01
豪奢な空間に流れる優雅な音楽
賑やかな人々の声
新調したドレスがとても可愛くて嬉しいはずなのに気分が上がらないのは最近流れている噂のせいだ。
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私、スザンヌ・ドルーはちょっぴり抜けている所のある父としっかり者の母の間に生まれた長女。
伯爵家を賜っている我が家だが、時代の荒波に揉まれ中々質素な生活を送っている。
私が産まれた時に、両親は経済状況を踏まえて領地の家臣か有力者辺りに嫁ぐことになるだろうと思いずっと私を領地で育てた。
憐れに思った両親に少々緩く育てられ、少しお転婆な気性もあり貴族とは思えないほど平民に近い暮らしを送ってきた。
しかし、ここ数年の豊作による経済状況の良好と私の強い希望、そして兄嫁アデラの優しい心遣いによって社交界デビュー出来ることになった。
代わり映えしない領地を出て、良い人と出会えれば恋愛結婚も夢じゃないと打算もあり意気揚々と王都へ向かった。
まあ良かったのはここまでで今はさんざんな結果になったけど。
王城で行われるデビュタント達が多く参加する舞踏会が近くに迫っていたので急いでタウンハウスへ移動して念入りに準備をした。
そうして迎えた初めての舞踏会はとても美しかった。
兄ドミニクにエスコートして貰い無事にダンスを終えたし、夢にまで見た王城のパーティで出されるご馳走は驚くほど美味しかった。
実際マナーは守ってたけど夢中で食べていた。
多分それが目を引いてしまったのだと思う。
どこかの侯爵の令息が私の事が気になり、近くにいた人に名前を聞いたらしい。
その令息は大変人気のある方らしく近くにいた令嬢たちは私に敵意を持った。
そして何処から出たのか、私が平民同然の生活をしていて貴族の生活ができるなら誰とでも付き合う、なんて云う噂が流れた。
そんなこんなで友人ができて王都のお店を一緒に散策したり、素敵な男性に誘われていい感じに……なんてことはなかった。
まあ、悪い噂が流れてる令嬢とわざわざ仲良くはしないでしょう。
それでも諦めて領地へ帰らないのは長年の憧れから。
社交界に出てまだ3週間しか経ってないのに諦めるなんてはやすぎる。
二度とない機会を逃す訳には!!
それに、名前を聞いただけで私に悪い噂が流れるほど人気のあるその令息をひと目見ないと!
そう意気込んで人々の輪の中に踏み込んでいった。
そもそも名前を聞かれただけで反感を買うってどれだけ人気なのよ。
お目当てのその人を探すためにホールを彷徨う。
きっと人混みがあればそこにいるはず。
確か名前はセザール・スチュアート、侯爵家の嫡男だったはずだ。そしてとてつもなくイケメンなんだとか。
遠巻きにされてる私にですら話が入ってくる、というか聞こえてしまうほどみんな騒いでる。
何となくみんなが言ってた特徴は覚えてるけど。
そうやってホールを歩いていると
「君、スザンヌちゃんでしょ」
突然、肩にポンっと手を置かれ声をかけられた。
振り向くと同じくらいの年の令息だ。
うわぁ。初対面なのにちゃん付けだし、ニヤニヤしていて明らかになにか企んでそう。
「こんばんは、そのスザンヌがドール家のスザンヌでしたら私で間違いないかと」
「噂のスザンヌちゃんで間違いないんだ?」
やっぱりその事か。直接その話してくる人ほとんど居ないのに。
それに私は略式だけど礼をしたのに礼を返さないと?
「その話でしたら私からお話することはないので失礼します」
軽く会釈をしてなるべく早く歩いて逃げる。
今の一瞬だけでも絶対に関わりたくないタイプだと分かった。
スタスタ……
あーー!イライラする。
無視無視。
スタスタ……
「ついてこないでもらえません?」
「まあそう言わずにさ、 遊ぶ相手探してるんでしょ?
俺はどう?」
そんな噂にまでなってるの!?
「事実無根の噂なのでその気はないです。すみません、失礼します」
「でもほら、火のないところに煙は立たないでしょ?そんな素振りあったんじゃない?」
もう無理、この人と関わりたくない。
流石にこう言えばその気が無いって分かってくれるでしょう。
「私恋人がいるので!!」
「そんな話聞いたことないけどなぁ。ホントにいるの?恋人いないなら」
がしっ
「この人が私の彼氏です!!」
「は?」
「……え?」
ごめんなさい!通りすがりの方!!
基本夜更かししながら書いてるので誤字の可能性高めです。