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どうして忘れ方を、

作者: 夢野花香


 人が怖くて、感情表現も苦手で、話すなんてとてもできるものではなくて。

 目が合うだけで緊張してしまって、とてもとても優しく親切な子に話しかけてもらってもつい黙り込んでしまう私に友達なんてできなくて。

 一人でいたいわけでもないのに。独りが好きというわけでもないのに。

 本当は仲良くしたい。みんなと雑談もしたいし、みんなとの壁も壊したいし、冗談も言い合いたい。

 一人でも良いから、だから、誰かと一緒にいたいのに。

 みんな遠ざかっていく。みんな、私に遠慮する。


 彼は、そんな私に話しかけてくれた。笑いかけてくれた。雑談もしてくれて冗談も言ってくれた。

 最初はみんなもそうしてくれた。けれど、彼は毎日のようにしてくれた。〝嬉しい〟なんていう一言では表現できなかった。

 彼は私に愛し方を教えてくれた。

 だから、自分でも驚くぐらい人と話せるようになって、相手の目を見ることもできるようになった。

 気が付いたら彼のことばかり見ていて、彼のことばかり考えていて、彼でいっぱいになっていて。

 そのうちに、これが恋なんだとわかった。

 でも。

 彼が言った。彼女ができたのだと。ずっとずっと好きだったのだと。告白したのだと。

 無邪気に言う彼を見ながら、私は泣きたくなって。涙が溢れてきそうで。

 今までの態度は全て親切心で、決して愛情ではなかったのだと突きつけられて。

 わかっていたけれど。心のどこかで考えていたことだけれど。

 私は言った。おめでとう、と。彼は照れ笑いを見せてくれた。

 彼が幸せならそれで良いんだ。彼を応援すること、それが正しい答えだと自分に言い聞かせた。

 私が勝手に期待して、好きになって、失恋して。

 それだけの話なのだから。だけど、


 愛し方を教えてくれたように、忘れ方も教えてほしかった。



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― 新着の感想 ―
[一言] 初めまして。 柏木 柚葉です。 切ないですね... でもなんとなくあったかいです... すごく優しい作品ですね* 作品投稿ありがとうございました♪
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