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おめでとう、俺は美少女に進化した。  作者: 和久井 透夏
【スピンオフ】おめでとう、鰍はアイドルに進化したにゃん!
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第9話 鰍のだにゃん

「そういう訳だから、今日はもう仕切り直して普通にバーベキューを楽しみましょうか。一真さんの報告用の写真も撮らないとですし」

 パチン、と両手を合わせると、すばるはもうこの話は終わりだと笑うにゃん。


 まあ、啓介が今後どうなるかも気になりはするけど、今この場ではこれ以上どうこうする事もないので、鰍はすばるの言葉に頷いたにゃん。


 その後は写真を撮ったり、料理を食べたりしながら、色々と話したりしたにゃん。

「それにしても、報告用の写真は鰍も一緒に写ってて良かったのかにゃん?」


 一息ついたところで鰍はさっき写真を撮った時、すばるだけでなく、鰍も報告用の写真に入れた一真さんを不思議に思って尋ねてみたにゃん。


「その方が都合が良いんですよ。鰍さんがすばるさんと仲が良い事のアピールにもなりますし、その鰍さんとも良好な関係を築きつつあると報告できます」

「するとどう好都合なんだにゃん?」


「しずく嬢は鰍さんを警戒しているので、ある程度僕が鰍さんの行動をコントロールできると思わせられると、まだまだ油断できないと契約期間が長くなったり、万一にも寝返られないように僕の待遇が良くなったりします」

「うわあ……」


 なんでもないように答える一真さんに、鰍の横に座るすばるが明らかに引いてるにゃん。

「実際に鰍さんに僕の言う事を聞いてもらう必要はないんです。ただ、僕だったら鰍さんの行動に影響を与えられるかもしれない、と思わせるだけで良いんです」


「印象操作だにゃん」

「まあそうですね。良いじゃないですか。持ちつ持たれつでいきましょう」

「確かにそれは大事だにゃん」

「一応、一真さんには感謝してますよ」


 鰍が一真さんの言葉に頷くと、すぐ隣ですばるがぼそりと呟くにゃん。

「そう言っていただけると嬉しいです。それで、いつにしましょうか」

「何がです?」

 すばるは不思議そうに首を傾げるにゃん。


「車から降りた時に言ったじゃないですか。今度僕がダッチオーブンで料理を作ったら食べてくれるって」

「あー、言いましたね。本当にご馳走になって良いんですか?」

 そういえば、と言うように呟いたすばるは、あっさりと一真さんの申し出を受けるにゃん。


「ええ、それでまた報告も上げられるので、僕としては大歓迎です」

「じゃあ何かメインのおかずを作ってください。そうしたら主食とスープはこっちで用意します」

「それもいいですね」


 どんどん進んでいく会話に、鰍はちょっとムッとすると共に、一真さんは本当に利害の一致だけで付き合ってるのかと言う事も気になりだしたにゃん。

 最初はそんな気が無かったにしても、相手はあのすばるだにゃん。


 更に今日、演技とはいえ、あんなにイチャイチャしてたら、男と知っていても道を踏み外す可能性は十分にあるにゃん。


「待つにゃん。鰍もそれに参加したいにゃん」

「いいよ~おいでおいで~」

「では、場所はすばるさんの家にしましょうか」


 嫌な予感がした鰍は、その食事会に自分も入れろと口を挟むにゃん。

 すばるは嬉しそうに歓迎してくるし、一真さんも案外あっさりと鰍の要求を受け入れるので、鰍の思い過ごしかとも思ったけど、まだ油断はできないにゃん。

 とにかく、今度の食事会で一真さんの真意を探るにゃん。


「なら鰍はお酒を持ってくにゃん。そしてすばるはこれを機にお酒の飲み方を憶えるにゃん」

「えぇ……」

「問題を起こしてからでは遅いにゃん。自分の限界を見極めて、セーブする事を憶えるにゃん」

「はあ、すばるさんはまた酔って何かやらかしたんですか?」


 鰍が言えば、一真さんは困ったような顔ですばるを見るにゃん。

「そ、そんな事は……なくもないです」

 対して、すばるは気まずそうに視線を逸らすにゃん。


「お持ち帰りされてからでは遅いにゃん」

「遅いですね……」

「うっ……気をつけます……」


 ため息をつきながらすばるに言えば、一真さんもそれに同意してくるにゃん。

 しゅんとしたすばるも可愛いけど、だからこそその辺は自衛できるようにならないとダメだにゃん。


 その後、帰りに買いたい物もあるからと、鰍はすばると一緒に一真さんに鰍の家の最寄り駅まで送ってもらったにゃん。


「それで、買いたい物って?」

 一真さんにお礼を言って車から降りた後、すばるが聞いてきたにゃん。


「ん~、今日の晩御飯のおかずでも買いに行くにゃん?」

「なんで疑問系なの……」

「だって、買い物は駅から鰍の家まで二人で帰る口実だからだにゃん」

「えっ……」


 正直に答えれば、すばるの顔がみるみる赤くなっていくにゃん。

「そのまま家の近所まで送ってもらっても良かったけど、今日はこのまま誰にも邪魔されないデート気分を味わいたいにゃん」

 内緒話をするようにすばるの耳元に顔を寄せて囁くにゃん。


 するとすばるは口元を押さえて俯いたにゃん。

 鰍が不思議に思ってすばるの顔を覗き込もうとしたら、それに合わせて顔を逸らされたにゃん。

「すばる、どうしたにゃん?」


 尋ねてみると、

「ゴメン、ちょっと今顔が緩みきって人に見せられない状態だから……」

 って、すばるが言い出したにゃん。


「そうなのかにゃん。それじゃあ今日はこのまま鰍の家に行くかにゃん?」

「……いや、せっかくだからこのまま鰍とちょっと遊んでから行きたい……です」

 すばるの手を取って提案してみたら、すばるはもう片方の手で口を手のひらで覆ってもじもじしながら答えるにゃん。


 なんで急に敬語になるのかにゃん?

 将晴は焦ったり緊張したりすると、たまに敬語になったりするけど、これもそう言う事のなのかにゃん?

 それとも、実はそれも計算だったりするのかにゃん?

 よくわからないけど、とりあえず可愛いから許すにゃん。


「じゃあ、ちょっと駅前をぶらぶらしてから帰るにゃん」

「うん……なんか、こういうのもたまには良いね」

 すばるの手を引きながら誘導すれば、すばるはやっと口を覆っていた手を外して、はにかみながら笑うにゃん。


 ……ついさっきまで、いかに啓介を撃退しようかとか、一真さんとすばるが思った以上に仲良くなっててなんかもやもやしてたけど、なんかもうどうでも良いにゃん。

 少なくとも、いまここにいるすばるは鰍だけのすばるだにゃん。

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