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『不安定なのは足場?それともーー』

私が七歳の時であった。好奇心旺盛だった当時の私は、庭園の片隅に蟻の巣を見つけたのだった。見れば見るほど異質な形の蟻が、当時の私の小指の先さえ入らないような小さな穴から次々と出入りしていく様を見ていると、何とも気分が悪くなるのだった。

私の気分を害する物が私の城の庭園に存在して良い理由など存在しない。故に、私はそれらを駆除することを決めた。臣下達にその辺り一体の空間の酸素を無くすように命じようと考えながら、蟻の出入りする小さな小さな穴を見つめていた時、ふと、ある疑問が浮かんだ。


『この穴の先には、どのような世界が広がっているのだろうか?』と。


地上から見ることが出来るのはひとつの穴だけだが、考えてみれば私は蟻の巣の全貌を見た事が無かった。


私は臣下達に、蟻の巣に融かしたガラスをゆっくりと流し込むように命令した。

十分な時間が経ったのちに、臣下に地面を丁寧に掘り起こさせた時、私が感じた恐怖を諸君らは理解してくれるだろうか。残念ながら、蟻達は焼け焦げてしまい、ガラスの表面に汚れを生むことになってしまったが、そんなことはどうでも良かった。

幾重にも重なる層状に、それでいてさながら大地に聳え立つ大樹を逆さまにしたかのような樹状に、『ガラスの迷宮』が生み出されていた。

今まで、私が本を読んでいた庭園の下で!花を愛でていた庭園の下で!蟻達はこれ程の複雑で巨大な迷宮を建設していたのだ。

なんと(おぞ)ましいことではないか!

その晩、私は悪夢を見た。

夢の中で私は矮小な身体で蟻の巣に飛び込んだのだ。

自分よりもはるかに巨大な蟻達が闊歩する地下の迷宮に飛び込んでしまったのだ。

私は必死に逃げた。

蟻がガチガチと歯を鳴らし6本の足で追いかけて来る。

上へ下へ右へ左へ逃げ続け、結局捕まり、噛み殺されるのだ。

そして、また穴に飛び込むことになるのだ。

何故飛び込まなければならなかったのか?残念ながら、夢の出来事だから理由は思い出せない。だが、『飛び込まなければならなかったのだ』少なくともあの夢の中では。そんな強迫観念に追われながら、目覚めるまで抗い続けたのだ。


16歳になってまでその悪夢と再会することになるとは考えもしなかった。

自分が小さくなってしまったかのように巨大な生物が狭い洞窟を闊歩する暗闇の世界。

その世界では、『人』は主役ではなかった。


無限に続くかに思える石壁の迷宮。


何も知らない人々が夢から覚めた時にこの世界に閉じ込められていたならば、きっと彼らはこの場所のことを『洞窟』だと思うのだろう。


そして彼らはきっと妖艶に輝くコケの灯りを頼りに、陽の光を求めて出口を探すのだろう。





ーーーこの世界にそんな物が存在しない事など、知り得ないのだから。



聖神暦1012年  『モルトン異世界記』  ジェファス=ラ=モルトン

全国年間平均行方不明者数 3,000人以上。


『地上』に辿り着いたものは、未だかつて存在しない。


この世界は6番目に発見されたことから、かつては『第6世界(シックス・コロニア)』と呼ばれる事もあった。

だが、今では『移住世界(コロニア)』とは呼ばれることはない。


ひとえに、『人』が支配できない世界であるからだ。


『色彩』は『灰白色』


光るコケの繁茂した石壁が何処までも何処までも何処までも続くかに思える、終わりなきその迷宮の名は、、、『石壁の迷宮世界(ストーン・ダンジョン)




『汝、出口を信じる事勿れ』

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


『隠し通路』から寮に帰ってきた後、そのまま僕らは大浴場に向かったのだった。

大浴場は生徒用とは思えないほど広く、もはやプールと同じくらい巨大な湯船や真っ白な石材で作られた壁はレリーフで装飾されていた。教会では風呂掃除をたまに手伝っていたセントからしてみれば、カビ対策が面倒では無いのだろうか?というとても現実的な疑問が心に浮かぶのを抑えられないが、カビによる汚れなどは何処にも見えず、極めて清潔な浴場だった。


残念なことに、、、極めて残念なことにッ!!!!

