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マニア・タイフーン  作者: 河野 る宇
◆第4章~台風の目
8/14

*反撃用意

「まあまあ」

 今度はベリルが2人をなだめた。

「それより、追跡はしてくれているか」

<もちろん。そっちはライカがやってくれてる。封鎖されたらすぐに連絡してくれ>

 電話を切ったあとラジオのボタンに手を伸ばすと軽快な音楽が車内に広がった。

「ねぇ……これからどうするの?」

「ルカが証拠を掴んだあと、こちらから仕掛ける」

「攻撃するってこと?」

 それには答えず他の質問を投げる。

「武器は何を持っている」

「これよ」

 出された黒い塊を一瞥する。

「H&K(ヘッケラー ウント コッホ)USPか。いい銃だ。ナイフは」

 首を横に振った彼女に小さく溜息を吐き出すと、バッグからナイフを取り出し渡した。

「常に2種類を持て」

「ありがと」

「ナイフ代も付けておく」

「これもお金取る気なの!? ガメついわねっ」

 そうか、これはいやがらせなのね。今までの傭兵たちの恨みを込めて彼が代表のように私にいやがらせをしているんだわ。

 そう自分で結論付けたのはいかがなものかとも思うのだが……彼女はそれからさらに思考をめぐらせた。

 確かに彼が言ったように、一方的な想いで彼らを追いかけ回すのは良くないかもしれない。あまりの情熱に先走ってしまっていたわ。

 気付くのが遅すぎるが反省したという事には、ある程度の賞賛は与えたい。

「……」

 マーガレットは己のに反省したあと、彼の横顔を見つめた。

 それを覗けば、彼はとても優しいのだわ……ナイフもくれたし、なんだかんだで実は色々と教えてくれてる。綺麗だし。

「……」

 何か勘違いしているな……見つめてくる気配を感じて眉をひそめる。

 もちろんこれまでの仲間の復讐もあるが、単にそれを口実に嫌がらせを楽しんでいるだけなのである。元々彼は嫌がらせで反応を楽しむ悪いクセがある。

「単なる嫌がらせだ」とあえて告げ彼女を怒らせるのもどうかと彼は無言を貫いた。

<ベリル、そこからコロラドに向かってくれないか>

 再び鳴った電話に応えるとライカの声が響いた。

「コロラドか」

<そこからちょっと北にある線で頼む。こっちで捕捉してるから。途中の中継基地からの合図でカーティスが合流するよ>

「解った」

 電話を切ったあと、バッグから取り出した物を手渡す。

「ヘッドセット?」

「これから忙しくなる」

 一通り使用説明して彼もヘッドセットを装着し携帯を仕舞う。

「! いいの?」

「今後はこれで全てをこなす」

 ヘッドセットを指さした。

「バッテリーとか大丈夫なの?」

「外部バッテリーだ」

 今は車から電源を引いていると説明した。

「……」

 なんだかこの車って最先端いってない? 普通に乗っていたら気が付かないけど、凄い技術が組み込まれているような……

「知る通り、今は市販の物から軍に流れる仕組みだが傭兵の中には市販の前に使用される機器類もある」

「! そうなの?」

「全てという訳では無いがね」

 ずっと傭兵に張り付いていたのに全然気付かなかった……カーナビをマジマジと眺めてボタンを押してみる。

「あれっ?」

 何も起こらない……

「指紋認証だ」

 首を傾げている彼女にクスッと笑みをこぼす。

「……そうなの」

「防犯のためにね」

 状況によっては車を乗り捨てる場合もある。

「!」

 感心しているとヘッドセットから電話らしい電子音が続いた。慌てて教わった通りに小さなボタンを押す。

<こっちの準備は出来た>

「カーティスだよ」

 聞き慣れない声にいぶかしげな表情を浮かべている彼女に応えた。

「! ああ……さっきライカって人が合流するとか言ってた人ね」

「こちらはあと3時間ほどで境界線に到着する。それまでに奴らが動くだろう」

<了解。気をつけてな>

 動く……動くって、殺しに来るってこと? マーガレットはドキドキした。

「何かにしがみついておけばいい」

「そうさせてもらうわ……」


 それから1時間──

「来たようだ」

「うっ……!?」

 前方に見える大型トラックは目一杯に道路を塞いでいる。

「どうするの?」

「このまま進む」

「ええええっ!?」

 いくらなんでもムリムリムリ!

「撃てるな」

「私がっ!?」

「当てようとしなくて良い。とにかく前に撃て」

「ホントに私がやるのっ!?」

 ウソでしょ!? マジなの!?

 銃を取り出す手が大きく震えている。その慌てっぷりに頭を抱えた。

「落ち着いて。慌てなくて良い」

 これでよく今まで仲間たちの側にいられたものだ……

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