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拾壱乃噺 戦闘用人型機械七三式

夕日が沈み行く町の中、僕は、七三式ナナさんへと駆け出した。

とりあえず近場にあった石を取り、彼女の綺麗な顔面目掛けて投げつける――


「ふっ、これが貴方の戦い方ですか?」


顔面直撃コースの石ころを腕でガードし、七三式は迫り来る僕に向かってナイフを突き立てる。

そう、僕は基本、正攻法で戦わない。

無理だからだ。

仮物の力をもつ人間と正面から正々堂々と戦うとしたら、はっきり言って常人では全く太刀打ちが出来ない。

だから僕は基本相手は顔面を狙うし、男だったら股間も平気で蹴り飛ばす。

でないと、おそらく僕は昨日のレインボーサムライにすら瞬殺されてしまうであろう(まあ、あいつはトイレで不意打ちするぶん、僕よりも卑怯だが)。

ストイックなまでに洗練された卑怯。

それが、僕のメンタル的な部分ではない唯一の『強さ』であった――


「まさか素手で何の策も無しに、武装した殺人ロボに勝とうとは思わねぇよ!」


僕は学ランを瞬時に脱いでねじらせ、果物ナイフを受け止める。

そして、ナイフを持つ七三式の腕を蹴り飛ばした。

「ふん、貴方は勝てません、なぜなら守るべきものがある私は強いからです」

ナイフを弾かれた七三は体勢を崩す。

しかし、次の瞬間、僕の鉄拳を背後に避け、七三は大きく距離をとった。

その少しの時間に、僕は背後にある、弾丸を撃ち尽くしたマシンガンを広い、銃口の部分を持ち、こん棒のように構えた。

まあこんなものでも、素手よりはマシか。

確かに、守るものがある奴は強い。

だから、多分、こいつは昨日のサムライよりは、確実に、強い。

「貴方はただ、いいように女の子達に使われているだけ、情けないですね、ふふふ」

嘲笑し、七三式は僕に向かって再び駆け出し、鉄拳を繰り出す。


「甘噛が、北王子が、伊丹が盗撮されるなんて事態は避けたいんでね、女を守るのが男の子の本懐なんだよバーカ!」


僕はその一撃をマシンガンで防ぎ、彼女の顔面目掛けてヘットバッドを放つ。

恐怖からか、言葉遣いが乱暴になる。

『ぐっ!一人は男の子でしょう!』

ヘットバッドは七三式の顔面に減り込む、調度、アゴの部分にクリティカルヒットする。

彼女のアゴは完全に外れ、だら。

今のは非常に惜しかった。

人間なら既に気絶している所だが、生憎相手はロボットであり、人体とは全く違う構造をしている。

本当に、こいつはどこを狙えば倒せるんだ?


「さっきも思ったが、よく知ってるな」


僕は彼女のカウンター攻撃である垂直チョップを、紙一重で避ける。

今のは、本当に危なかった!

首の骨を折られる所であった!


『バカな子よね、どれだけ君に尽くしても、男の子ってだけで、もうアウトなのに』


七三式は再び僕と距離をとり、不自然に凹んだアゴのパーツを力ずくで元の部位に戻していく。

そうだ、甘噛は逆立ちしたって、男の子なんだ。

女の子には、なれない。

そして僕は、男には、興味がない。

だが、僕はこいつには言われたくなかった。

人間でもないし、アゴ外れても自力で直せるし。

「…‥」

だが僕は、それでも奴に返す言葉がなかった。


『機械ですら女の子の形さえしていれば、私だってご主人様に寵愛されているのに、哀れよね』


そうなのか。

やはりこいつはセクシャロイドなのか。

なら、もっと弱くてもいいだろ!

なんで引きこもりが作ったダッチが、こんな強いんだよコラ!

