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1.

 皆様もすなる異世界ものを自分もしてみんとてしてみようかと思います。つたない小説ではございますが、お楽しみ頂けましたら幸いです。


 また、本作に登場する固有名称等々は全て実在のものとは関係ございません。ご了承頂きますよう、よろしくお願いいたします。


「……これは、すごいなぁ」



 朱色と黒の目にも鮮やかな二色のコントラスト。連続する四角形が形作(かたちづく)るそのトンネルの中を歩きながら彼女、黒田(くろだ) 三咲(みさき)はため息とわずかに白く煙る息と感嘆を一緒くたに吐き出しながら言った。



「うん……。実物は、空気からして、こう、ちがうよねえ……」


 バーバーリーチェックのマフラーを口元に上げて彼、新見(にいみ) (はじめ)がそれに同意する。


 黒く濡れた石畳を歩く彼らの足音が響く。ざあっ、とまるで波のように木々の葉擦れが辺りにうち寄せる。辺りはすでに薄暗い。晩秋の黄昏は駆け足の速度で夜に転げ落ちようとしている。

 朱色の、鳥居が合わせ鏡のようにどこまでも連なって夜の方に向かって消えていく。どぎつい赤色がこの景色の中ではいっそ妖艶と言っていいほどの(つや)を放っていた。


 それは幽玄とでも表現すればいいのだろうか。目の前にあるのは京都伏見稲荷大社、千本鳥居の絶景だった。



「……もうやめよ」



 朔のすぐ後ろを歩いていたもう一人の彼、玉置(たまき) (さとる)は構えたデジタルカメラを降ろして言った。


「なにが悲しくって、実物の前で液晶越しにこの景色見なきゃいけないんだ」


 言って、ダウンジャケットのポケットにカメラを突っ込む。そして、どこまでも続く朱色の連なりを、その幻想的な光景を目を細めて、まるで網膜に焼き付けるようにして眺める。


「――ねえねえ、タマちゃん?」


 気安い口調で、朔が気の抜けるようなあだ名で悟のことを呼ぶ。


「こういうのって、なんていうんだっけ? えーと、『京都を見て死ね?』」

「それを言うならヴェニスだけどね」


 悟はそう訂正し、でもまあ、言いたいことは分かるよ、と笑う。


 そして笑うと、それにつられるように三咲も振り向いた。振り向いた三咲の頬が紅潮しているのは寒さのせいばかりではないだろう。静かな興奮に彼女の瞳は輝いている。


「うん。わたし、来てよかった」


 悟と朔、二人に向かって笑みを深くする。すると、周囲を聾するように、ひときわ大きな葉擦れの音がうねった。それが静まると一転して、薄暮の千本鳥居に凪のような静寂が訪れる。そして三咲の次の言葉は、痛いほどの静けさの中を、鈴の音を転がすような明瞭さでもって悟と朔の耳に届いた。




「玉置君たちと一緒させて貰えて、本当によかった。


 ホント、すごい景色。まるで、違う世界に迷い込んだみたい――」




 ※  ※  ※



 日の落ちる時間が刻々と早くなり、ヒタヒタと背後に忍び寄る冬の気配に肌寒さを感じ始めた11月。悟と朔、三咲たち3人は修学旅行で京都を訪れた。


 2泊3日の初日。生徒たちは朝早くから新幹線に半日揺られ、着いたら早速バスに押し込められた。眠いダルい気持ち悪いと幽鬼のようにうめく生徒達は地獄の獄卒のごとく容赦のない教師達に追い立てられて、荒野を歩く難民のように法隆寺や東大寺と言った定番スポットを練り歩かされた。多くの生徒はそのあまりの慌ただしさに辟易し、国を代表する文化財に大した感銘を受ける暇もなくそれらを通り過ぎていく。


 初日の宿である京都市内のホテルでの出来事については特に語ることがない。つまり修学旅行の夜に起こりそうな悲喜こもごもが当たり前のように起こった夜だった。日付をまたいで深夜、酒盛りをさんざん邪魔された教師がキレ案配で「お前らいいかげんにしろ」と廊下で叫んだりしていたが、1日目はまあ、大過なく更けた。