アイシアやウリエラ達は既に入浴を済ませてしまっていたため、なんら特別な出来事など起こるはずもなく、入浴が終わった。


そして、自室に戻り最終的な装備の点検をした上で消灯時刻を迎え、強制的に部屋の明かりが消えたのだった。セントとアレスは、アレスの能力によって生み出された灯りによって視界を確保しながら夜更かしして、しばらくして寮の皆が寝静まるのを待ってからコッソリと部屋から抜け出し、再びボイラー室へ向かいロッカーの奥の隠し扉を通って先程同様アレスの灯りを頼りに『幹』、すなわち広大な下水道をしばらく歩いた後に、『枝』すなわち下水道から生徒達が勝手に掘り進めた隠し通路を経由して進んだ。


アレスの道案内に従ってかなり丁寧に舗装された『枝』を進んだ先には、ゴツゴツとした粗い石壁の行き止まりが待ち受けていた。


「今から隠し扉を開けるから、向こうの明るさで目が眩まないように注意しろよ?」


「了解」


アレスが金属製のカギを壁に押し当てると壁はガラガラと崩れ落ちる。

『扉が開く』というよりは、むしろ『壁が壊される』という表現の方がふさわしい轟音が響く。


「ほれ、早くこっちに来ないと閉じちまうぞ?」


「おっと!」


セントが潜り抜けてから2秒ほどして、先程までは石壁の一部で今や地面に転がる瓦礫のような丸石達が、まるで時間が遡るかの様に、ひとりでに浮かび上がり、先程と全く同じ粗暴な石壁を形作った。


「へぇ、隠し扉にもいろんな開き方があるんだねぇ」


「『幹』と『枝』の存在を知る側のコスモス生としては、是非とも後輩達に喜ばれるような『枝』を作ってやりたいモンだよなぁ」


「開拓した『枝』に記念として自分の名前とか彫りたくなっちゃうけど、そんなことしたら先生方にバレちゃうしね〜。匿名の先輩達に感謝するとしようか」


「そうだなぁ」


体感的には地上から200メートル以上深くにある地下通路、アレス曰くこれは匿名の先輩方ではなくコスモスの『公式』な通路なのだとか。

自分がつい先ほどまで授業を受けていた校舎や、買い物をした町の地下にこんな通路が存在しているなんて信じ難いが、事実なのだからどうしようもない。


かなり長い丸石の壁と石畳の通路をしばらく歩くと、遂に教室ほどの大きさの部屋に辿り着いた。


教室ほどの大きさの部屋は、隙間なく敷き詰められた石レンガによって作られていて、部屋の入り口に赤く塗られた金属製のレバーと謎の機械が置かれていることと、部屋の中央に奇妙なオブジェクトがある以外は何の変哲もない部屋だった。


アレスが懐から金色のカードを取り出し、入口の機械に入れ、カチャカチャと幾つものボタンを押すと、部屋の真ん中に置かれていたオブジェクトに変化が起こる。


今まではレンズを取り除いた持ち手の小さな虫眼鏡を全体的に巨大化させて地面に刺したような形状だった金属製のオブジェクトの、直径3メートルほどの巨大な金属製の輪っかの中に灰白色の膜が張られる。


「これがゲート?門番が居ないのに一体どういう原理で開いたの?」


「ここから少し離れた所にある部屋に住んでる門番の所にさっきの機械で連絡を送ってな、ほら、お菓子屋に行った時も店員さんが使ってただろ?『電話』ってやつだ。予め回線を繋いでおくことで手紙よりも素早く情報を伝達できる。『無線通信機(トーカー)』よりも遠くまで連絡を送れる分、予め回線を引いておかないといけないからどっちもどっちだな」


「へぇ、じゃあさっきの機械で『門を開けて』って言うお願いを送って、開けてもらったってこと?」


「そゆこと!まぁ、あの機械にはもう少し別の機能もあるんだけどな。」


「というと?」


「密入国及び密出国ならぬ、密入界及び密出界を避けるために、ゲートを潜る人数を入力するんだ。あのゲートはなかなかの優れものでな、入ったり出たりする人物の『魔臓』から出るその人固有の振動を記録することで、スパイが勝手にコスモスに侵入してきたり、コスモス生の動向を追うことが出来るってわけだ。

