EP58 まおうさまとあーそぼっ
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「…それにしてもこの前の生放送。まさかあんな終わり方で終わるとはな」
「本当ですよ。最後は会場に集まった子供達と一緒に歌を歌って終わりだった筈なのに、急にアドリブで子供達を勇者に見立てて魔王をやっつけて終わっちゃったんですから!最終回でうたのおにいさんが死んじゃったんですよ!前代未聞ですよ!」
スタッフルームで仕事をこなしながら片手間に雑談に花を咲かせる間宮と青柳。
「でもアイツも後悔しただろうな。アイツからしてみたらアレで終わって伝説になるつもりだったんだろうが」
スタッフルームでの仕事をひと段落させると青柳と共にいつララを撮影していたスタジオに向かった。
「ええ。まさかあの最後の生放送がきっかけで新しいスポンサーがつくなんて流石の魔王様も想定外だったんだろうな!」
そこは前と殆ど変わらない<いつララ>のセットが組まれていた。
「しかも撤退した髙橋製菓の代わりについた新しいスポンサーがお前ん所のAOYAGIなんだから俺は驚きだよーー!!やっぱりコネ入社はやる事が無茶苦茶だよなーー!!」
「まぁ、それ程でも〜〜」
「褒めてない。いつもみたいに訂正しろよ。」
間宮は青柳の頭をぶっ叩く。
「それも私の武器ですから!」
魔王のように堂々と笑顔で開き直る青柳。
「ったく……」
「だけどそう思えたのもまおおにいさんのおかげです。それに私はちょっとパパに話をしただけ。契約を決めさせたのは魔王の生き様ですよ」
「それが無茶苦茶だって言ってんだよ。不可能を可能にしちまうんだから」
撮影の準備をしながら辺りを見回す間宮。
「所で肝心のウチの魔王様は今どこにいるんだー?」
「もしかして、きっと今日も……」
「またかアイツは!」
「大丈夫ですよ。いつもみたいに」
間宮は舌打ちしながら腕時計をガン見する。
「5.4.3.2」
「待たせたなぁ!!!」
慌てて魔王がスタジオに滑り込んでくる。
「今日もギリギリセーフだ!!」
「アウトだよ、馬鹿野郎」
間宮は持っていた台本の硬い部分で魔王の頭を思いっきり叩く。
「痛いなぁ!!何故だ1秒前だろ!ギリギリセーフじゃないか!!」
「この世界じゃギリギリはアウトなんだよ!それにどうせ遅刻するならするで魔王らしくちゃんと遅刻しやがれ!」
「魔王はルールを破らない。それが子供のお手本となる相応しい魔王だ」
「あの2人またやってる」
「あのバカ……」
微笑ましく撮影が始まるのを待っている優菜と奈緒美。
「くそ。一丁前に魔王名乗るくせにプライドだけはうたのおにいさんらしくなりやがって……それならお手本らしく台本はちゃんと覚えてきたんだろうなぁ?」
「当たり前だ。何故なら我は子供のお手本となる相応しいまおうだか」
「はいはい分かった分かった。じゃ始めるぞーー」
まるで青柳との会話のようにサラッとスルーすると仕事に戻る。
「うふふ」
そんな魔王達の様子を遠くから見守っていた霧島。
「よっ!」
「げっ……」
「おいおい、それがせっかく心配して様子を見にきた奴にする態度かよ?」
突然顔を出した辻に先程の態度とは一変しあからさまに不機嫌な態度を取る霧島。
「何しに来たのよ?」
「だから言ったろ。様子を見に来たんだよ」
「それはどうも。お気遣い感謝するわ」
興味なさげに返事を返す霧島。
「あのなー、誰のおかげで番組復活を嫌がる上層部を説得出来たと思ってんだよ?」
「あれれ〜おかしいわね。今アンタがこうやってフリーとして上手く業界内でやってけてるのは誰のサポートがあったお陰か忘れたわけ?」
「それはだなー……」
急に口籠る辻。
「冗談よ。ちゃんと感謝してる。アンタがいなきゃ番組は復活できてないもの。ありがとう」
「……っ。でもよかったのか?番組名を変えちゃっても」
「いいのよ。それに新しい方がウチの番組のコンセプトに合ってると思うから」
「まぁな。確かに合ってる」
「でしょ?」
ようやく霧島に笑顔が戻った。
「やっと笑ったな……。初恋の女が笑ってないのは気分が悪い。あーあなんで結婚してるかなぁーー……」
辻は小声で呟くとガックシと項垂れる。
「ん?なんか言った?」
「いやなにも」
「さぁ、撮影始めるぞ。青柳」
「どうぞーー」
間宮の指示を受け青柳はたくさんの子供達をスタジオに連れてくる。
「わぁーーーー!!」
「ほんものだぁーーーー!!」
子供達は一斉に魔王の元へ集まり魔王は笑いながら子供達を迎える。
「それじゃあ<まおうさまとあーそぼっ!!!>。本番まで5秒前、4.3.2...」
サイレントで合図が終わりカメラが回り始める。
「さぁ、幼き勇者達よ。今宵も我と一緒に遊ぼうではないか!!」
魔王は笑う。
男の笑った顔は魔王というよりまおおにいさんらしい自然な優しい笑顔に子供達も笑った。
おしまい。
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勝手に祈ってお待ちしております。




