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おめでとう、俺は美少女に進化した。  作者: 和久井 透夏
第24章 女子力の敗北
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第192話 しょうがないにゃん

「なんでそれを……」

「一真さん経由でしずくちゃんの様子を知って、稲葉に確認したんだにゃん」

 この時、コレはもう下手に言い訳とかしないほうが良いな、と俺は悟った。


「鰍がお仕事を頑張ってる間、将晴は稲葉とお酒を飲んで気持ちよくなってたんだにゃあ」

 からかうような拗ねたような口調でかすみが言う。

 稲葉から話を聞いたという事は、先日の俺の失敗は全てかすみに伝わっているのだろう。


「言い方に語弊あるだろ。いや、稲葉には大分迷惑をかけたみたいだけども……」

「……それだけかにゃん?」

 俺がそう言った直後、かすみは不機嫌そうに俺を睨みつけた。


「うっ、勝手に酒飲んでごめん……なさい……」

「そこじゃないにゃん! 将晴は色々と自覚が無さ過ぎにゃん!!」

 かすみの剣幕に気圧されて俺が思わず謝れば、そうじゃないとかすみは立ち上がる。


「稲葉とはすばるの格好で飲んだみたいだけど、それでもし稲葉が新たな扉を開けちゃったらどうするつもりだったにゃん!」

「そっち!?」


 予想外の理由に俺はかすみの顔を見上げながらポカンとしてしまった。

「大事な事だにゃん! 大体鰍が許すのはデートまでだにゃん! さすがに本番は許さないにゃん!」

 地団駄を踏みながらかすみが言う。


「いやいやいや、まずそんな展開はないからな!?」

 一瞬呆気にとられてしまったけれど、慌てて俺はその主張につっこむ。

 そんな展開あってたまるものか。


「だいたい将晴の女子力はなんなんだにゃん! 今日だって無駄にクオリティの高いケーキとか作ってるし、なんで当たり前のように鰍がチョコレートを貰う側なんだにゃん!」


 その話とさっきの話、関係あるか!?


「えっ……鰍はチョコ、いらなかった……?」

 しかし、もしかしてかすみとしては俺からチョコレートを渡されるのは不快だったのだろうかと急に不安になる。


「そんな事言ってないにゃん! 将晴の女子力が高すぎて鰍が霞むって言ってるんだにゃん!」

 そう言ってかすみはお土産の中から小さな紙袋を俺に渡してきた。

 中を見れば、金色のリボンのついた赤い包みが入っている。


「お取り寄せしてた人気店のチョコレートだにゃん……」

 急にかすみの声がか細くなった。


 俺があんまりにも手作りケーキを作るのだと張り切りすぎていたせいで、渡しづらかったのかもしれない。


「不満かにゃん?」

 どこか泣きそうな声が上から降ってきて、俺の胸の中でなんともいえない思いが込上げてきた。


「……これは、本命チョコって事でいいんだよね?」

「当たり前だにゃん!」

 確認するように俺が尋ねれば、怒ったようにかすみが答える。


「えへへ、本命チョコなんて貰うの初めてだ……」

「付き合ってるんだからコレくらい用意するにゃん」

 拗ねたようにそっぽを向く姿もどうしようもなく可愛くて、俺はチョコレートを一旦机の上に置いてから、椅子に座ったままかすみに抱きついた。


「ありがとう、すっごく嬉しい」

「あーもう! 将晴はずるいにゃん!」

 直後、かすみは俺を見るとくやしそうに声をあげた。


「ずるい?」

 思わずかすみの顔を見上げて首を傾げる。


「可愛いし気も効くし優しいし、全体的に女子力が高すぎてムカつくにゃん!」

「ご、ごめん……?」

 なんだろう、ものすごく褒められてるはずなのに怒られている。


「謝られると余計みじめになるにゃん! 第一、別に将晴は悪くないにゃん……」

 少し泣きそうになりながら言うかすみを見て、俺はある可能性に気が付く。


「もしかして、最近寂しそうにしてたのって……」

「将晴に世話を焼かれてると、それが心地良すぎてだんだん不安になってくるにゃん。元々は自分で全部できてたのに、将晴がいないと何もできなくなりそうで恐いんだにゃん」


 酷く辛そうな、寂しそうな顔でかすみは言う。

 俺は椅子から立ち上がってもう一度かすみを抱きしめた。


「……俺は、たぶんもう鰍がいないとダメだと思う。たった一週間ちょっと逢わなかっただけなのに、 すごく逢いたかった。それに、俺の周りも色々ありすぎて多分鰍がいないと収拾つけられないと思う」

「…………」


「だから、俺が鰍を必要としているように、鰍も俺を必要としてくれたら嬉しい」

 それが素直な俺の気持ちだった。

 さっきだって、かすみが俺を必要としてくれていると思えて嬉しかったし、本当はもっとかすみに甘えて欲しい。


「……しょうがないにゃん」

 しばらくかすみは黙っていたけれど、小さなため息を一つついて俺を抱きしめ返してくれた。

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