滅多な事では『救助活動』なんか行われねぇけど、もしもの時にはその情報が役に立つってわけだ。」


「それだと僕らのルール違反がバレるんじゃないの?」


「そこで使うのがこのカード!」


「そのキラキラしたやつ?」


「ああ!この機械を最初に作ったやつから譲り受けた代物でな、コスモスに100枚しかない。」


「結構な枚数あるじゃん」


「いやいや!当時の不良生徒、つまり今の先生方が持っているから、生徒が使えるのはごく僅かだ!」


「不良生徒が先生になって大丈夫なのかな?というか、それじゃあなんで君が持ってるの?」


「保護者のツテで手に入った」


「まったく。世界最強の保護者だよね、羨ましいよ」


「ちなみに、コスモス専属の『門番』達は当直室の中で、読書するなり運動するなり寝るなり自由に過ごしてよくて、『開門』の依頼があった時にだけ、『パイプ』を通して能力を発動するだけでいいんだぜ?」


「『パイプ』?専門用語だらけで頭がこんがらがりそうだよ!」


「まぁ、能力を遠距離で発動させるための道具だと持ってくれればいいよ。メッセージの代わりに能力を遠くに伝えるための『電話』みたいなものだな」


「へぇ、随分と楽そうだね」


「ちなみに給料は月収100万ゴル」

(✴︎)日本円換算100万円


「僕、将来は門番になるっ!!!!!!!!!!」


「なりたくてなれるもんじゃねぇし、、、、なりたくなくてもならなきゃならねぇ場合もあるし、、、やっぱり世界は悲惨だな」


「?どうしたの?急にしんみりとし始めて」


「いや、知り合いのことを思い出しただけだ。なんでもない。

つーか、『門番』は大変だぞ?前も言ったけど、『戦略兵器』の扱いを受けることになるし、『聖神教会(セイント)』から『ワールドゲート』の役職名を押し付けられてかなりの自由を制限されることになる。

あんまり無配慮にそんなこと言ってると、そのうち『門番』から嫌われるぞ?」


「うっ!アレスが正論言ってる!」


「俺をなんだと思ってんだ・・・」


「でも、確かにその通りだね。次から気をつけるよ。」


始まりの世界(ガイア)』と『幻想世界(アカデミィア)』を繋いでいた白亜のゲートとは違って、今回の『幻想世界(アカデミィア)』と『石壁の迷宮世界(ストーン・ダンジョン)』を結ぶゲートでは、向こう側の世界の景色をこちら側から見ることはできなかった。

世界を区切る円形のゲートの縁の中には、波打つ灰色の液体の様な物が張られている。

まるで波打つ水溜まりを縦に立てたかのような奇妙なゲートだ。今までのどのゲートとも違う、明らかに異質な雰囲気を纏っているゲートを前に、少し怖気付いてしまう。


アレスが一切の冗談さえ混じっていない真剣な口調で、

「いいか、最終確認だ。ヘルメットは付けたか?」


僕も出来るだけ真剣に聞こえるように答えようと思いながら

「装着済みさ。」


「手袋は?」

「装着済み。」

「即席ランプは持ったか?」

「右ポケットに。」

「迷ったら?」


「『声を出すな』『音を立てるな』『30分はその場に待機』『もしも危険が迫ったら、その場にサインを残してから去れ』」


「準備万端だな。くれぐれも、野生の生物と戦おうとなんかするんじゃねぇぞ。万が一にも勝ち目は無い。そして、あの世界に人間に対して有効的な生物は人間しか居ねぇ。つーかなんなら人間さえ牙を剥く時がある。


1人の時に食糧を無心されたとしても、リュックの中身を見せたりするなよ?遭難者の中には、お前が豊富な食糧を持ってることを知ったら殺してでも奪おうとするやつだっている。」


「了解。」


「じゃあ、先に俺が行って安全を確認してくるから、少しの間待ってろ。」


「了解。」


いつもの様にふざけるのでは無く、必要な情報のみを伝達し合う。





     『フォン』




アレスがゲートに飛び込むと、音が鳴るのと同時に、ゲートの『境界面』が波打つ。


「波打つところを見ていると液体みたいに見えるけど、縦になっているのに零れ落ちてこないって事は液体じゃないのかな。というか、そもそも実体があるのかさえ分からないね。興味深い」