「いや、お前のご主人とやらはお前しか抱く相手がいないだけだろう、哀れなことだ」

僕は甘噛をバカにされたので、正直頭にきていた。

七三式が、アゴパーツを直しているため、僕は呼吸を整えていたのだが、声を荒げてしまっている。

だが、声が枯れても、呼吸が乱れても、戦いに不利になっても、僕は甘噛をバカにする奴が許せなかった。

『…‥?』

七三式は眉を寄せて、いかにも不快そうな表情で首を傾げる。

既にアゴは直ったらしく、あるべき位置にしっかりとついていた。


「むしろ、抱く相手がいなかったから、お前を作ったんじゃないのか?女の形に」


僕は挑発と甘噛をバカにされた怒りの意味を込めて、眼前のセクシャロイドに向かって叫ぶ。

夕日が沈み行く町の中で、僕達の影が少しずつ大きくなっていく――


『死にたいみたいですね…‥いいわ、死になさい!!』


感情に任せた僕の挑発は、以外にも効果絶大だったようだ。

七三式は明らかに今までの姿勢と違い、全身に力を入れすぎている。

そして彼女は先程までの無駄のない動きから一変、両手を固く握りしめ三度、僕に向かって全力で駆け出した。

だが、それは僕の狙い通り。

全力で走っている、ということは、咄嗟に左右前後に攻撃を避けられない、ということでもあるのだ――


「やだね。僕は女の子達のためにも、負けられないんでね!!」


僕は横っ飛びに、彼女の突進を避ける。

やはり彼女はスピードを上げた代償として、反応が追いつかなくなっている。

今の彼女の攻撃なら、なんとか避けることが可能だ、ならば――

『あら?私も女の子よ』

「お前は女の子じゃない、機械だ!!」

再び突進して拳による突きを繰り出す七三式。

僕はズボンのポケットに手を突っ込み、その一撃を左に避ける。

紙一重、のハズが、その一撃の衝撃波で僕の左の頬が切られ、思い切り出血した――

しかし僕は怯まず、ズボンのポケットから取り出したピンポン玉サイズの小型爆弾を彼女の顔面に投げつけた――

『くっ……‥やるじゃないですか、私と徒手空拳で互角に戦った相手はあなたくらいしか、いませんよ?』

小型爆弾は着弾と同時に粘着質の液体を出し、不敵に笑う七三式の顔面に完全にくっついた。

『まぁ…‥こんな武器を隠していたなんて、少し意外だったですけどね』

「動くな!動くと爆発するぞ!」

そう、僕は最後の武器を隠していた。

マシンガンなどは全て使ってしまったが、実は、まだ爆弾があったのだ。

『だから?』

七三式は氷のように無表情になると、その武器をものともせず、僕の息の音を止めようと動き出す――

「なぜ、お前が女の子じゃくて機械なのか、分かるか?」

七三式は顔面の半分の肌が裂け、眼球にあたるパーツが吹き飛び、完全にアゴが砕けても、それでも僕に向かって鉄拳を繰り出す。

そんな彼女に向かって、僕は拳を構えたまま、問い掛ける。

全く、ゾンビのようなバービーロボットの親玉はやはりゾンビだな…‥


『聞き流してあげたのに、蒸し返すのね。よほどの死にたがりなんですね!!』


彼女の鉄拳は、完全に宙を切った。

もう既に半分の眼球を失った七三式は、正確に僕を狙うことなど出来なくなっていたのだ。

だから、満身創痍の僕でもその一撃を避けるのは、比較的容易であった――


「甘噛祈理の女心を…‥全く理解してやれないからだよッ!!」


僕は、残りのありったけの力を拳に込めて、怒りに任せた一撃を七三式の顔面にぶち当てる。

決まった。

完全なる、クリーンヒットであった。

と、思った、瞬間であった――

『きゃああああッ?!』

悲鳴をあげる七三式の上半身は今の一撃により、腰から外れて吹き飛ぶ。

メイド服のスカートをはいた腰と綺麗な足だけが、僕の眼前に残る。

そして、その腰から生えている、人体で言うところの背骨のパーツが変形し、細長いレールガンが展開された。

ただの銃弾である可能性もあるが、砲の先端が火花を散らしているから、多分レールガンである、ハズ。

不覚だ、ロボットなら武器が内臓されていたとしても、何の不思議もないというのに。


『はい残念でした、確かに女の子じゃないから、上半身レールキャノンに変形しちゃった♪』


すまないレインボーサムライよ。


僕の中でお前がビックリドッキリ変形人間部門第一位だったんだが、どうやらその記録は更新されそうだ。

上半身が外れて、尚且つ背骨がレールガンになったら、掌になる奴よりも凄いだろう?

