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『しゃーないだろ、連帯責任だぜ?セント!な第三、四限 自由時間』

クロノス教授の保有する『世界』、もとい『箱庭』。



それらの一つである『大河』の河原にて、

少年2人が口論していた。


「どうしてくれるんだ!?


本当に60倍なら、僕らは殆ど5日間ここに閉じ込められる事になるよ!!?


それとも何か?この世界、いやセレスの『箱庭』という表現を借りることにして、

この『箱庭』には出口でもあるのか!?」


「出口が出るとしたら、クロノスの奴が向こうからゲートを開く時だな!


出ようと思えば出れない事も無いらしいがな!


実際俺は実例を見た事がある!!


とは言え、絶対に俺らにはあてはまらねぇ!


だから無理だ!諦めろ!」


「誰のせいでこうなったと思っているんだ!


ワンチャン何とかなるかもしれないだろ!?


その実例とやらを言えよ!!」


「パラドクスだよ!


アイツは昔、『門番』系能力者によって異世界に閉じ込められた際、いつの間にか『幻想世界』に戻っていたんだよ!」


「絶対に無理じゃ無いか!!


というか、パラドクス校長、万能すぎるだろう!


『天使』ってのは全員、あんな万能なのか!?」



「『万能』って言えるくらいなのはパラドクスくらいだ!


何かひとつの分野にだけ傑出してるのが普通だ!」


「詳しいな!というか、そんな事より、僕が潰れなかったのはどうしてだ?


時間の流れが遅いなら、僕は『僅かに先に入った』自分の半身にぶつかって、潰れるのが道理なんじゃ無いの?」


やや落ち着いた様子で、セントは尋ねる。


「ああ、良いところに目を付けたなぁ。


なんで説明すりゃあ良いんだろうなぁ。


ちょっと不気味な話をするが、


『曽祖父の斧』って知っているか?」


「いや知らないな。どんな斧なんだ?」


「重要なのは斧の種類じゃ無くてな、


『木こりの曽祖父が使っていた斧が、祖父に受け継がれた。

祖父が斧を受け継いで、30年が経ち、斧の木の柄が腐ってしまった。

祖父は柄を新調し、その斧を父が受け継いだ。

父が斧を受け継いで、30年が経ち、今度は斧の刃が使い物にならなくなってしまった。

父は斧の刃を新調し、子供に向かって、

「これはお前の曽祖父が使っていた斧だ。」

と言った。』


まぁ、こんな寓話さ。」


「成る程?で?」


「これを聞いてどう思ったよ?」


「同じじゃ無いでしょ、どっからどう考えたって。」


「そうか、残念だよ。


これと同じ事が俺らにも当てはまる。


ゲートを通過するにあたって、俺らはゲートの前で『個々の原子と電子』にまでバラバラになって、ゲートの向こうでくっつき直して、『原子』と『電子』は全て元通り、って訳。」


「なっ!?


そんな風には見えなかったよ!?


『幻想世界』に来る時だって、、、」


「実際はバラバラになっているんだよ。


安心しろ、実際体を構成している原子は、


『完全に』元あった場所に戻る。


お前の眼を作っていた『炭素(カーボン)』はお前の眼に戻る。


脳内を動いていた神経伝達物質も電気信号も全く同じ位置に戻る。


『違和感なく』な。


だから、もしゲートを通っている瞬間のお前らに当たり判定は無いんだぜ?


今度試してみろよ。」


「だ、だとしても!僕らは歩いて異世界に入れないはずじゃ無いか!」


僕は思わず声を荒げる。だっておかしいじゃ無いか!


「まぁ、その疑問はもっともだわな。


その内能力を極めると、『幻想化(ファントマライザー)』っつう技能を身につけられる。

相当キツイがな。


まあ、詳しく話しても、まだ理解できねぇと思うから端折るけど、


『この世界の分子を構成している原子は、結合が切れる前の状態を記憶している』


っていうのが今の主流な学説だな。

ぶっ飛んでやがるが。マジな話だ。


現に、『爆弾を爆発させた後、爆弾がもたらしたのと同量のエネルギーを加える事で、『元の爆弾』に戻す、なんて事をしてのけた奴もいる。」


「・・・まず2つ質問させて、


『誰』だ?・・・大体予想がつくけどさ。


それと、どうして『特定の』原子が全く同じ部分に戻ったのがわかったの?


原子にマークはつけられないでしょ?」


「ひとつ目の質問に対しては、多分予想と外れる。


パラドクスじゃねぇ。アイツは・・・そっち系統の能力を使えねぇからな。


最初にこんな神の所業をモノにしたのは、『序列第2位天使』だ。


ふたつ目については、『同位体(アイソトープ)』を用いた実験で証明された。」


「『同位体』?あの『同じ原子だが、重さが異なる』って奴か?」


「ああ、そうだ。


まさに眼球について、

変化前と変化後で、一部分を構成している原子が、同位体のうちどの種類に属するか、

を検査したところ,『完全に一致した。』


一個や二個じゃない、数万の原子について同じ事が成り立った。


その後眼球以外についても成り立つ事が分かっている。


まぁ『同位体の並びは同じだが、それらは同じ重さの同位体同士でシャッフルされたものだ。』と言い張る事は無理じゃあねぇが、妥当性は低すぎるな。」


「・・・。



理解はできたよ。」


「わかってもらえたなら何よりだ。



さて、どうしたものかなぁ?


5日間、どう過ごす?」


「とりあえず、シャルル先生からもらった本でも読もうかな。時間はあるし。」


「だよな〜『わからねぇ(・・・・・)』よな、最初は。」


僕はムッとして、問いただした。


「あのさぁ、誰のせいでこうなったと思っているの?