5秒ほどして、ゲートからアレスが帰ってきた。


「どうだった?」


「今んとこは大丈夫そうだ。今回は運が良かったな」


「『今回は』?」


「ゲートを開閉する度に、繋がれる場所がランダムに変わるんだよ、

石壁の迷宮世界(ストーン・ダンジョン)』とか『極彩色の森林世界(カラード・フォレスト)』とかの一部の世界は。

だからこそ生徒がゲートを潜った後に勝手にゲートが閉じないように安定した魔素(マナ)供給や出入界管理システムを含めた大掛かりな設備を用意しているわけだ。


今は誰も向こうの世界に行ってないみたいだが、向こうに誰かが行っている時にあの赤いレバーを下げたら殺人同然だぜ?向こうの人からしてみれば、さっき自分が入ってきたゲートがいつの間にか無くなってるんだからな」


「うへぇ、考えただけでもゾッとするね。もう一回こっち側からゲートを開いても、さっきと同じ場所にゲートが開くとは限らない、というか、その確率はゼロに等しいわけか」


「まぁ、あのレバー自体、先生方じゃないと下げられないように工夫されてるらしいから俺らには関係ない話だな」


「ん?なら僕らが帰ってきたとして、ゲートは開きっぱなしな訳だよね?レバーを下げられないなら僕らはどうやってゲートを閉じればいいの?」


「普通に入口の機械に認証して貰えばいいだけだ。

あの機械には今俺とセントが入界する、っていう履歴が入ってるわけでもう一回俺らがあの機械に認証して貰えば勝手に閉じる。

一応個人名は残らないから、バレる心配はない」


「ふーん、でも、コスモスからしたらなんとしても個人名は記録に残しておいた方がいいんじゃないの?」


「さっきも言ったけど、この機械は俺らの魔臓から出る各人固有の周波数の波を記録、照合するから、そんなシステムを作るには少なくとも生徒全員分の周波数と個人名を記録しないといけないわけで、、、ってなると機械の大きさは教室6個分くらいになるか?」


「なるほど、それはムリだね。要するに、入った生徒と出てきた生徒が同じ人物であるかを確かめることは簡単に出来るけど、入った生徒の名前をいちいち区別するのは至難の業って事だね。・・・でも、それなら管理人さんを雇ってここに居て貰えばいいんじゃないの?」


「あ、それは盲点だったな。そう考えると確かになんで管理人を置いていないんだろうなぁ?今度パラドクスに聞いてみることにするよ」


「アレスがわからないことあるなんて珍しいね」


「流石の俺にもわからないことぐらいあるよ。


さて、雑談はここまでだ。最終確認をする。

いいか?今回は『鉱石採掘』目当てじゃねぇ。あくまで、『異世界』ってのがどういうモンかってのを体験する為の、、、いわば『命懸けのツアー』だ。絶対に俺から離れるんじゃねぇぞ?」


「了解」


「よし。んじゃ行くぞ」


  『フォン』


アレスは一足先に向こうへ向かう。


「『幻想世界(アカデミィア)』を別にすれば、初めての異世界か。


・・・楽しみだなぁ。」


抑えきれない好奇心を胸に、僕はゲートを潜った。



  『フォン』

ーーーーーーーーーーーーーーーーー


『異世界』と言われた時、どのような景色が頭に浮かぶだろうか?

きっと、普段過ごしている世界には存在しない景色を思い浮かべることだろう。

だからこそ、『始まりの世界(ガイア)』とよく似た『幻想世界(アカデミィア)』は例外とするとして、それ以外では人生初めてとなる『異世界』。

溢れんばかりのドキドキとワクワクは、少し裏切られることになるのだった。


あまり『異世界』にいるという実感が湧かない場所だった。

壁と床の境目など無く、何処までも続くように見える岩肌には、所々に様々な色に光るコケのような植物が繁茂(はんも)している。


「・・・ここが異世界?」


地面に降り立った僕は、若干不安定なゴツゴツした岩の足場でバランスを取ってから、目の前の親友にヒソヒソ声で質問した。


  『ピチョン』


水滴の(したた)る音が、先の見えない深淵の奥から響いてきた。


「ああ。ここが『石壁の迷宮世界(ストーン・ダンジョン)』。どうだ?初めての本格的な『異世界』は?」


「・・・・・・ぶっちゃけ、ただの洞窟じゃないの、コレ?」


実際に12年と少し生きてきて、『洞窟』というものに入った事は今まで一度たりとも無い。

だが、壁中に模様を描き、ぼんやりと光り輝くコケを除けば、小説で読んだ時に頭に思い描いた通りの景色で、良く言えば『親しみ深い』、悪く言えば『何ら意外なものではない』景色が、目の前を覆っていた。


「まぁ、やっぱ最初はそうだよなぁ」


予想通り。と言わんばかりの親友の返事に、少しムッとしながら、言ってしまえば少しばかり期待外れであると感じながら、言い返す。


「だってそうじゃん」


「まぁ、無駄話は後だ。まずは安全の確保だ。・・・どこか良さげな場所はねぇかな?