多分。

あ、いや待て。

七三式(こいつ)は機械だから、そもそもその部門での優勝は無理か。

そして、ビックリドッキリ変形した七三式のその砲身が、僕の顔に突き付けられた――

「今まで悪かった甘噛…‥」

余裕をかましている暇など全くないのに、レインボーサムライなど思い出していた僕が馬鹿であった。

いや、今のは走馬灯だったのか?

だとしたら、もう一回やり直してくれ。

僕にとって、サムライは死に際に見るほどの主要キャラじゃない。

そして今、僕はなぜ甘噛の名前を口走っているんだ?

とにかく、どの道この距離では回避は絶対に不可だ。

確実に、死んでしまう。


『ゲームセット♪』


「俺は、お前が――」


末期の言葉、最後の告白すら砲撃の際に生じる電流の甲高い音に掻き消される。

零距離での砲撃であったため、レールガンの弾丸は電流を帯びて火花を散らしながら、発射と共に完全に僕の体に着弾した。


悪夢のような、現実であった。


いつもの冒頭の夢オチならまだしも、これは本当に現実なのだ。


そう――


僕はその瞬間、死んでしまったのだ。


彼女から発射された巨大なレールガンの弾丸は、喉元を貫通する。

と同時に、おびただしい量の血が、夕日に染まるアスファルトの上にバラを咲かせた。

そして、僕の首から上は根こそぎ胴体から離れて空中に飛び、いやな音をたてて道端に転がり落ちる。

理解出来ない。

反応出来ない。

復活出来ない。

直視できない、しようとしても、もう既に出来ない。

僕は既に、息をしていない。

意識もなければ、脈も打っていない、心臓も脳も、完全に止まっている。

僕は、完全に死んでしまったのだから。


僕の全てが、無に還っていく――



次回につづく――



第4回ウラけもの


「HAHAHAHA!!今回は私こと、レインボーサムライと」


「戦闘用人型機械七三式、通称ナナさんが、ウラけものを乗っ取りました、ふふふ」


「つうか、マジで死んじまったなサオトモ姫也!!私が手を下すまでもなったな!!カーッカッカッカ!!」


「竿友なんて、なんか卑猥ですね。というか、あなたの目的は竿友さんを倒すことではないでしょう?」


「お、そうそう!!私は最強の存在、北王子昴をブッ倒すことが目的だ!!」


「まあ、姫也とかいう人が死んだから、北王子さんって人はもう、戦えないでしょうけどね」


「なら、消去法で私が最強だな」


「そういうものなのですか?」


「戦えない時点で最強じゃねーし、私はまだまだ戦えるんで、私が最強だろうどう考えても!!」


「まあ、そういう事にしておきましょう」


「ところでYo、次回からマジでどうすんだよ、主人公死んじまったZE?」


「まあ、希望を抱いている人がいるのだとしたら、諦めて下さい。私と戦った早乙女姫也という少年は完全に死にました。私の隠し武器、背骨型レールガンの一撃により、彼は死んだのです。彼は仮面ライダーやジャンプ作品の主役ではないので復活はしません。作者が言っていましたが、『リアけも(仮)』は死んだ人間が復活するような作品ではありません」


「なら、次回から私が主役でよくないか!?タイトルは『サムライレインボー』で」


「そういう話は主人公復活一発逆転フラグな会話ですが、まず復活はありえないし確実に死んでいるんで、まあいいでしょう、次回からは、私とご主人様の物語になりますわ、ふふふ」


「あーあ、なんか釈然としないけど、仕方ねえよな、姫也は人気ねえし主役交代やむなし、カーッカッカッtカ!!」


「なんですかそのアシュラマンみたいな笑い方は」


「いや気分で」


「あ、そうですか…‥さて、今回のウラけものはここまでにしておいて、いよいよ次回からは、新展開ですね」


「登場人物が大分変わっても『リアけもの』を、これからもよろすくしくよろだZ!!」





「ではみなさん、また会いましょう、ごきげんよう♪」





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