 そして2日目。


 2日目は8人前後で作った班単位で京都市街を自由行動するという予定になっていた。小学校時代からの友人である悟と朔は当然のように同じ班になった。そのほかは女子3人のグループひとつと弓道部所属の男子が2人、最後に三咲で合計7人である。


 で、その日の早朝。蓋を開けてみれば女子3人は「大阪まで行ってお笑いのライブ見に行くから別行動ということで」という書き置きを残してすでにその姿はなく、その書き置きを一緒に見ていた男子二人は「じゃあ、弓道部の他の奴らと合流するから、そう言う訳でよろしく」と(のたま)って、どういう訳だ!?、と悟たちが呆けている内にいなくなってしまった。書き置きを見つけてから1分の早技である。


 京都の道ばたに、悟と朔、三咲の3人だけがぽつねんと取り残される。3人で思わず顔を見合わせる。早朝のホテル街にカア、とカラスの鳴き声がもの悲しく響いていた。



 ※  ※  ※



「玉置君たちと一緒させて貰えて、本当によかった」


 千本鳥居の石畳を歩きながら、そう言う三咲に、悟は照れたように頭を掻いた。


「そう言って貰えて僕も本当によかったよ。……班が集まる前に分裂したときはいったいどうしようかと思ったけど」


「タマちゃんが班長とかじゃないんだから、別にそれは気に病む事じゃないんだけどなあ」

「…まあ、それはそうなんだけどさ」

 朔の言葉に、悟はいかにも人の良さそうな含羞の笑みを浮かべる。とは言え、そうもいかないのがタマちゃんだからねぇ、と。それを見ながら朔は心の中でため息を吐いた。


 修学旅行の前、班でどこを回ろうか、という相談をしたときに女子3人や弓道部の連中が「いいよいいよそっちに全部任せるよ」と全部こっち、と言うか誰もやる人がいなかったので仕方なしに司会進行をしていた悟にまるっとぶん投げていたことを思い出す。

 今思えばはじめから自分勝手に居なくなるつもりだったのだろう。だからやめろと言ったのに、任されちゃったんだからと必死になって彼らのために自由行動中のプランを練っていた悟はもっと怒ってもいいと朔は思う。


「でも、みんないなくなっちゃったから開き直って趣味全開の見学プランに修正したんでしょ? じゃあ、私的には結果オーライだよ」

「いやあ、黒田さんが話の分かる人でよかった」

「こっちも、こんなに趣味の合う人が身近にいるとは思わなかったし」

「……」

「……」

「……ユウジョウ!!」


 ガシィッ、と拳と拳を打ち付ける悟と三咲。ちなみにこの二人、これまで事務的な会話以外に言葉を交わした記憶は確かにお互い記憶になかったのだが、何故かたった1日でマッポーめいた冗談をしめやかに交わすような間柄になっている。


 タマちゃんも楽しそうだし、そう言う意味では連中に感謝してもいいのかも知れない。

 無論、自分の大切な親友に心労を与えたことは一生忘れてやらないし、機会があるなら報復するのもやぶさかではないがと、当の親友に聞かせたらドン引きすること確実なことをにこにこ笑顔で考える朔。


 楽しげな二人を見ながら、彼は早朝からの出来事を思い出していった。




 ――話は早朝に遡る。


 取り残された3人は協議の結果、取りあえず一緒に行動することにした。悟が行きたいところはありますか、と聞くと三咲は「玉置君に全部お任せします」と答えた。


 今日のご飯はなにがいい?と聞いたとき、一番困るのは「何でもいい」という答えだとは世の主婦の皆さんの共通認識であるはずだ。それなら「黒毛和牛が食べたいです」と言われた方がよほど困らない。だってそう言われたら「寝言は寝て言え」と冷や飯を叩き付けることが出来る。