ちょっくら探してくるから、これに掴まっててくれ。」



   『ドシュッ!』


アレスの腕が微かに紅く光り、アレスの身長よりも少し短いくらいの長さの杖を目に見えない速さで地面に振り下ろし、杖が岩に一切のヒビを生み出すことも轟音を立てることもなく、突き刺さった。


「じゃ、探してくる。」


アレスは光の粒子になって、赤い光の軌跡を残しながら暗闇の先へ行ってしまった。


「え?この杖って、そうやって使うの?もっと、こう、魔法使いみたいな事やるんじゃなくて、刺すようなの、コレ?そんな槍みたいな使い方するもんなの?」


杖は下端は小指ほどの細さで、上端に向かうほど少しずつ太くなっていて、丁度持ち手に当たる部分の上に金属製の球体が取り付けられていて、その球体の上に先の丸まった円錐型の突起が付いていた。

幼い時にジオード領の教会で読んだ絵本の中で魔王を倒そうとする勇者一行の中に、似たような杖を持った魔法使いが居たはずだ。童話の中の魔法使いは杖から光を放ち、人々を困らせていた『龍種(ドラゴン)』と戦って改心させたのだった。


「懐かしいなぁ、なんて題名だったっけ?今度教会に帰れたら読み返そうかなぁ。まぁ、『コスモス』に入った以上、しばらく帰れないんだろうけどさ。


・・・全く、不自由だよねぇ。良いじゃん。実家に帰るくらい。

まぁ、虐待とかされてきた人からすれば、実家に帰らなくても良い、、、というか、実家から守って貰えるのか。うーん、多分そんな所かな?コレくらいしかルールの存在意義が思いつかない。



・・・題名が思い出せそうで思い出せ無いなぁ、、、不愉快だ。


えーーーーと、確か、、、『イデアの日記』だ!やっと思い出せた!!


無茶苦茶古そうな本だったけど、図書館とかに置いてあるかな?


・・・魔法、か。」


アレスの話では、アトラス大陸の東側の地方では、『魔法』が栄えているらしい。



「僕も練習すれば、その『魔法』とやらが使えるようになるのかな?なんとなく、セレスとアイシアは得意になる気がする。

・・・アレスは、、、うーん、、、アレスが魔法使いみたいな事をするイメージは湧かないなぁ。どっちかっていうと、大剣振り回していそうなイメージだし。 」

「・・・どんなイメージだよ・・・」

「うわっ!?」


独り言に対し、突然背中からアレスの声がして、驚いてバランスを崩しかける。

コケに覆われた床は微かに湿っているようで、少し身体のバランスを崩してしまうとたちまち滑ってしまいそうだ。なんとか倒れないようにバランスを取ることに成功すると、親友が少し呆れた様子で首を振っていた。


「おいおい!大丈夫か?」

「驚かせないでよっ!ホントにビックリした!」


どうやら、今の僅かな時間で探索を終え、戻ってきたらしい。


(なんか本人曰く制限は多いらしいけど、それを考慮してもアレスの能力便利すぎない?


30時間も休暇を取ってダラダラと休んでいる『何処かの誰かさん(サイエンティスト)』にも見習ってほしいものだよねぇ。)



『ーー労働基準法を知らないの?』


(何その法律?そんな法律あるの?)


『ーー・・・』


(黙らないでよ。・・・ちなみにあとどれくらい休むつもり?)


