手伝い
リョウが、父に手伝いを頼まれる話。
ギャグ多めの楽しい回です。
もう何年もたって、レイも大きくなった。
今でもレイの顔を見ると、あの時の幸せが昨日のように鮮明に思い出せる。
弟っていいな…。
俺もあんな風に、みんなに見守られて、応援されて、産まれたら喜んでもらえたのだろうか。
別に今、自分一人で考えてもどうにもならないし、もし喜んでもらえていると知ったところで、何にもならない。
「リョウ、ちょっと手伝ってくれないか?」
「ん、いいよ。」
俺はオヤジの方へ向かう。
「あ、待って兄貴、俺も―――」
「レイはちょっとお留守番してて!」
「…はぁい。」
レイも俺と一緒に手伝いたがっていたが、仕事を手伝って何かあっても危険なので、呼び出されたのは俺だけだった。
2人で車に乗り、大きなビルの前に着いた。
ビルはコミュニケートタワー(スカイツリーより高い電波塔)のような近代的なデザインをしている。
このビルの最上階がVW研究会だ。車から降り、ビルの最上階へと向かう。
「で、今日は何の手伝い?」
最近はもうバーチャルワールドの星自体はできていて、その星に建物やら何やらを設置する仕事が多くなっていた。
それから、VWに生き物が見つかったらしく、オヤジはその研究をしていた。
俺はその生き物を探し出すことに手伝わされることも多くあった。
「司郎さんに頼まれたのだが…。あ、ちょっとここで待ってて。」
最上階に着き、俺はオヤジの席で待たされた。
オヤジはどこかへ行ってしまった。
なんだろう。
まあ、いいか。
そう思っていると……
「じゃじゃーん!!おまたせ~!!」
…なんか変な人が来た。
顔の右半分が金属の仮面のようなもので覆われ、目の部分には赤い宝石のようなものがはめられている。髪の毛は鬘をかぶっているのか、銀色の髪の毛で、紙の先端が赤く染まっている。服は赤と黒と銀の、王様のようなものを着ていた。
首元には襟のように金属のわっかがあり、そこからマントがついている。
お待たせ、という言葉と声から察するにこれは俺のオヤジだ。
でも、40歳ぐらいになってその恰好はちょっと…だいぶ…
いや、相当ヤバいと思う。
思わず知らんぷりして帰ろうとする。
「あ!!待って待って!ね!?大丈夫!!俺は大丈夫だから!!」
オヤジは慌てて俺が帰ろうとするのを阻止した。
「…で、今日の手伝いはいったいなんなんだ?…」
「実は…」
なんか嫌な予感。
ならば先に断っておこう。
「コスプレなら俺帰るわ。じゃあ。」
くるっとオヤジに背を向けて、今度こそ帰ろうとする。
「あ~~~!待って!違う!違うんだ!ちゃんと聞け!よく聞け!」
またも阻止された。
「…聞くだけ聞く。」
「よし!じゃあ、話すぞ。
今日の手伝いは、バーチャルワールドでのリアルゲームのお試しだ。」
「…リアルゲーム?」
「そうだ。バーチャルワールドは地球から近いから、道具を使えばワープできる。ワープして、バーチャルワールドで自分がゲームの主人公になって敵を倒したり、ミッションをクリアしたりできるのがリアルゲームだ。
それで、ちょっと試しにどんな感じか試してもらって、色々改善点を教えてほしいんだ!」
「ふぅん…。なんかオヤジが好きそうな内容だね。
もしやこのリアルゲームの発案者って…」
「誰だと思ってるんだ。俺だぞっ!!」
さいですか…。
「手伝って、くれるかなっ?」
…いいとも!って言わせる気か?…
考えすぎか。
まあ、俺はゲームは嫌いじゃない。
「ああ。」
肯定する。
「そうか、ならよかった。」
肯定したのにオヤジはなんだか少し寂しそうだ。
オヤジがなにかボソッとつぶやく。
「…ノリが悪い……」
「ああ!!ノリが悪くてすみませんねっ!!」
ビクゥッとオヤジは肩を震わせた。
しまった、大声出し過ぎた…。
オヤジは少女のようにシュンとなった。
「き、聞こえてたの?」
そのまま指いじりしそうなくらいうじうじしている。
「……まる聞こえ。まさかいいともって言わせたかったんじゃ…」
言った途端、オヤジの目がキラッッと輝いた。
「前言撤回!ノリいいね!リョウ!!」
「だぁ~~~っ!!!!」
しまった!!
シュンとしているのもちょっとめんどくさいけど、キラキラしてるのもちょっとめんどくさい。
オヤジは、なんかすごく「仲間みぃつけた!」って感じのオーラを醸し出している。
あ~あ……
「…言うんじゃなかった…」
「なんか言った?」
「何も言ってない!!それよりもう早く手伝わせろよ!!」
「おう!!じゃあVW行くぞ!」
俺たちは手首に巻きつけてあるオールブレスを掲げるようにして、言った。
「Let’s go to the VW!!!!!」
俺たちはまばゆい光に包まれた。