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拾ノ噺 ナナさん

前回までのお話


甘噛祈理(あまがみ・いのり)が主人公早乙女姫也の学校に転向してきて、彼のクラスは不登校の少年『不出永蔵(ふでえいぞう)』により盗撮されている、という事実に気づく。

そして、甘噛は自らの仮物『灰ノ瞳』の力で、不出が仮物の能力で盗撮ロボットを作っている、という事実を知るのであった。


夕焼け空の下、僕達は街のはずれにある一軒家の前にいた。


放課後、甘噛はどこからか調達したありったけの武器とともに、僕に協力を要請した。

小型の昆虫ロボットによりクラスを盗撮していた「不出永蔵」に話をつけるためである。


彼が住んでいる、赤い屋根の一軒家は、まるでのび太君の家のような間取りで、敷地に入ったすぐ先に玄関があり、正面から見ると二階の窓が一つだけあった。

気になるのは、カーテンで閉ざされたその窓だった。

奴は、『不出永蔵』はきっとその窓の中の部屋にいる。

そして自分を傷つけるものを、カーテンと扉で締め出したのだ―――

因みに、なぜ、僕たちが彼の家を知っているのかというと、甘噛が個人情報を恐らく非合法な手段で調べたからである。

まあ相手は仮物を使う盗撮魔なのだから、問題はない、ハズ。


「大分片付けたな…‥つうか何体めだよ」


そして、僕と甘噛の周囲には、無数のロボットの残骸が転がっていた。

まるで西洋の人形をそのまま人間サイズに大きくしたような、ロボットであった。

全てのロボットが同じデザイン。

金髪で外人さんみたいな顔の造形。

衣類は最低限のものしか着てないようで、個体がフードつきのパーカーとズボンを履いていた。

こいつらは、僕と甘噛が家の周辺にたどり着いた瞬間、行く手を阻むかのように一斉に襲い掛かってきたのだ。

武器は所持しておらず、手刀と足のみを武器としているらしく、人海戦術で僕たちに接近しようとしていた。

しかし、僕たちは接近される前に手持ちのマシンガンなどの火器(甘噛が調達してきた)で、このデク人形達を打ち抜いていた。

しかし、耐久性がそれなりにあるこいつらはマシンガンの弾丸が貫通しても行進を止めず、ゾンビのように這ってでも僕と甘噛に接近しようとしていた。

だから一体につき、十発以上弾丸を撃ち込まないと倒せないという、かなり難儀な敵であった。

なんとなく、少し服装が地味なバービー人形相手にバイオハザードをやった気分だ…‥


「合計32体、こっちは装甲服(アクティブアーマー)の耐久性が限界。所持してた火器も残弾はゼロ。もうちょっと、武器持ってくればよかったかな?」


そして、甘噛は全身(顔面さえも)覆い尽くしている分厚い装甲服を脱いで、黒いブレザーの女性の制服の姿に戻った。

この甘噛が使っていた装甲服というのがまた物騒な代物で、バービー人形に攻撃される度に黒いウロコのような装甲が爆発して、中身の甘噛を守っていた。

見た目は、ただの黒くて丸みを帯びた宇宙服といった感じで、デザイン性のカケラもないが。

だがそんなものでも、彼女は着れるだけマシである。

僕は特に学ランのままであった!

ふざけんな甘噛!

