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おめでとう、俺は美少女に進化した。  作者: 和久井 透夏
第24章 女子力の敗北
202/204

第191話 筒抜け

 その日はかすみが地方ロケから帰ってきて初めてすばるの家に来る日だった。

 久しぶりに顔を合わせるという事もあり、俺は朝からそわそわしていて、授業の内容もろくに頭に入ってこなかった。


 部屋をいつもより念入りに掃除して、夕食は食べてくるそうなので自分の分を適当に食べた後はやる事もなくて、昨日の内に作ったザッハトルテを意味も無く何度も確認してしまう。


 適当に時間を潰そうとしても落ち着かないので、一旦頭を冷やそうと洗面所に向かい、鏡に映る自分の姿を見て俺はふと思った。


 そういえば、かすみはすばると元の俺だとどっちが好きなのだろう。

 かすみが俺に興味を持ったのは単純に俺の周りの人間関係がこんがらがってて引っかきまわしたら面白そうだからだろうけど、見た目的にはどちらが好みなのか……。


 高校の時はほとんど話す事は無かったし、告白された時はすばるとして彼女になってくれと言われた。

 スキャンダル対策に外で一緒に出歩く時はいつもすばるの格好だし、もしかしたらかすみはすばるの格好の方が好きなのかもしれない。


 だとすると、久しぶりに会う今日はすばるの格好で出迎えた方がかすみも喜ぶだろうか。

 そう考えた俺は、早速すばるの格好になる。


 今日はこれから出かける訳ではないので、メイクはできるだけ薄めにしよう。

 服は悩んだけれど、部屋着っぽい方がそれらしいかと思い、普段俺が着ているパーカーとTシャツに柔らかい素材のキュロットスカートを合わせる。


 身体のラインが出ない男物のパーカーでも、胸を作って、スカートを履くだけでずいぶんと女の子らしいシルエットになるので面白い。

 すばるの格好をして袖で手を隠してみれば、まるで彼氏のパーカーを羽織っている女子のようである。


 ちょっと楽しくなってきて、鏡の前でそれっぽいポーズをしたり、せっかくだから自撮りしてみようかと迷っていると、エントランスの呼び鈴が鳴った。


 地方ロケのお土産を持って来たかすみを迎え入れた俺は、早速渾身の飾り付けをしたザッハトルテとそれにあわせた紅茶を振舞う。


 ザッハトルテにはしずくちゃんのケーキから着想を得た透かし模様の入ったハート型プレートを大小二つ程デコペンで自作して飾りつけてある。

 横のホイップクリームにはデコペンで作った花びらを重ねて桃色の小さなバラを作った。


「将晴はパティシエにでもなるのかにゃん?」

 かすみは呆気にとられたようにそう呟いた後、スマホで写真を撮ってからケーキを食べ出した。


「美味しいにゃん」

 にっこり笑って一言そう言うと、パクパクとかすみはケーキを食べていく。


 ……なんか反応が薄い気がする。


「あの、鰍……」

「ところで、鰍がいない間はどうだったのかにゃん? ラインのメッセージじゃよくわからないから、ずっと気になってたんだにゃん」


 俺の言葉を遮るようにかすみが尋ねてきくる。

 目の前の、すぐ隣の席に座るかすみはニコニコと貼り付けたような笑みを浮かべている。


「え、えっと……ラインでも書いた通り、先週の金曜日に優司と優奈がバレンタインパーティーをしたいって泊まりに来たんだけど……」


 笑顔だが、いつもと違って随分と大人しいかすみに少し気圧されさつつも俺は先週の出来事を説明してく。


 かすみは終始ニコニコと笑顔で、気になったことはその都度聞いていたのだが、なんだかまるで取調べをされているような気分だった。


「鰍に報告する事はそれだけかにゃん……?」

「優司と優奈についてはコレで全部だけど」

 一通り話し終わると、かすみは更に小首を傾げて尋ねてくる。


「バレンタイン当日、稲葉としずくちゃん関連は何も無かったのかにゃん?」

「ああ、そっちか」

 かすみに指摘されて俺はハッとする。


 稲葉としずくちゃんの事もちゃんと応援するという事になっていて、わざわざ一真さんと毎週の報告会まで開いているかすみがバレンタインを二人がどう過ごしたのか気にならないはずが無かった。


 ラインでの報告を控える一因にもなったチョコレートケーキは現在かすみの胃の中におさまりつつあるので、その辺ももう気にする必要は無いだろう。


 それから俺は稲葉にバレンタイン当日は懲りずにしずくちゃんの前で恋人ごっこをした事、しずくちゃんの持ってきたケーキに今回の飾りつけのヒントを貰った事、すばるの影響で家庭的な料理を作ろうとしたしずくちゃんの手料理で須田さんが病院送りになった事など、事細かに報告した。


 しずくちゃんが帰った後に稲葉と酒を飲んで多大な迷惑をかけてしまった事はさすがに恥ずかし過ぎて伏せておいたが。


 かすみはそれらの話を真剣に聞いた後、神妙な顔で俺に言った。

「なるほど、ところで将晴に一つ確認したい事があるにゃん」

「何?」

 俺が首を傾げると、かすみは今日一番の笑顔を俺に向けた。


「稲葉とのチョコレートプレイ、楽しかったかにゃん?」


 ……どうやら、情報は既に筒抜けだったらしい。

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