『ーーここは魔素(マナ)濃度が高いからもうすぐ復活できるよ』


(それは何より)


「・・・おいおい!そんな心構えじゃ、死んじまうぞ?」


本気で気遣う親友の言葉に、改めて異世界の危険性を知らされる。

どれだけ『ただの洞窟』の様に見えるこの場所も、れっきとした『異世界』であり、常に周囲を警戒する必要があるということをついつい忘れてしまう。


「ん?ああ!そうだね。常に周囲を警戒することにするよ。

ところで探してた『場所』とやらは見つかったの?」


「おう!結構近くに見つかったから、そこに行くぞ。」


アレスはそこそこ深く突き刺した杖を引っこ抜きながら答える。

かくして、僕らは新たなる世界の探索を始めたのだった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


かれこれ歩くこと30分ほど。

このように説明すると、かなり遠くへ向かって移動しているように感じるかもしれないが、実際に移動した距離は、体感的にはそれ程遠くはない。

では何故これ程までに時間がかかるのかと言えば、道が単調ではないからだ。

舗装された道路を歩くのとは異なり、出来る限り滑りやすいコケを踏まないようにしながら、時に岩肌をよじのぼり、時に下に飛び降りたり、悪戦苦闘した後に、ようやくアレスの言う『目的地』に辿り着いたのだがーーー、




ーーーそこはただの入り組んだ行き止まりだった。



比較的真っ直ぐな通路の最奥を右に曲がったところにある小さな小部屋ほどの行き止まり。

上から見た道をゴルフクラブに例えるならば、ゴルフボールを打つ場所の様な位置だ。



「本当にここが目的地なの?ただの行き止まりじゃ無いか。というか、よくあんな一瞬で探せたね。」


「まぁ、焦るなって!幸い、移動中には『起こらなかった』けど、この感じだとお楽しみはしばらく先になりそうだな。それまで、読書でもして時間を潰そうぜ!」


アレスは背中の荷物入れから古めかしい本を取り出し、ペラペラとめくり、読書に没頭し始めた。アレスは、あまり本を読まなそうなイメージだったが、よくよく考えてみればクロノス教授の世界で休んだ時にアイシアから逃げた先で、アレスは読書をしていた。あの一瞬で本を見つけて木の上に登り、読書しているフリをしていたのなら、あの世界にも本棚とかがあって、アレスはその場所を知っていたのだろう。もしかしたらアレスは読書が好きなのかもしれない。


「え〜。そのために本持ってきたの?・・・別に読書は好きだから良いんだけどさ。」


僕も荷物入れからシャルル先生の冊子を取り出し、『石壁の迷宮世界(ストーン・ダンジョン)』のページを開こうとするが、文字がぼんやりとして読めない。洞窟の壁や床に広がっているコケは、蛍色に輝いていて、足元を確認するには不自由しない程度の光は出しているが、読書をするとなると話は別だ。正直、本を開いてみても暗すぎて文字を読むのが難しい。


「ねぇ、アレス。読書に没頭している所邪魔して悪いんだけど、明かりをつけてくれない?僕には暗すぎて、本が読めないんだけど。」


「ん?ああ!そっかそっか!悪りぃな、照らし忘れてた!」


アレスの周りに、拳ほどの大きさの赤い光の玉がフワフワと浮かび、周囲を赤色に照らす。


「これで大丈夫か?」


「ありがと。ようやく読めそう。」


「・・・ってオイオイ。それシャルル先生の冊子じゃねぇか。『石壁の迷宮世界(ストーン・ダンジョン)』のページは見ないでくれよ?感動が薄れちまう。」


「え〜?ネタバレされちゃだめなの?じゃあ、アレスの本見せてよ。」


「見ても良いけどよぉ、分かるのか?これ、結構高尚な本だぜ?」


「そんなこと言っちゃって!どうせエーーーーー、これ何の本?」


「工学の本だよ。『エ』じゃないぞ?『工』だぞ?機械工学の本。これは、大砲のメカニズムが書かれてるページだけど」


アレスの本には、なにやらよくわからない図や記号が載っていて、少しも理解できない。


「・・・僕には難しそうだ」


「だろ?シャルル先生の冊子には、『石壁の迷宮世界(ストーン・ダンジョン)』以外の内容も含まれているんだろうし、そっちを読んでれば良いんじゃねぇの?」


「・・・そうすることにするよ」


シャルル先生の冊子の内、『石壁の迷宮世界(ストーン・ダンジョン)』の紹介は後ろの方に書かれていたはずだから、まずは最初の方の適当なページを開く。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

雷鳴轟く金属世界サンダレイニング・メタラニア


金属世界(メタラニア)』とも呼ばれるこの異世界は、『元素』のほとんどが金属の性質を持っており、大気の成分の殆どが、『m-周期表』における『第18番元素(m -アルゴン)』によって占められている。

我々の『C-周期表』におけるアルゴンと似て、高電圧に晒された際、紫色に輝く性質を持つこの気体が大気に満ちているため、『金属世界(メタラニア)』の雷は、極めて美しい紫色に輝く。