「っていうか…‥まあ、いいか」

言いかけて、僕は止めておいた。

そう、こんなに過剰なまでに武器を持ってこなくても、不出の護衛用であろうこのロボット達を倒す方法は、他に一つだけあった。

だがそれは、使ってはいけない方法であった。

そして今僕が言おうとした愚痴は、僕が言ってはいけない愚痴であった。

例えそれを聞くのが甘噛だけだとしても、それだけは、言ってはいけない言葉だった。


「あ、今、『昴ちゃんがいれば楽なのに』って言おうとしたでしょ?」


さすがにこいつは察しがよかった。

僕の甘えなんか、既に、お見通しである。

困ったもんだ。

僕は確かに、北王子昴が戦ってくれれば、こんな銃火器を振り回さずとも、マネキンバービー軍団など昨日のレインボーサムライにように、一瞬にして倒せるのだ。

人間じゃないから破壊してもいい分、彼女も力加減が楽であろう。

「まあ、さすがにちょっとな…‥」

僕はそっぽを向いて答える。

もう会話を打ち切って、早く眼前の家に飛び込みたかった。

「うーん、昨日彼女が戦ってないのなら、今日戦ってもよかったんだけどね」

甘噛は首を傾げながら眉を寄せ、難儀そうに答える。

「連戦したら、更に強くなっちゃうもんな、あいつ」

「そう、『赤ノ髪』は彼女の体を侵食し、際限なく強くなっていくから。どんどん、『普通の人間』から離れていく――」

そう、彼女の力におんぶに抱っこ状態ならば、こんなハリネズミのように武装しなくても、安全にこの家の中に突入出来るのだ。

だが、それは出来ない。

彼女が僕を守るように、僕は彼女を守らなければいけない。

彼女が『赤ノ髪』と同化してしまった責任の一旦は、僕にあるのだから。

だから、早乙女昴は今、伊丹と一緒に街中で遊んでいる。

まあそれは、もし不出が刺客を放った時の、伊丹の護衛も兼ねてあるのだが。

そういう采配も全て、この甘噛が考えているのだから、味方ながら恐ろしい。

甘噛は自分の仮物『灰ノ瞳』で仮物の弱点を知り、敵の裏をかき、最も有効な手段を考え、広い人脈で武器や情報を仕入れ、そして自らも皆を守るために戦う。

だから、昴が最強だとすれば、甘噛は『最凶』なのだ。

全ての仮物の『天敵』と言っても過言ではないであろう。

「仮物は若い内に起こる現象だけど、仮物の中でも『赤ノ髪』は強力だから、あまりに強すぎる力は、後遺症が残らないか怖いよね…‥」

困惑する甘噛の肩に手を添え、僕は眼前の家を見上げた。

「で、この家の中に、しっかり不出がいるんだろうな?つうか、この家の一室でよく何体もロボット作れるな」


「不可能も可能になるのが仮物の力だからね。名付け辛いけど、『不浄なる閉ざされた研究所(アンホーリーラボ)』とでも呼ぼうかな、つまり彼はあのカーテンの向こうの部屋の中で、外界と接することもなく、昼間の機械や、さっきみたいなのを作れるんだよ」


「凄い能力だな」

僕は素直に関心した。

手に変形したり。顔が黒い包帯だれけになったり、家の中が秘密基地になったり、ようわからんが、凄い能力が多いなあ、と。

「そう?ボクは嫌だな…‥引きこもってたら、姫也クンに会いたくなって、ボクおかしくなっちゃうかも」

先ほどまでの戦闘で疲れている僕は、頬を染めて俯きながら照れる甘噛に突っ込みを入れることすら放棄した。

「そりゃどうも…‥というか、どうする?」

気だるそうに砂埃まみれの制服のズボンの埃を叩いてつぶやいた、その瞬間であった


『どうするもこうするも、ご主人様は留守です』


綺麗な女の人の声が、背後から聞こえた。

「ひっ?!」

と、同時に背後からの殺気を感じた僕は、咄嗟にしゃがむ。

と、同時に、僕の頭の上を小さなナイフが横一線に通過する。

そして、次の瞬間、僕は背後の不出の家と反対側にある壁に寄って後退した。

普通に振り向いたら、確実に頸動脈を切られていたであろう。

「うわっ!?危なっ!?」

甘噛は驚きの声をあげながらも一瞬の内に、不出の家から数メートル離れた電柱の後ろに隠れた。

早い、早過ぎる!

逃げ足だけは!

「なっ!?なんなんだお前は!!」

いきなり背後からナイフで切り付けるなんて、正気の沙汰ではない!

何だ!?

何なんだ!?

本当に死に掛けたぞ!今!