 それはともかく。

 ご多分に漏れず悟もしばし悩んだが、朝からの流れにさすがの彼も多少は腹に据えかねるものがあったのだろう。三咲が悪い訳ではないのだが、普段なら「お任せします」と言われても、素直に自分の好きなものなど到底選べず、ああでもないこうでもないとその人の好みそうなものを選ぼうとする性格の悟であるはずなのに、いささかやさぐれた気分になっていたのは間違いない。

 じゃあこっちも好き勝手やらせて貰うわい、と多少やけっぱち気味に趣味全開のプランを彼女に披露したのである。


 そして数分後、三咲と悟はなぜかお互い不敵な笑みを浮かべながら握手していた。雄弁な瞳に宿る言葉を読み解くならば「やるな」「おまえもな」だと思われる。


「方広寺の梵鐘は外せないと思うんだ」

「ああ、あの日本史上最高の言いがかり!」

「それに養源院。伏見城落城の折りに血みどろになった床板を供養のために天井に張ったという血天井で有名なんだけど」

「血天井! そう言うのもあるのか!」

「豊国神社で今はなき太閤殿下のご威光を忍ぶのもいいのかなと」

「もうさ、全部よきに計らっちゃっていいよ!? わたし玉置君に付いてくから!!」


 二人はずぶずぶの歴史オタクだったのである。



 なにが幸いするか分かったものではない。

 普段の悟ならこれは趣味的すぎるだろうと自粛していたはずの、明らかに修学旅行に来た学生のチョイスじゃない、「京都戦国ツアー」にテンションをあげる悟と三咲。


 三咲の方は「自分の趣味が一般的じゃないことは分かってたから、それに付き合わせる訳にもいかなかった」との理由から、自由行動で自己主張をする気はなかったとのこと。なのにこんな素敵なプランに誘って貰えるなんて、と彼女の方の感激もひとしおだった。


 歴史好きな女の子って、クラスには他にいなかったの? と朔が三咲に聞くと

「真田信繁が若いイケメン顔で固定されてる人達とは、それが悪いと言うつもりはないんだけれどちょっと価値観が相容れない」

 と業の深い微苦笑を浮かべながら答え、それを聞いた悟はなるほどなあ、と三咲を労るように頷いた。

 なにがなるほどなんだかよく分からない朔は、なにかしら派閥めいたものがあるのだろうか、とふと思ったが特に興味もないのでそれ以上は考えるのをやめる。


 そして、新見君はそれでもいい? と悟が朔に確認を取ると、朔は「タマちゃんの行きたいところでいいよー。僕はタマちゃんと一緒ならどこでもいいし」と1ミクロンの迷いもなく即答。今更なに言ってんの? という風で。


 その様子を見て三咲は、学校内のある特殊な趣味思考を持つ一部女子の間で、奇妙なる乗算行為の題材として悟と朔、どちらを前にするかというコミュニティ内を二派分裂に陥らせる大論争が巻き起こっていると言う噂を思い出す。

 時折となりを歩く悟の服の袖をちょいちょいと引っ張って、肩を寄せてながら楽しげに話し掛ける朔を見ると……。


 まあ、うん。

 ……とにかく三咲は考えるのをやめた。



 そんな個々の思いをよそに、観光が始まる。

 女の人が3人で(かしま)しいだが、同好の氏が二人揃えばやかましくなるようだ。二人は行く先々であれやこれやとうんちくを垂れ流す。朔は聞き手としては最高に近い人材で、そんな二人にイヤな顔をせず、すごいねー、面白いねー、と相槌を打っては時折質問を返す。3人は終始騒がしく(と言っても寺社仏閣を拝観する際のマナーに反しない程度ではある)、時間がたつのを忘れるほどに言葉を交わした。


 寺から寺へ渡り歩き、お昼になると悟が「冬の京都に来たらこれだけは食べてみたかった」と言う穴子の蒸し寿司を3人でおいしく頂いた。

 そして最後に「ひとつぐらいは普通に京都っぽいところに言ってみようか」と言う訳で、夕暮れ迫る中、最後の見学場所として、3人は伏見稲荷大社にやってきたのである。



 ※  ※  ※



「なんか、誰もいなくって僕らの貸し切りみたいだね」

「時間がよかったのかも。もうすぐ日も暮れるし」


 しばらく歩いても、彼ら3人以外の観光客の姿は認められなかった。こんな事もあるものだろうか。耳を澄ませても人の喧噪は遙か遠い。日本有数の観光地であることを忘れるほどの静寂に3人は包まれて、その静寂はちょっと怖くすらあるほどだった。


