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おめでとう、俺は美少女に進化した。  作者: 和久井 透夏
第10章 どっちが好きですか?
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第74話 賄賂です

 その場の流れと勢いでしずくちゃんと友達になってからというもの、俺はしずくちゃんとラインでよく話すようになった。


 内容は今期視聴しているアニメだとかのヲタク的なものと、普段稲葉とどんな事をしているのかなど、稲葉に関するものが半々だった。


 連絡を取り始めて少し経った頃、俺はしずくちゃんにやたらと一緒に出かけないかと誘われるようになった。

 恐らく、以前一真さんから聞いていたダブルデート作戦を実行したいのだろう。


 一真さんならその辺の新しい情報も知っていることだろうと、俺は大学の昼休みに一真さんにラインを入れた。

 今、取り込み中なので、今日の夜にでも家に来て欲しいと言われた。


 確かに回りに誰がいるかわからない場所で話す事でもないだろう。

 俺は申し出を了承し、その日の夜七時頃、一真さんの部屋を訪ねた。


 リビングに通され、お茶を入れている一真さんに、俺は最近のしずくちゃんとのやりとりを簡単に説明した後、今日のしずくちゃんからお誘いの内容を説明した。


 現在俺は、しずくちゃんに今週の土曜日に稲葉と俺としずくちゃんで一緒に服を見に行かないかと言われている。

 その際は荷物持ち兼警護に一人つけるとも。


「これって今までの流れからして、一真さんですよね?」

「ああ、それ僕じゃないです」


 お茶を出しながらさらりと答える一真さんに俺は首を傾げた。

「あれ? これって、以前一真さんが言っていたダブルデートの話じゃないんですか?」


「当初は僕の予定だったんですが、諸事情により変更になったんですよ」

 ふて腐れたように一真さんが言う。


「諸事情って?」

「しずく嬢がすっかり須田さんの薦める作品の数々にはまってしまいまして、随分と彼になついてしまったんです」

 ため息をつきながら一真さんが言う。


「それで、一真さんの変わりに須田さんを推そうと?」

 俺が尋ねれば、一真さんは静かに首を横に振った。


「いえ、彼がすばるさんの大ファンであると知ったしずく嬢が、趣味も合うだろうし、日頃引き篭もりがちの彼を連れ出すいいきっかけになるだろうと言い出したんです」


 つまり、本当に今回のしずくちゃんの目的は俺達の観察が主な目的なのだろう。

 表面上は仲良くしておいて、相手の情報を集め、後々の作戦を練るつもりなのかもしれない。


 それは良いことだが、調べるのは稲葉だけにして欲しい。

 というか、言ってくれれば、普通に稲葉がしずくちゃんと二人で出かけるのだって全く止めないどころかむしろ推奨したい位なのだが。


「すばるさん、須田さんは女性慣れしていないので、当日はあまりいじめないであげてくださいね」

 お茶に口を付けながら、グルグルとそんな事を考えていると、一真さんがいつもの笑顔で言ってきた。


 この人の考えもだんだんわかってくるようになってきた。


「……一真さん、それは牽制ですか?」

「はて、なんの事でしょう?」


 カップを置いて、一真さんに問いかければ、とぼけた様に一真さんが首を傾げる。

 しかし、妙に楽しそうでもある。


「いえ、例えば、今度出かけた時に私が須田さんの事をすっかり気に入って仲良くなってしまった場合、一真さんはどうなるのかなー、と思いまして」


「…………」

 一真さんは笑顔のまま少し黙った後、席を立ち、台所から桃色の紙袋を持ってくると、中から赤い包み紙の箱を出し、すっ、と俺の前に差し出した。


「これは?」

「賄賂です。洋酒の入ったチョコレートなのですが、なかなか美味しいですよ」

 不思議に思って俺が尋ねれば、ニコニコと一真さんが説明する。


「はあ、一真さんは本当にスイーツに詳しいですね」

 包装紙のチョコレートのブランドらしい英語の文字を見ながら俺は思った。

 これは、賄賂と言うよりも、餌付けじゃないだろうか。


「まあ、送ったり貰ったりはよくありますから……すばるさんはそれを食べて少し肉をつけたらいいんですよ」

 相変わらず顔は笑顔のままだが、言葉になんだかとげがある気がする。

 というか、仮にもモデルの仕事してる人間を捕まえて、太れとは結構な言いようである。


「一真さん、なんか不機嫌です?」

「そんな事ありませんよ」

 なぜか視線を逸らされた。


 これで一真さんが綺麗なお姉さんだったら、色々と夢が広がるのになあ、と、俺は静かに思った。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 一真さんかわいい [一言] 一真さんくっそ好き すばるとこの人との絡みがとっても好き
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