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おめでとう、俺は美少女に進化した。  作者: 和久井 透夏
第20章 現実逃避とBBQ
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第155話 演技は得意

「あんまり周りを嗅ぎまわられても困るし、あのタイプは何言っても聞かなそうだから、手っ取り早く+プレアデス+に幻滅してもらうのが一番だよな。結構プライド高そうだったし、その辺を傷つけられるのが一番こたえるだろうな……」


 考えながら、俺はふと一真さんが最近しずくちゃんへの報告用のイベントが欲しいといっていた事を思い出した。

「すばるには彼氏がいるって説明する時、写真じゃなくていっそ一真さん本人に出てきてもらった方がインパクトがあるかもな。それは一真さんの都合次第だけど」


 ここで一真さんに頼るのもなんだか情けない気もするけれど、どうせやるならできるだけでかい一撃を与えてさっさと相手の希望を絶ってしまったお互い幸せだろう。

 その辺は、一真さんがいたら俺と中島かすみだけでどうこうするよりも確実性が上がる気がする。


 一応、こういう時の為の偽彼氏であるし、俺自身が一真さんには散々敗北感を味合わせられているので、ぜひとも奴にもそれを味合わせてやって欲しい。


 それに上手くすれば、一真さんの仕事にも貢献できるし、俺達もストーカーが撃退できて、奴も叶わぬ恋にいつまでも身を焦がす事もない……一石二鳥ならぬ一石三鳥である。

 早速俺は一真さんに電話をかけてみる。

 

 電話はすぐに繋がって、一真さんが出た。

 この前話したしずくちゃんへの報告用のイベントで、会って相談したい事があると言えば、今家にいるのですぐにこちらに来てくれる事になった。


 その後は一真さんを部屋に招き入れ、事のあらましを説明すると、ストーカーの撃退に快く協力してもらえる事になった。


「ところで、その元クラスメートというのは、以前僕も会った事がある人物ですか?」

「そうだにゃん。啓介だにゃん」

 話がひと段落したところで、一真さんは不思議な事を言い出した。

 しかも中島かすみも話が早いとばかりに頷く。


「待ってください、一真さんは西浦さんと面識があるんですか?」

「高校の時、啓介に絡まれてた所に霧華さんと一真さんが通りかかったのが出会いだったにゃん」

 思わず俺が口を挟めば、中島かすみが説明する。


 高校時代、一真さんと会った事があったのは知っていたけれど、霧華さんまでいたなんて初耳だ。

「……聞いてない」

 その気は無いのだろうけれど、まるで俺だけ仲間はずれにされているような気分になる。


「その後特に何かあった訳でもないし、言う程の事でもないと思ったにゃん」

「妬きました?」

「妬いてませんっ」


 ホントはちょっとムッとしたけれど、それを認めてしまうのはなんだか格好が付かないので、断固として俺は否定する。


 それはともかく、早速作戦会議に移って行く。

「それで、どう彼を撃退するんです?」

「とにかく、こいつの隣にいたくないって思わせたいです。随分とプライドが高そうでしたので、それを酷く傷つけられるような方法がいいと思います」


 そこで俺はさっきから考えていた作戦を提案する。


 俺と中島かすみと一真さんと奴の四人で出かけ、内輪ネタで盛り上がって一真さんを持ち上げつつ奴を空気のように扱う。


 今度中島かすみと一緒の時に奴と出くわしたら、誘いに乗って三人でお茶しに行く。

 そしてそこで朝倉すばるの彼氏である所の一真さんの事を盛大に惚気つつ、年収とか、社会的な地位とかを彼氏の絶対条件にしてそれ以外は男として見られないと鼻で笑ってやる。


  中島かすみにすばるの本性を見せると奴を呼び出してもらい、中島かすみとすばるが座っている近くの席に座らせる。

 そこですばるが横柄な態度で残念発言を繰り返しつつ、中島かすみに啓介の話をふられて、見た目から話し方から何もかも全否定して嘲笑う。


「あと、写真でも実際出てくるのでもいいので、視覚的に実際に彼氏の存在を確認するというのも結構けん制にはなると思うんです」

 指折り数えて言いながら、自分が気になる子に同じ事されたら間違いなくショックを受けるだろうな、と他人事のように考える。


「喫茶店に呼び出すの以外は良いと思いますよ」

「そうだにゃん。それだけはやめた方が良いにゃん」

 話を聞いていた中島かすみと一真さんは、揃って最後の作戦だけはやめたほうがいいと言う。


 考えてみれば、確かにそうだ。

「確かに人気商売してるのに、他に誰が聞いてるかもわからない公共の場で、あまり滅多な事を言うものではないですね……私に何かあったら事務所やブランドにも迷惑がかかってしまいますし……」


 しかし、俺がそう答えると、二人は何か言いたそうな顔をする。

 不思議に思って首を傾げると、一真さんが呆れたように口を開いた。


「……それもありますが、すばるさんがやると、余計事態が悪化するような気しかしないので」

「すばるは横柄な演技とか下手だから、最悪逆効果になりかねないにゃん」

 中島かすみまでため息をつきながら指摘してくる。


「なっ……!?」

 咄嗟に言い返す言葉が出てこない俺を他所に、中島かすみは話を続ける。

 曰く、どうせ俺が無理して横柄な態度を取ろうとしても、『普段おしとやかな女の子が背伸びして悪ぶってる』ようにしか見えないのだそうだ。


「そんな事無い! 演技は得意なんだから!」

「じゃあちょっと悪女っぽい感じでやってみるにゃん」

 流石に俺が否定すれば、じゃあ実際に演じてみろと中島かすみがニヤリと笑う。


 エラいなめられようである。

 自分で言うのもなんだが、「俺の考えた最高に可愛い女の子」というコンセプトの元、日常的に朝倉すばるを演じる俺が、その程度をできない訳がない。


 今に見ていろと、俺は中島かすみに向き直る。

 悪女っぽく腕を組んで、上から目線になる事も忘れない。

「こ、この私を五分も待たせるなんて使えない男ね! ……ご飯は三ツ星以外許さないんだから」


 どもった! しかも中島かすみも一真さんも黙ってじっとこっちを見てくるから思わず照れてしまった。

「「………………」」

 中島かすみと一真さんの沈黙が辛い。


「すばるは鰍が守るから大人しくしてるにゃん」

「すばるさん、無理しないでいいですよ」

 そして、しばらく間を置いた後、二人が優しい顔でフォローしてくる。


「二人して哀れみの目で見ないでください!」

 うわああああああああああああ!!!!

 失敗した!! 恥ずかしい!!!

 絶対なんだこの大根役者とか思われてる!!!!!


 内心恥ずかしさのあまり軽くパニック状態だったが、何とか平静を装う。

 ものすごく顔が熱いけど気にしたら負けだ。


 その後は中島かすみと一真さんがサクサクと話を進めて行き、気が付いたら今度俺と中島かすみと一真さんと奴の四人でバーベキューに行く事になっていた。

 決まった内容に全く異論は無いけれど、なんだか置いてきぼり感がある。

 つらい。

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