地面や木々は金属でできており、湖や川には水銀のような液体状の金属で満ちている。

大気成分は、殆ど、『m -アルゴン』が占め、僅かに『m -アルゴン』が電子捕獲によって変化した『m -塩素』が含まれている。

これにより、この世界の雨は『重金属』を含む『有毒かつ高質量の雨』が、『m -塩素』により酸性を帯びているため、大変危険である。



Thunder(雷が)-raining(雨のように降る)という名前の通り、雨が降る頻度と同じくらい(というのは流石に誇張表現だと筆者は思うのですが)雷が降るため、繰り返しにはなるが、大変危険な世界である。


金属で構成されているこの世界で雷が頻繁に降る理由は解明されていないが、

仮説の一つとして、高山帯にまばらに存在する『電池の大樹』の存在が挙げられる。


『電池の大樹』は、高さ30メートルほどの大木で周囲の『魔素(マナ)』を吸収し、地面からm -電子を吸い上げ、金属製の幹を伝い、金属製の葉に電子を帯電させた後、大気にそのm -電子を放出する。

これには、あの世界の『太陽』から放たれる『γ線』によるエネルギーのほとんど全てをを、過剰に用意したm -電子に対する『光電効果』を意図的に起こすことで使い切り、細胞へのダメージを極力減らす目的があると考えられる。

ちなみに、この金属植物のメカニズムを解明する過程で発見された『光電効果』は、光の『粒子』としての性質を、『魔臓による探知』以外で示した根拠の一つである。


必須技能として、自身の身体を過剰な電気が流れるのを防ぐ『体表絶縁化(インシュレーション)』と、過剰な『γ線』から身を守るための『放射線遮断』が挙げられる。

また、大気に酸素が殆ど存在しないため、酸素ボンベを携帯するか、『魔素(マナ)』から酸素を作り出す技能である『8番生成(ジェネレータ・8)』を習得しておく必要がある。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「・・・『金属世界(メタラニア)』って凄いね。」


思わず声が漏れる。


「ん?『金属世界(メタラニア)』のページを読んだのか?」


アレスは本から目を上げ、僕の方を見る。


「うん。重金属って確か物凄い毒性を持つんでしょ?それが酸性で降ってくるなんて、死ぬしかないじゃん」


「あの世界の生物は全身金属なんてのが珍しくないから、ヤツらにとっては恵みの雨なんだろうよ」


「凄いね。・・・世界は多いなぁ」


「だろ?ちなみに、そんな世界で傘を持たずに悠々自適に暮らしている天使もいるんだぜ?」


僕は校長の話と、オーラの心象世界を思い出して、


「ああ、『第6位』の天使様だっけ?

でも、あの人『黄金色のレインコート着てなかった』っけ?」


するとアレスは、不思議そうに少し首を傾げ、




「あれ?お前、『第6位』に会ったことあんの?」





(・・・ああ、そういえば、僕の能力で『見た』っていうのを説明することは出来ないのか、禁忌だし。どうしよう。

アレ?僕ってこの話、校長から聞いたんだっけ?それとも『追憶』した時に見ただけだっけ?まずいな。知り得ない事を自然と話しちゃったらそれこそ『魔王』とかだと疑われちゃうのかもしれないし、これからは気をつけないと。とりあえず今は、校長から聞いたってことにするしかないな。後で能力が使えるようになったらもう一回『あの時』のことを見直して、校長が言ってたか確認しよう。)





「いや、そういうわけじゃないんだけど、校長から聞いたんだ。ほら、『実戦』の後にクロノス教授の私有世界に飛ばされたでしょ?あの時の講評でオーラが質問したときに言われたんだ。」


