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おめでとう、俺は美少女に進化した。  作者: 和久井 透夏
第9章 二次元って素晴らしい
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第66話 しずくちゃんが一番

「つまり、将晴は普通に女の子が好きで、稲葉とどうこうなりたいって訳でもなく、稲葉に正式な彼女ができるのならそれが一番いいと考えているのかにゃ?」


 中島かすみは時間を置き過ぎて色が濃くなった工芸茶をカップに注ぎながら俺に尋ねてくる。

 ついさっき、晴れて中島かすみと本当の意味で友達になった俺は、引き続き現在の俺の状況を詳しく説明していた。


「そう言ってるだろ。そして俺は、その相手がしずくちゃんでも良いと思ってる」

 俺は中島かすみが注ぎ足してくれたカップを受け取る。


「さっきの話だと、元々はしずくちゃんに稲葉を諦めさせるために始めた彼女のフリじゃないにゃん?」

「いや、でも、しずくちゃんの様子見てると、ものすごく一途だし、悪い子じゃないとは思うんだよ……」

 不思議そうに首を傾げながら尋ねてくる中島かすみに、俺はなんとなく目を逸らしながら答える。


「まあ、確かにしずくちゃんは一途ではあるにゃん。ところで、理由はそれだけかにゃ?」

 何かを見透かすように、不敵な笑みを浮かべて中島かすみが尋ねてくる。


「…………実は、不本意ながら大学で稲葉とすばるが付き合ってるって噂が広まってな……リアルの知り合いにもすっかり広まっちゃって、もう稲葉は大学で彼女探しなんてできそうもないんだ……」

 特に隠そうとした訳ではないが、妙に気まずい気分になりながら俺はざっくりと今稲葉が置かれている状態について話す。


「すばるが+プレアデス+としてそこそこ有名になった事もあって、引っ込みもつかない、みたいな感じにゃん?」

 わざわざ俺に聞かないでも、実は細かい所まで知ってそうな口ぶりで中島かすみが言う。

 そんな彼女を見ながら、俺はさっきから尋ねたかった事をきいてみた。


「なあ、鰍は稲葉の事、今はどう思ってるんだ? もし恋愛的な意味で好きって言うなら……」

「稲葉の事は好きだにゃん。付き合ってくれって言われたら、普通に付き合うにゃん。でも、それは相手が雨莉でも将晴でも同じだにゃん」

 話の途中で遮るように中島かすみが答える。


 つまり、恋人になってもいいが、自分から積極的に迫るほどではない、という事なのだろうか。

 さりげなくそこに俺の名前も入ってはいるが、単純に付き合いの浅い俺を引き合いに出して、その程度の事だと言いたいのかもしれない。


「前から思ってたけど、鰍って一宮の事随分気に入ってるな」

「もちろんにゃん! 高校時代の稲葉を巡って雨莉とお互い持てる全ての力を使って争った日々……とっても充実してたにゃん」


 うっとりした様子で中島かすみが言う。

 要するに、ただのゲーム感覚だったのではないだろうか。


「しずくちゃんはどうなんだ? 高校時代にもそれなりに接触はあっただろ?」

「うーん、と言ってもしずくちゃんはたまに稲葉の家に泊まりに来る位だったし、何より扱い易過ぎてあんまりだったにゃん」


 腕を組んで、当時を思い出すように体を傾けながら、中島かすみが唸る。

 アレを扱いやすいだと……。


 小学生の時分から、しずくちゃんは稲葉を他県の実家に連れ帰ろうとしたりとか、定期的にやっていたような気がするのだが。


それでも一度としてしずくちゃんは成功した事が無いらしいし、中島かすみにとってはその程度では印象にすら残らないのだろう。


「それに、あの頃は稲葉の家には霧華さんがいたから、あの人のインパクトの前では小学生のイタズラなんてかすむにゃん」

 ケラケラと笑い話をするように中島かすみがしゃべるが、俺は首を傾げる。


 以前稲葉と話した時、名前だけ聞いたが、その霧華さんという人はどういう人なのだろう。

 稲葉の初恋の人らしいが、話した時の様子からして、その人と何かあった事は確実だろう。


「なあ、その霧華さんってどんな人なんだ?」

「うーん……一言で言うと、稲葉と雨莉のトラウマにゃん」

「トラウマ?」


 俺は思わず聞き返した。


 稲葉のみならず、一宮雨莉のトラウマでもあるとはどういう事なのだろう。


「霧華さんは当時、同時に6人と付き合ってたのがバレたとかで地元にいられなくなって、知り合いの稲葉の家に身を寄せてたらしいにゃん。そんなある日、うっかり稲葉と雨莉が美咲さんと霧華さんの『事後』に出くわしたとかで……」


 想像の斜め上の回答が帰ってきて、俺は返事に困った。


 つまり、霧華さんの痴情のもつれと言うのは完全なる自業自得で、ある日霧華さんの本性を知ってしまった稲葉は、抱いていた幻想を手酷く打ち砕かれた。ということなのだろう。


「あー……うん、なんとなくわかった」

 霧華さんの事を尋ねた時の稲葉の反応に、今更ながら合点がいった。


「ちなみに、今はそれらの事を全部知った上でプロポーズしてきた十年来のストーカーの旦那さんと仲良く暮らしているらしいにゃん」

「お、おう……」


 更に追い討ちをかけるようにまたぶっ飛んだ事実が明らかになったが、俺はもはやどう反応していいのかわからなかった。


「もうちょっと詳しく話すにゃん?」

「いや、いい……」


 稲葉の周り、アクの強い人間多すぎだろ……。

 しかし、この中だったらやっぱりしずくちゃんが一番マシだなと俺は思った。

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