EP49 決着つけなきゃな
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今回の騒動で予定されていた撮影は全て中止になったその日の帰り道。
「霧島さん大丈夫よね…?」
「どうだろうな。でも大丈夫だろ」
「なわけないでしょ。本当に大丈夫だと思ってたらそんな心配しないわよ」
「だったら最初からそう言えばいいだろ。まどろっこしい」
どこかめんどくさげな反応を示す魔王に怒りを堪える奈緒美。
「随分冷たいのね。まるでもう興味がないみたい」
「そうか?」
「そうよ。私はてっきりアナタのことだから「我は納得できん!!」とか「我の許可なしに番組を終わらせるなどあってたまるか」って言いながら上司に殴り込みにでも行くと思ってたんだけど、ちょっと期待外れだったみたいね」
「勝手に期待したんだ。我が知ったことか」
「それよそれ。そうやって文句言ってやりたいとか思わなかったわけ?」
「別に。でも我としては丁度いいタイミングだったかもしれない」
魔王の発言に思わず歩みを止める奈緒美。
「は?どういうこと?」
「我には他にやるべき事があるってことだ」
実は昨日。奈緒美と別れたあと我は勇者に呼び出されていた。
「…なんのようだ。あ、今日の礼はせんぞ」
「お前じゃないんだ。一々そんな細かい事は気にしない」
悪かったな。一々細かい事が気になる性格で。というかお前がいい加減過ぎるのだ。なのに女性にはモテるし、本当気に食わん奴だよお前は。
「…じゃあなんのようだ」
「元の世界に帰れるかもしれない」
「なんだと!?どういうことだ!」
「さっき俺たちの世界にいるエレンと話すことが出来た」
エレンといえばいつも此奴といた女魔法使いだな。魔王である我の力でもあっちの世界に干渉する事など出来なかったというのになんて女だ。少し羨ましい。
「それで師匠が昔俺にこの剣を託した時に言っていた言葉を思い出したんだ。<白き光を纏う聖なる力と黒き闇を包み込む魔なる力が互いにぶつかり合った時、常識を超える力がその剣に宿る>師匠はそう言っていた」
確かに周りくどくて面倒くさいアイツが言いそうなセリフではあるな。
恐らく白き光を纏う聖なる力は勇者の事を指していて、対する闇をも包み込む魔なる力は魔王である我の事を言ってるのだろう。
「当時は正直言っている意味が分からなくてなあなあで事を済ましたのを覚えてるよ。その時は師匠から剣を託された事が嬉しくて他はどうでも良かったから。でも今思えば師匠はきっとこうなることを分かって言っていたたのかもしれない」
「だろうな。奴は意味もなくまどろっこしい事を言う奴じゃない」
思えば思うほどいかにもアイツがやりそうな事だ。
「これは俺の推測だが、多分あの時俺がお前にトドメを刺そうとした時お前はそれに抵抗した。きっとそれがきっかけになって無意識のうちに俺達は剣が持つ秘密の力によってこの世界に来たんだとすれば全ての説明がつく」
「なるほどな…ということは今こうしてここにいるのも全部アイツの思いどりだったってわけか」
「そうなるな……」
まさか全部アイツの手のひらの上で転がされていたとはな。魔王である我をも出し抜き、弟子である勇者にすらこの事を明かしていなかった。ったく、一貫してどこまでも足を引っ張るのが大好きな困った友人だ……。今頃、呆れる我の様子を見てゲラゲラと大笑いしながらしてやったりと喜んでる顔が簡単に思い浮かぶわ。
「でもなんで師匠はそんな力を持った剣を俺に託したんだ?もしかして他に何か目的があって、」
「ふん。そんなの決まっておろう。我への嫌がらせだ」
「嫌がらせって、そんな程度の理由でこんな大掛かりのことしたって言うのかよ」
「前にも言ったろ。アイツはお前が思ってるよりそういう奴なんだよ。アイツは俺の事が大嫌いだからな、やっても不思議じゃない」
「…だけどそんな師匠に俺は今感謝もしてる」
いきなり我に剣を突きつける勇者。
「師匠のお陰であの時の決着がようやくつけられる。元の世界なら俺達も本気を出せるし、勇者として魔王としても互いに相応しい場所で終わりを迎えられる。お前だってあの時の決着をずっと望んでたはずだろ」
「本気か?」
「ああ」
「…そうだな。正直言ってこうやってお前と仲良しこよしするのも悪くはなかったがそろそろ白黒つけるのも悪くないか」
勇者は無言で頷く。
「まぁ、勝つのは我に決まっているがな。それでもいいのか?」
「おいおい冗談よせよ。勝つのは俺だ」
「フフッ……いいだろう。受けて立ってやる」
勇者は笑顔で勝ち誇り、魔王は不気味に微笑みながら挑発する。
こうして我にはやるべき事ができた。即ち今は子供番組どうこうと言ってる場合じゃない。命も世界の命運もかかってるわけだからな。
「やるべき事ってなによ?」
だから辞める。辞めるつもりだった。そう彼女に言って納得させられる自信はない。そもそも信じて貰えるわけがない。
「やるべき事はやるべき事だ。気にするな」
「何それ。言えない事でもするわけ?」
完全に疑われてる。無理もない。だけど、どうせ彼女とも別れることになる。惜しい気もするが巻き込むわけにも行かない。だったら早めにはっきりしておくのがお互いの為になるだろう。
「別に」
「だったら言いなさいよ」
「言ったところでなにも変わらない」
ッ!
舌打ちが聞こえると奈緒美は我の頬を思いっきり張る。
「アンタも霧島さんと同じ事を言うのね。…言わなきゃなにも変わらないって言ったのはアンタでしょ!!」
「……」
「アンタを好きになったこと私に後悔させないでよ…」
「……」
それから彼女は一回も我の顔を見ることもなく去って行った。
終わったな。我の初恋も…。全部。もしも今彼女の手を掴み何か声をかければ……いや、終わったことだ。これでいい。
これで終わるのが彼女の為だ。
我は幸せをただ祈るだけ。
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次回もお付き合い頂ければ嬉しい限りです。
勝手に祈ってお待ちしております。




