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おめでとう、俺は美少女に進化した。  作者: 和久井 透夏
第16章 大丈夫じゃない!
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第119話 人事だと思いやがって!

 一真さんが帰って夕飯の準備をしていると、すばるの携帯が鳴り出した。

 手を止めて机の上に置いてあったスマホの画面を覗いてみれば、中島かすみの名前が表示されていて、俺は慌てて電話に出た。


「今話しても大丈夫かにゃ?」

 電話から弾んだ声が聞こえてくる。

 大丈夫だと答えれば、早速中島かすみは今日のデートはどうだったかと尋ねてきた。


「むー、思ったより平和だったにゃん……」

 俺が今日の出来事をかいつまんで説明すると、中島かすみはどこか不満げに唸った。


 もっと修羅場っぽいものを期待していたのだろう中島かすみに、そんなものしょっちゅう遭遇してはたまったものではないと俺は答える。


「鰍はむしろ大歓迎だにゃん!」

「だろうな」

 予想通りの中島かすみの返事に、俺はため息をついた。


「ところで、その一真さんというのは、将晴の隣に住んでる男の人でいいのかにゃん?」

「そうだけど?」

「すばるは、稲葉と別れて一真さんと付き合うにゃん?」


 直後、中島かすみの唐突な発言に俺はムッとした。

「なんでそうなるんだよ」

「さっきの話だと、その一真さんにすばるが狙われている気配しかしないにゃん」

「いや付き合わないから」


 すぐさま俺は否定する。

 中島かすみの言い分もわからないではないが、正直な所、一真さんが本気でそう言っているかはわからない。

 多分いつものように俺をからかって遊んでいるだけのように思える。


「ホントかにゃ?」

「ホントだよ! 俺、鰍と付き合ってるよな……?」

「わかっているならいいにゃん」


 ちょっと不安になりながら答えれば、なぜか妙に偉そうな返事が返ってきた。

「なんで俺が怒られた風になってるんだよ」

「将晴はもっと…………いや、やっぱりなんでもないにゃん」


 思わず俺がつっこめば、中島かすみは何か呆れたように何か言おうとしてやめた。

「なんだよ、途中でやめられると気になるだろ」


「将晴はそのままの将晴でいるにゃん。そんな将晴が鰍は大好きだにゃん」

「えっ、お、おう……」

 急に大好きなんて言われて、その時俺は照れたが、後から考えるともっと別の意味も含まれてそうな気はする。


 しかし、その辺は考えない事にする。




 二日後、俺は稲葉に呼び出され、稲葉の独り暮らししているマンションへと向かった。

 二日ぶりに見た稲葉は、なぜか随分とやつれた様子だった。

「どうしたんだよ、あの後しずくちゃんとよろしくやってたんじゃないのかよ?」


 俺が不思議に思って尋ねれば、稲葉は机の上に頭を乗せて唸るように言った。

「どうしたもこうしたも……」


 そうして稲葉から語られたあの後の話に、俺は唖然とした。

 もはやこの流れも恒例となってきている気がする。


 俺が一真さんと喫茶店を出た後、稲葉は一応俺の意図は理解し、店員さんに謝罪し、しずくちゃんからハンカチをうけとりつつ、金を払って店を出たそうだ。


 店を出るとしずくちゃんは、このままだと風邪をひいてしまうからと稲葉を半ば強引に車に乗せ、しずくちゃんの家に連行していった。


 車内で一息つくと、しずくちゃんは、

「すばるさんって、嘘が下手だよね。あんなの、私でも気付いちゃうよ。でも、アレは私を真の恋敵ライバルと認めてくれたからこその宣戦布告って事で受け取っちゃって良いんだよね」

 みたいな事を言っていたらしい。


 しずくちゃんはそう言うが、俺は嘘をつくのはそれなりに上手い方だと思う。

 むしろすばるの存在そのものが嘘である。

 全くもって言える訳もないし、言う予定も無いのだが。


 それはさておき、以前しずくちゃんに拉致られてそのままホテルに連れて行かれて襲われかけたりもした稲葉は、既にこの時点で身の危険を感じていたが、しずくちゃんは待ってくれない。


 やたらとくっつこうとしてくるし、しずくちゃんも濡れてしまうからと言っても、

「じゃあ、昔みたいに一緒にお風呂に入ろっ」

 と言われる始末だったらしい。


「いいじゃねえか。もう一緒に風呂入ってそのまま責任とる形で結納でも何でもしたらいいじゃないか」

 俺が思わず口を挟めば、

「人事だと思いやがって!」

 と、稲葉が喚いた。


「いいか? しずくちゃんの周りの人間やしずくちゃんの中では、しずくちゃんと付き合うというのは本当にそのまま婚約するのも同義なんだよ!」

「まあ、元々紹介されたのはお見合いだったしな……それになんの問題があるんだ?」


 力説する稲葉に俺は首を傾げる。

「ありまくりだよ! 正直俺もしずくちゃんは俺にはもったいない子だとおもうよ! だけど、いきなり結婚とか、そういうのはちょっと……」


「稲葉よ、もう少し遊びたいはいいが、お前に寄ってくる女性陣の事を考えると、そんなことしてたら火遊びのつもりが焼死体で発見される事になるぞ」


 この期に及んでなにやら言い出した稲葉に、俺は現実を突きつける。

 多分、火傷じゃ済まないどころの騒ぎじゃない。


「いや、そこまでは言ってないけど、心の準備がしたいというか、もっとお互いの仲を深めてからの方がいいというか……」

「でもお前、中学の時からだから、もうしずくちゃんとは五年近い付き合いじゃないのか?」

 もじもじしながら言い出す稲葉に、俺は尋ねる。


「ほとんど親戚付き合いみたいな関係と、恋人同士のそれは違うだろ!?」

「じゃあ恋人になって仲を深めろよ」

「簡単に言うなよ! もうそれどころの話じゃなくなってるんだよ!」


 机に拳を叩きつけながら稲葉は言う。

 行動とは裏腹に身体は震えており、ちょっと涙目になっている。


「……どういう事だ?」

 恐る恐る俺は尋ねた。

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