「……なんだか、黒田さんの言うみたいに、ホントに違う世界に来ちゃったみたいだよね」

「まあ、鳥居は内と外の世界の境界だからね。そう言う意味では確かにここは違う世界だよな」


 朔の言葉に悟が応じる。三咲はそれを聞きながら、確かに日本では昔から山そのものが異界だし、ここは稲荷神社の総本山。神域には違いない、などと取り留めのないことを考える。


「じゃあ、これは異界に繋がるトンネルみたいなものなのかもね」

「トンネルをくぐったら、そこは異世界だった、とか?」悟が笑いながら言う。

「それだったら、私はタイムスリップものがいいなあ。ベタだけど、本能寺で信長助けたりとか」

「で、森蘭丸と恋仲になったりするの?」

「ネタが古いなあ!?」


 古いネタだって分かる時点でご同輩でしょと悟がまた笑う。すると何の話? と朔が会話に入ってきたので悟がネタの出典元である日本の古典SFについて説明を始めた。それを聞きながら三咲はいつまでも続く鳥居の下を歩く。


「……」


 歩く。


「……あの」


 歩く、んだけど。


「……ねえ。この先の奥院って、まだ先なのかな……?」



 結構な時間を歩いているはずなのに、鳥居は一向に途切れない。千本鳥居の先には奥院、と言う建物があるはずなのだが、歩いても歩いても一向に辿り着く気配がないのだ。

 代わり映えのない景色に歩いた時間や距離の感覚があやふやになっているけれど、かれこれ30分以上は歩いているはずだし、だったら歩いた距離は1㎞を軽く超えるだろう。なのにいっかな奥院に辿り着く気配がない。


 辺りは暗くほとんど夜と言って差し支えなかった。さすがは天下の世界遺産、街灯などと言う文明の利器は文化財保護の観点からか当然のように設置されておらず、鳥居の周囲は鬱蒼として闇の気配が濃い。月の光が明るいのがせめてもの救いだ。


 ついさっきまでは幻想的な、などと言って感動していたが、今となってはもう、これが全米を震撼させたジャパンホラーの原風景だ(ギャーン!!)、と言わんばかりの雰囲気である。

 朔は袖口どころかしっかり悟の手を握っていたし、三咲はおい男同士!と突っ込む余裕を失って久しい。悟は携帯のLEDライトで暗闇に沈む鳥居のトンネルの先を照らしながらしきりに首を捻っていて、その顔色は暗くても分かるくらいあからさまに悪かった。


 進めど進めど、闇の中から浮かぶのは朱色の鳥居。まるで鳥居の中に吸い込まれそうな錯覚を覚える。いっそ鳥居の連なりを抜けて外の森に逃げ込みたい衝動に駆られもするがそれこそ遭難するだろう。それが悪手だと自覚できる程度には3人ともまだ理性を失っていない。もうちょっと歩けばきっと抜けられる、と自分を奮い立たせながら、悟たちはひたすら歩き続ける。



「地図だと、さほどの距離じゃなかったはずなのに……」


 悟はジャケットのポケットから大社近くのお土産物屋で貰ったパンフレットを取り出して、そこに載っている地図をLEDライトで照らしながら言う。何度確認したって現状は変わらないだろうが、そうでもしていないとやってられない、と言ったところだろう。


「道を間違えたとか……って、そんな訳ないか」

「鳥居に囲まれた一本道で道に迷えたら、ある意味才能だよ」

「修学旅行で遭難とか、学校史に燦然と輝く不祥事だよねえ」

「間違いなく向こう10年は語り継がれる国宝級の金字塔でしょ」

「あはは」

「あはは、……はぁ」


 三咲がことさら軽い調子で言い、悟が無理したように固く笑って冗談を飛ばす。笑いの語尾が、疲れたような吐息に変わる。

 まさか本当に遭難したとは思わないが、自分達が現在位置を見失ったことは間違いがなかった。

 ちょっと前に携帯のGPS機能も使ってみたがマーカーは自分の仕事を誇るようにばっちりと伏見稲荷を差した。そう言うこと聞きたいんじゃねえー!!と三咲がキレかけたが、二人はそれを責めることができなかった。



「――ねえ、タマちゃん?

