた。出版社がかなり力を入れて、どろヌマを宣伝してくれるみたい」

「よ、良かったな……」


 第一巻からそんなにプッシュされるという事は、どろヌマはかなり期待されているようだ。

 現役の高校生という話題性もある。

 これで売れてヒットを飛ばしてくれれば安心なのだが。


「それで、もしどろヌマの一巻が無事に売れてさ、好調なようなら高校卒業したらそのまま漫画だけでやっていけたらって思ってるんだ。前から描きためたストックのおかげで、今の連載はほとんど作画作業だけなんだけど、学校行きながらだと、それでも結構ギリギリだから」


 俺は絵を描かないのでよくわからないが、優司は絵を描くスピードは結構速いらしい。

 それで今は何とか週一ペースで連載できているが、やはり話の中身を考えながらだとそれなりに時間もかかってしまうようなので、確かに学校に通っていると厳しいかもしれない。


「母さんと父さんはその辺なんて言ってるんだ?」

「母さんは大学までは出て欲しそうだったけど、最終的には二人共、一巻に重版がかかったらってそれでもいいって言ってくれた」


 金銭的な問題も無いなら、大学まではと考えるのは親心かもしれない。

 前の旦那さんを業務上の事故で亡くした春子さんは、遺族年金と生命保険を貯金にまわして、親父と結婚するまでは働きながら優司と優奈を養ってきた。 


 優司の夢を応援しつつ、大学に行くまでのお金を何とか用意してくれている、というのはとてもすごい事のように思える。

 きっと春子さんは優司が高校を卒業してすぐ専業の漫画家になったとして、それで食っていけるかが心配なのだろう。


「そうか……俺は優司がどんな道に進んでも応援してるからな」

 そう、だからこそ、俺はどろヌマが発売されたら、+プレアデス+の名前を使ってでも、精一杯宣伝して応援しようと思う。


「ありがとう。それで、重版がかかって、色々ひと段落したら、すばるさんに告白しようと思うんだ」

「なんか、死亡フラグが立ちそうな宣言だな……」

 これで優司がすばるに惚れてなければなぁ……なんて思いながら、俺は微妙に話を逸らす。


「兄さんはどう思う?」

「そうだな、とりあえずは、無事満足できる出来の作品を仕上げて、それからじゃないか? 告白が上手くいくかどうかとか、作戦とか考えるのはその後で良いんじゃないかな、朝倉も最近仕事が楽しいみたいで恋どころじゃないみたいだし……」


 とにかく、今優司に朝倉すばるの恋愛話をするのは得策じゃないと判断した俺は、今は目の前の仕事に集中すべき、と話をずらして答えを先延ばしにする事にした。

 せめて、単行本が発売されてひと段落着いた辺りなら、優司ももう少し精神的に落ち着いているかもしれない。


「わかった。じゃあ兄さん、その時はまた話聞いてくれる?」

「あたりまえだろ!」

「ありがとう、僕頑張るよ」

「おう!」


 電話を切った後、俺はそのままベッドに倒れこんだ。


 どうしよう……!!!!!


 俺の返答次第で弟の人生がヤバイ。

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