新たな日常
週明けの学校で見掛けても顔見知りのまま。
変化があるとすれば、顔を見合わせた時に挨拶をする様になったことくらいだ。
「翔也、元気か?」
と声をかけて来たのは先週、転校生と同じクラスになれなかったために半分程意気消沈していたクラスメイトで幼馴染みの東雲瑛士だ。
土曜日に『大丈夫か?』と言うメッセージを送ったくらいだ。
問題無いと言う旨のメッセージを貰ったが、半信半疑でしかなく、実際に会って、ピンピンしている様子を見て、態とらしく息を吐いた。
上履きを履いて教室に向かっているとやけに騒がしい教室があったため、つい横目に見てしまう。
廊下きら覗いた教室では、彩芽が男女問わず囲まれていた。
話しながら微笑む姿に翔也は先日とは全く印象が違うな、と感じた。
瑛士も同じ様に視線を滑らせて彩芽の姿を捉えると納得した様に
「美少女だもんな。藍川さん」
と言った。
そんな瑛士には永峰千聖と言う彼女が居る。
瑛士と千聖は仲の良い、理想的なカップルとして、学園内ではかなり有名だ。
惚気そうになった瑛士に他のところで話してくれ、と手を振った翔也にいつもの事だと瑛士は笑って話しかける。
「翔也は、藍川さんのことどう思ってんだ?」
「優しそうな人だな。それだけ」
「淡泊だな」
「見てるだけで十分だろ?」
「確かに」
どうしてか、先日は一緒の傘に入ると言う出来事があったが、元々存在する世界が違うのだ。
仲良くなることなどあるはずが無い。
関わるのは先日だけで、もう無いと思っていた。
それが覆されたのは、来年から一人暮らしをしても良いと言われ、新しく住むマンションに来た時だった。
玄関前に突っ立っていた翔也は突然
「何をしてるの?」
と声をかけられたため、驚いて声のした方を見ると鈴音が立っていた。
「僕の部屋はここなんだけど、もしかしてそこが翔也君の部屋?」
「はい、そうです」
「お隣さんだね。よろしく」
「そうですね。よろしくお願いします」
と鈴音と話した翔也は、これからどうなるのかドキドキした。
数日後
「翔也君、一緒に夜ご飯食べない?」
家に入ろうとドアノブに手を伸ばそうとした時、タイミング良く帰ってきた鈴音にそう声をかけられた。
「鈴音さんの家で、ですか?」
「そう、僕の家で」
「い、行きます」
「本当!嬉しいな」
笑顔で話している鈴音だが、翔也に話しかけた時は有無を言わせない空気を纏っていた。
鈴音の纏う雰囲気によっては、今の翔也の様に断れない人も居るだろう。
会うたびに雰囲気の違う鈴音のことをいまだに掴めずに居る翔也は、鈴音の大まかな経歴を知らない。
直接聞いたこともあるが、話を逸らしたり、聞こえない振りをされたため、諦めている。
「鈴音さん、どうして誘うんですか?」
「ん~、楽しそうだと思ったからかな」
「食べて勉強するだけですけど……」
「そうだけどね」
と鈴音と話していた翔也は、初めて鈴音と彩芽と夜ご飯を食べた時に
「折角だから、彩芽と勉強したら?」
と鈴音に言われたことを思い出した。
その日から夕食に誘われた時は勉強して家に帰ると言うのが、翔也の日常となっていた。