 集合時間もあるし、もうそろそろ引き返した方がいいんじゃないかなあ?」


 そして、朔から何度目かの撤退の具申が行われる。

 最初は冗談交じりだったから「せっかくここまで来たんだし、ここでUターンは勿体ない」という歴オタ二人に却下されてきたが、今回はさすがに声に籠もった真剣味が違う。


「……うん。さすがに、もうそろそろ帰らないとまずいよね」

「帰りはタクシー使ったとしても……。確かに、帰り道を逆算すると時間的にはもうギリギリだな……」


 その言葉を待っていたように、二人は同時に頷いた。

 この二人、実のところ「きっとここまで来たんだから、奥院までは行ってみたいんだろうなあ」とお互いを(おもんばか)って自分から引き返すとは言えなかったのだ。でも実際、歩いても歩いても途切れることのない鳥居のトンネルに、二人のSAN値(正気)はガリガリ削れていたのである。それはもう着実に。そして割と切実に。


「よし帰ろう! ここから先は将来自分のお金で来よう!!」

「そうだよね!! それにこういうのも修学旅行のいい思い出だよね!?」

「今度はタマちゃんと二人っきりもいいなぁ」

「……は?」


 満場一致で引き返すことに決定(若干名おかしな願望も混じったが)。

 そうと決まればこんなところに長居は無用だ、と3人は揃って回れ右。



 ―――瞬間。


 ざああ、と葉擦れの大波が辺りを包んだ。

 まるで彼らを中心に渦を巻くように、音が彼らを四方八方から取り囲む。それはまるでここから逃がさない、とでも言うかのように。

 3人は、慌てて吹き付ける風に目を瞑った。北風を耐え凌ぐ旅人のように嵐の収まるのを待つ。


 そして。

 吹き付ける風の最中に、悟がわずかに目を開けたのは、特別なにかを考えての行動ではなかった。


 しかし、彼は見た。


 同じように目を瞑って突風に耐える幼馴染みと今日仲良くなった女の子。どこまでも続く鳥居のトンネル。そして、まるで排水溝に吸い込まれる水のように中心に向かい渦を巻き、どこかに流れて消えていく自分達の帰り道(・・・・・・・)を。



「…………え?」


 画像編集ソフトで自分の見ているものを加工されているかのように、世界が鳥居の中心に吸い込まれていく。隣にいる朔と三咲もぐにゃりと曲がって見えた。慌てて手を差し出すと、彼自身の手もまた、同じようにねじ曲がっていた。ねじ曲がって、朔や、三咲と同じようにその中心点に吸い込まれていく。



「…………ええ?」


 訳もわからず発せられた声も渦の中心に吸い寄せられていく。

 そして、悟の意識もまた、それに吸い込まれるように、思考の輪郭を失っていく。



「…………えええ?」



 ぷつん、と。

 全てがその中心に収縮して。悟は、意識を失った――






 本文で書いた観光プラン(方広寺→豊国神社→養源院→伏見稲荷大社)については、伏見稲荷以外は東山区内でいい感じにまとまっているため十分現実的に使えると思います。


 異世界ものなのに何でこんな事につまらないこだわりを発揮したのか。自分自身、書き上げてみて理解に苦しみました。とはいえまあ、できてしまったのだから投稿しちゃった訳ですが。


 それにしたって、主人公を異世界にすっ飛ばすだけのことにどれほどの文字数を消費したのか。一体作者は何を考えているのか。馬鹿のか。死ぬのか。自分は何故生きているのか。人はどこから来てどこに行くのか。


 鴨川の流れは、何も答えてはくれません。

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