それが親友を災難に巻き込んだやつの言うことか?」


「いや、それに関しては本当に悪かった。すまん。


ただな、考えてみろよ。


ただ5日間過ごす(・・・・・・・・)』だけで、俺がこんなに頭抱えると思うか?」


「・・・思わないな。何が言いたいの?」


親友が、この程度の事で頭を抱えるとは確かに思えない。

そんな風に考えている僕に向かって、


我が親友は端的に『二言』発した。




「『食料』、『寝床』。」





「・・・・・・あ。







・・・・・・どうするの?」


「頑張るしかない。」


にっこり微笑んで、そう言うアレスに、僕は


  河原の石を投げつけてやろうか?


と思いながら、


「役割分担1:9ね?もちろん僕が1で。」


「2:8でぇ、手を打ちませんかい親方?」


「ダメだよ。そもそも事の発端は君だろ?



頑張りたまえ。」


先程のアレスと同様、僕は微笑んでそう言った。


とほほ〜、と言っているアレスを尻目に、


今日の寝床を探そうとすると、不意にアレスが、


「しっかし、良かったな。『俺らだけで(・・・・・)』。」


僕は怪訝に思って、


「何が? 考えうる限り最悪の状態でしょ?今は。」


と言い返す。


「イヤイヤイヤイヤ、考えてもみろよ。


これで男女同じ世界に飛ばされたら地獄だぜ?


多分他の同級生どもは、1世界あたり、5人1組位で行動するハズだ。


ってこたぁ、必然的に女子と同じ班になる奴も出てくるだろう。」


「成る程?つまり僕らはむさ苦しい男2人という、さらなるバッドステータスを手に入れたわけか。


他の奴らはキャッキャウフフしてるのに。




・・・羨ましいな。」


「心の声が漏れてんぞ。


良いか、女子っていうのは綺麗好きな生き物なんだ。わかるか?」


「成る程、『食料』、『寝床』以外に『風呂』が入るのか。」


「『洗濯』もだ。


とはいえ、流石に洗濯は自分でするだろうが、女子と同じ班になったやつは今頃川のそばにバリケード貼って、石積んで、風呂を作らされているだろうよ。」


「ウリエラと同班だったら地獄だろうな。」


「だろうな。」


アレスと僕が、そう言って笑うと、空から


「さらに2倍にするかのぉー?」


巨人の発した様な、クロノスの声が空から降ってきた。


僕とアレスは心が一つになるのを感じながら、シンクロして言った。


「「ごめんなさい!ごめんなさい!勘弁してください!

麗しいウリエラ様を悪く言うつもりなど、毛頭ありません!ウリエラさま最高っ!

ウリエラ様と同じ班になった同級生羨まし過ぎっ!」」


と必死になってそう言った。

無論、羨ましくなんかない。


ウリエラと同班になった同級生たちは『ジョーカー(ババ)』を引いたのだ。


「フォーフォーフォー、我が愛する孫のウリエラちゃんの班は今頃『海の砂浜』でバーベキューとビーチバレー中じゃあぁぁ!」


勝ち誇った様にクロノスは言う。


「「羨ましすぎっ!!」」


今度は心の底から羨ましかった。


そうだった。


ジョーカー(お爺ちゃんの溺愛)』はゲームによっては最強のカードになるのだ。


と考えていると、隣のアレスが、


「スペ3の意地見せてやろうぜ。」

とボソッといってきた。


  君、僕の心読んでるの?


と思いながら、「ああ。」と返した。


するとクロノスが、


「そうそう、アレスにセント君。


女子(・・)2人がお主らの後を追って、その世界に向かったぞよ。


フォフォフォ。」


最後にとんでもない爆弾を残してクロノスの声は消えた。


ーーーーーーーーーーーーーー


一方、『大河』上流にて。


「ここが『大河』ですの?


セント達は何処に居るのかしら?」


落ち着いた様子でアイシアが言う。


「ん、多分、上流の、方。」


セレスが途切れ途切れ言う。


「どうしてそう考えたんですの?」


率直な疑問を述べると、


「ん、まず、さっきの、クロノス先生の、発言。」


ーーーーーーーーーーー

時が少しばかり戻り、『幻想世界』にて5分前。


「クロノス先生、私達もセント達と同じ世界に行く事はできませんの?」


「うん?アイシアちゃんじゃったかの?


どうしてじゃ? あの世界はアレスへの罰を兼ねているから、大変じゃし、時間も長いぞよ?。」


「ん、友人として、助け合うのは、普通。」


「そうかい、そうかい。


本人の希望ならば問題もないじゃろうし、よかろう。


少し待っていてくれの。」


そう言うとクロノス先生はゲートを開いて行ってしまった。


そして3秒後にゲートから戻って来て、言った。


「ヤツらに君達が来ることを伝えておいたぞ。 


しばらく見ておったら、ミナモフナを獲り始めおった。


フォフォフォ。」


クロノス先生は豪快に笑って、そう言った。


ーーーーーーーーーー


「ん、ミナモフナの、生息地域は『水の澄んだ川の上流』に、かぎられる。


だから、きっと上流。」

 

セレスの生物学の知識の深さと記憶力の良さに感嘆しながら、セント達を待たせるといけない、と思い、


「急ぎましょう!きっとセント達は私たちを待ち侘びていますわ!」


「ん、急ごう。」





そう言って、少女達が出発するのと、


アレスがミナモフナを捕まえ損ない、セントがため息をつくのは同時だった。

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