しかも、僕の目の前にいるこいつは、その正気の沙汰ではない好意を、あまりに機械的にそれをやってのけたのだ――


『今のを避けるなんて、やりますね。映像データの通り…‥やはり排除しないと』


僕は、そいつの格好に驚いた。

僕を果物ナイフで切り付けたのは、僕達と同年代の少女だった。

ポニーテールで後ろがまとめられた、艶やかな紫色の腰まで伸びた髪。

金色の少しキツそうなツリ目に、高い鼻、眉は細く、外人さんのようである、しかも無表情。

そして、ロングドレス風の黒いシンプルなメイド服、黒いハイソックス。

細いが、それでも力強さすら感じさせる体つき。

胸は伊丹と昴の中間、Bの上、くらいであろうか。

というか、そんなところ注視してる場合じゃないだろう自分!

問答無用の警告なしで殺されかけたんだぞ!

ふざけろ!

「質問に答えやがれ!」

さすがに感情に任せて僕は叫んだ。

夕焼けに染まるアスファルトの上に立つその女は、甘噛を一瞥した後に、僕に視線を移すと、眉間に皺そ少しだけ寄せ、無表情のまま口を開いた。


『私は戦闘用人型機械七三式。ご主人様からは、ナナさん、と呼ばれています』


不出の家を背にした少女は名乗りと共に、ナイフの刃先を僕たちに向けてきた。

あくまで、僕たちを倒すつもりだ。

というか、こいつもロボットなのか。

あまりに人間に近い姿をしていたえので、普通に人間だと勘違いしていた。

七三式(ななさんしき)だからってナナさんかよ、なんつーネーミングセンスだ。

「出会い頭に刃物振り回すセクサロイドか…‥なんかボク、帰りたくなってきちゃったな」

甘噛は完全に引いていたようであった。

それもそうだ、不出は盗撮魔だっただけでなく、こんな趣味全開なロボットまで作る引きこもりなのだから。

関わりたくないのも、分かる…‥だが

「お前が言いだしっぺだろうが!」

というか女の子ならセクサロイドとか平気で口走るな!

僕は既に数メートル離れた電柱の後ろで完全に逃げる体勢の甘噛に叫ぶ。

「えーだって、学校が盗撮されてるんだもん、嫌だよぅ。しかもこんな趣味全壊のロボット作っちゃう人に」

甘噛は眉を寄せて、困惑した表情で僕を見つめた。

完全に、僕に任せて、自分はナイトに守られるお姫様のポジションのつもりだ、こいつは。

つうか、こういうメンタル的な部分は所は本当に女の子だよなあ。

『ご主人様の悪口を言うな』

ナナさんとやらは、甘噛を睨み付け、明らかに怒りの表情になった。

それはさっきまでのバービー人形にはない機構であったため、僕は少し驚いた。

未だに僕たちの周囲に転がるゾンビバービ-は、最後の最後まで、完全に無表情だったからだ。

「あ、ゴメン、ボクはとりあえず消えるね!!」

危険を悟った甘噛はそう言うと、どこからか取り出したローブをかぶり、まるでカメレオンのように、周囲の背景と同化して消えていった―

「あっ消えやがった!!」

『ま、まさか光迷彩(ひかりめいさい)?なぜ一般人がそんな兵器を?!ご主人様ならいざ知らず、あんな少年が!!』

光迷彩とは、今アメリカ軍が開発を進めているという噂の兵器で、周囲の風景と完全に同化できるSF紛いのアイテムである。

僕もアニメでしか見たことがなかった。

「あいつの知人が作ったんだとよ!!」

全く、ホントによくわからない人間関係を築いているよ甘噛は。

まあ、僕もその人間関係の一人なんだが。

『ところで、あなたも、逃げ出すのですか?あの少年のように…‥』

甘噛を目で追うことを諦めたナナさんは、僕を睨み付けて、再びナイフを突きつけてきた。

この言葉は多分、挑発のつもりなのだろう。

やれやれ、本当に血の気の多い機械だ、全く。

面倒くさい。

本当は今日、放課後にTATUYAに寄ってDVDを借りようとしたのに(火曜はレンタル半額なので、お得なのだ)、それが、バイオハザードもどきと、メイド服のロボットとの戦いで一日が終わろうとしている。

まあ、そんなことを言っていたら、昨日の放課後も本屋で漫画を立ち読みしようとしていたのに、授業中の段階から、変態侍に拉致されてしまい予定がパアになってしまったのだが。

