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手伝い数日目

あの日から俺は毎日VWへ行き、リアルゲームをするようになった。


“手伝いだ”と思って始めたゲームだったが、今では自主的にゲームをやるようになっていた。ヒロインに出会い、ロボットをうまく倒せるようになったからゲームが楽しくなったというのが原因だろう。


それから、最近オヤジは仕事が忙しいのか全然家に帰ってこない。


そのせいでいつ手伝いを終了していいのかがわからない、ということも原因の1つだと思う。俺は今日もまた、VWへ来ていた。


「おはよ、ヒロイン。」

「お、おはようございますっ!リョウ君!」


ヒロインの顔が赤くなっている。それを見て、俺も顔が熱くなる。


「……さっさとロボットを退治するか。」

「はっ、はいっっ!!」


いやヒロインはロボットを倒す必要ないだろう…。


ちょっと突っ込みそうになったが、突っ込むと面倒なことになるかもしれないので止めておいた。


バァンッッ!!!―――――


銃声が聞こえた。

敵ロボットのお出ましだ。

あの日のロボットよりは強く、俺がきちんと技を撃ってもよけたり、きちんと考えて攻撃したりしてくるタイプのロボットだ。

でも、あのタイプのロボットなら楽勝だ。


「おっし、いくぞ。」

自分自身に、ゲームスタートの合図を送る。


「スター・イマジン!!!」


右手をロボットに向けて光を集め、集めた光を銃弾のように放つ。

この前習得したばかりの技だ。

スター・イマジンというのは技の名前。

別に言わなくても技を放つことは可能だが、以前ヒロインに「技の名前とか言いながら攻撃したらかっこよくないですか?!」と目をキラキラさせながら言われたため、確かに技の名前を言うのはカッコいいなと思い、その時から言うようにしていた。

技の名前は、適当に決めた―

否、一応意味もあるけれど、少し恥ずかしいから言わないでおく。


ドォンっ!!!―――


ロボットは技をよけるが、さすが雑魚だ。

技によって生まれた空気の衝撃で少し体力を削られている。


さあ、すぐに終わらせよう。


「スター・イマジン!!!」

ドォンッ!!!!――――


もう1度技を放つ。

ロボットはまともに俺の攻撃を喰らい、光となって弾け散った。


ヒロインのほうをちらっと見ると、ヒロインはいつものように、すご~い!カッコいい~!と口パクで言いながら、拍手をしていた。


ほかの人がやっていたらただの嫌味でしかないだろうが、ヒロインは嫌味を言うような娘ではない。

ただただ純粋なだけなのだ。

だから手をたたいて喜んでいる彼女を見ると、少しうれしくなるのだった。


ジャキ―――ンっ!!


いきなり。刀を構える音が聞こえた。

音のする方向を見ると、そこには以前見た敵ロボットよりも武装が多く、将軍のような形をした、大人の男性くらいの少し大きいロボットがいた。

刀を構え、こちらの様子をうかがっている。

今まで見たことがない形。


なんか強そうだ……


ザンッっ!!!


心の中で感想を言った途端、ロボットは俺の方に飛んできて刀を振り下ろす。


速い。

今までのロボットとは全然比べ物にならないくらいに。


俺は技をよけようと反射的に飛びのいていたが、ほんの少しだけ遅かったようで、俺の左腕の服が斬られていた。

斬られた服の一部は、ひらひらと花びらのように舞い落ちた。


けがはできないようになっているようだけれども…。


服が切れてしまったのを見ると、自分の体も同じように切られてしまうのではないか、と感じてしまう。

あの日ヒロインが言っていたように、ロボットがゲームの武器ではなく、地球にある本物の武器を使っているのではなかろうか、とも感じる。


ロボットに腹を撃たれた時のような恐怖が、俺を支配し始めた。


どうしよう…死ぬなんて嫌だよ…死にたくないよ………


ロボットは俺が弱気になったのを察知すると、さっきよりもゆっくり、その代わりしっかりと刀を構えた。ジャキン、と静かな音が聞こえる。


俺を完全に殺そうとしているのではないか?


俺を支配する恐怖が強くなる。

体がこわばって、震えて、動けない。


……死ぬなんて。嫌だ。

嫌だ、いやだ、イヤダ、iyada………


ザンッっ!!!!!!―――――――


思いっきり刀が振り下ろされた。


…どうか、ゲームの武器でありますように……


ガキ――ン!!


刀がぶつかり合う音がした。


え?…どういうことだ?……


この場には、俺と、ロボットと、ヒロインしかいないはずなのに。

そして、俺は何もしていないのに。


一体、誰が…


前を向く。

俺を守ってくれたのは、想定外の人物だった。


「大丈夫ですか?リョウ君?」


ロボットの刀を刀で受けた状態の人物が顔をこちらに向け、にこっと微笑んでくれた。


「えっ?ヒロインちゃん?……」


動揺を隠せない。あんなにロボットにビビっていたのに。


「えへへ、本当は守られる”役”なんだけどさ。

 ただ見てるだけじゃ忍びないし。それに…」

「…それに?…」


ロボットはずっと刀を押し付けるのに疲れたのか、後ろにステップで退いて間合いを取った。そして、仕切りなおそう、とでも言うように、刀をジャキン、と構えた。ヒロインも光で成る刀を構える。


しかし…


ばたんっ―――――


ヒロインはさっきので疲れてしまったのか、急に地面に崩れ落ちる。

「大丈夫か?!」

俺はとっさにヒロインの近くに駆けより、ヒロインが地面に着くより先に、ヒロインの体を受けとめる。

ずっしりと、ちゃんとした重みがあった。


よかった。ヒロインはゲームではない。現実なんだ…。


ヒロインは目を閉じていたが、まだ身体が一定のリズムで小さく動いていた。

生きてる、と実感し、ロボットに狙われないように近くにあった建物の陰にヒロインを隠しに行った。

ロボットが走ってこちらに向かってきているのが横目で確認できる。

建物の陰に急いでたどり着き、ヒロインをそっと寝かせると、すぐにロボットの方へと駆け出した。


「スター・イマジン!!」


俺はロボットに向かって思いっきり技を放つ。


もうヒロインに迷惑はかけない。


ヒロインは俺が守るんだ。



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