だが、まあ仕方ない。

やるしかないのだ、僕は。

もう甘噛が調達してくれた火器はさっきまでの銃撃戦で使い果たしてしまい、健康な体しか武器が残っていないが。

だが、僕はやらねばならないのだ。

甘噛や昴や伊丹などのあられもない姿が、不出に盗撮されてしまっていたのだ、そんなバカな話はない。

僕は、不出の奴を思い切りぶん殴らなければならない。

そして、彼に謝罪させなければならない。

そのためには、立ちはだかるものを排除しなければならない。

それが例え、刃物で武装したロボットであったとしても。

「ったく、そうしたいのは山々なんだけどさ…‥守んなきゃいけないからな、僕は」

そう、守らなきゃいけないものが、僕にはある。

だから、僕は戦う。

だから、僕は戦える。

仮物とか、そういった力の一切ない、ただの人間である僕が。


「見せてやるよロボット、人間の戦いってやつをさ」


僕は啖呵を切り、立ちはだかる敵に向かって一気に駆け出した。




つづく



第三回 ウラけもの


「なはは、始まってしまいましたね、第三回ウラけもの、こんおはばんちは♪みんなの恋人、甘噛祈理と」


「やあみんな、本作のメインヒロイン、北王子昴だ」


「おっ、昴ちゃん、強調しますねそこ」


「ああ、私がメインヒロイン、と、作者は言っていたのだ。確かに、そう聞いたのだ」


「あ、落ち込んだ」


「……‥ふふ、甘噛よ、私だってな、落ち込むことくらいは、あるんだぞ?」


「確かに、今回、昴ちゃん出番ないんだよね…‥」


「まっ、気づいてはいたんだがな…‥第一話のタイトルが『北王子昴』でない時点で。まあ、落ち込んでいても仕方ない、私のターンがきっと来ると信じよう」



「あ、そうそう、今回は初っ端から、ロボット軍団とボクと姫也クンの戦いがはしょられていたね」


「バービー人形とマネキンを合わせたようなロボットがゾンビのように群れを成して襲ってくるのか、確かにそんなシーンは端折って正解だったかもな、因みに私は…‥あまり戦いたくないな、そんな人形とは」


「怖かったよぉーあれは!撃っても撃っても倒せないんだもん!」


「甘噛も、どこからそんな武器を揃えてくるのだ?公安九課か?」


「ん?ああ、全部ハンドメイドらしいよ、ボクの知人が作ってる」


「よくわからない人間関係だな…‥」


「あ、それより、昴ちゃん、姫也くんにバレンタインチョコあげた?」


「ああ、あげたさ…‥だが、そんなおいしい描写、本編中にやってほしかった」


「ねー!!なんでもこの作者、『バレンタインダイ』ってタイトルでリアけものの番外編やろうとしたんだってよー!」


「ど、どんな作品なのだ…‥」


「んーとね、ボクがホレ薬入りのチョコを姫也クンに食べさせて、薬の効果で攻め攻め状態になった姫也クンにボクがひん剥かれちゃう、って話。オチはその光景を目撃した昴ちゃんが姫也クンをぶん殴るという…‥まあ、執筆が2月14日に間に合わなくて、ボツになっちゃったけど、ね」



「 ま た 甘 噛 の タ ー ン か  」



「あ…‥あはは、ボツになって良かったのかもね、あはは」


「甘噛…‥だが私は、諦めないからな」


「ふふっ、いいよ昴ちゃん。ボクも負けないから、君にも、妹ちゃんにも」


「ん?そういえば、姫也の妹がまだ出てきていないな、早乙女姫也をめぐる四角関係の中の一人だというのに」


「妹ちゃんはキャラが濃いからねぇ、拾参ノ噺からが妹チャンの回って聞いたけど」


「 私 の タ ー ン は い つ だ 」


「…‥多分、拾六ノ噺から?でもね!!昴ちゃん!この作者は読者の声を凄く参考にする人だから、アンケート次第で、登場回が増えるかもよ?」


「ふふっ、さ、帰って、ひたぎクラブのBDでも見るか…‥」


「ああっ、ついに昴ちゃんが現実逃避を…‥みんな!!今回はこれまでです!!ちょっと待ってよ昴ちゃーん!!」


続く





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