「へぇ。確かにあのレインコートは電気を操る奴にとっては、これ以上なく高性能だからなぁ。あれ、実は糸の時点から特注した品なんだぜ?」



その時だった。






   『カタカタ』




小石か何かが、転がる音がした。


「おっ!キタキタ!!!!」


アレスは嬉しそうに笑う。


「おいセント!急いで両手両足を壁につけて、身体の位置を固定しろ!」


この世界では、命の安全のためにアレスに言われた事を真っ先に守るように言われていたため、僕は急いで両手両足を壁につけて、つっかえ棒のように身体の位置を固定する。


「出来た!何が起こるの!?」


「振り落とされるなよ!?」


質問の答えになっていない気がするが、少なくともかなり物騒な事を言われた気がする。




   『ゴゴゴ』

まるで山が動くような低い音が鳴ったと思った次の瞬間ーーー、

















   『ガタンッ!!!!!!!!』























本能が震え上がる。

まるで高い塔の頂上に立っていた時に、塔が下から崩れ出したかのような不安感。

あるいは、地震により体勢が安定しないときの不安感。

床だと思っていたものが壁になる。壁だと思っていたものが床になる。





世界が90度回転した。




重力の向きが90度回転した。




そして、静寂が戻ってきた。








「・・・どうだった?」


アレスは嬉しくてたまらないといった様子だった。


「・・・コレどういう事なの!!?」


アレスは僕があたふたするのを見て笑いながら、


「この世界は『重力の向きが変わる』んだ。規則性なんざあったものじゃねぇ。突如上下の向きが変わるんだ。先へ続く一本道が、突如落とし穴みてぇになるんだ。身体を固定する術を知らなけりゃあ、脚以外を床にぶつけて即死だ」


「・・・だから、こんな行き止まりに来たのか。どういう風に重力の向きが変わっても、被害を抑えるために」


「物分かりがいいなぁ!途中途中、落とし穴みたいな穴があっただろ?あれが今頃『脇道』みたいになってるんだろうよ!」


アレスが言い終わったところで、





   『ゴチャッ!』



先程まで一本道だったもの。

今となっては、上の見えない落とし穴となった一本の穴。

その上からネズミほどの大きさの獣が落ちてきて、地面に赤い花火を描く。


「・・・んで、逃げ場の選択をミスるとこうなるってわけだ」


「・・・・・・。」


「幸い、『重力の向きが変わる』時の予兆として、数秒前に軽くて、重心の不安定な物ーー、例えば無茶苦茶小さい石なんかが転がり始めて、音が鳴る。


まぁ、たかだか数秒間の間に安全性の高い場所に移動できるかどうかは運次第だがな。」


「・・・・・・なるほどね」


「もしかして、もう帰りたいのか?」


「まさかっ!?危険なのは承知の上だけど、アレスが居れば大丈夫でしょ?」


「まぁ、そこは安心してもらって良いけどな。じゃあ、しばらく待つとするか。」


「えー!今すぐ出発しようよ!!」


「・・・そんなこと言ってもよぉ。」


アレスはやれやれ、と首を振る。


「何さっ!?」


アレスは無言で獣の落ちてきた方を、、、つまり天井を指差す。


「・・・・・・あ。」



さっきは『道』だったから、『歩いて』これたが、今や『穴』となっているため、『登る』のは至難の業だ。




「そゆこと。そんじゃあ、重力が元の方向に戻るまで、読書でもして過ごそうぜ。」




「・・・・・・」



ーーーーーーーーーーーーーーー


セントの幸運により、次の『重力変化』で重力が元の向きに戻るのであるが、それまでの1時間ほどの間、読書中に物が落ちてくる事『6回』。突然物が落ちてきて、轟音が鳴るたびに心臓が止まりかけ、結局アレスに身の回りを警戒してもらいながら、セントは目と耳を塞いで寝ることにした。


ーーーーーーーーーーーーーーー


ようやく重力の向きが変わり、探検を再開する。


「・・・あんまり離れすぎると面倒だし、これから1時間くらい探索したら帰り始めるぞ。それで良いか?」


僕は懐中時計を懐から取り出す。

時計の針が見えないのを察したのか、アレスは頼まれるよりも先に明かりをつける。

今は午前2時ほど。授業の準備をするとしても、あと5時間ほどは余っている。


「ありがと。そっか、1時間かぁ。明日の授業開始まで5時間くらいあるし、もう少し行っても良いんじゃないの?」


「おいおい!徹夜は流石に厳しいぜ?少なくとも2時間くらいは寝ねぇと。俺ら明日も授業あるんだからな?しかも、ワンチャン、鬼みてぇな先生の授業があるかもしれねぇし。

行きに1時間、帰りに1時間、それで余るのが3時間。これくらいは余裕見ないとな」


「まぁ、アレスがそう言うんだったらそれで良いよ。


ところで、あんまり鉱石とやらが見当たらないね?僕、実は結構楽しみにしてたんだけど」


「そもそも鉱石ってのはこんな通路に転がってるような物じゃないからなぁ。塊になって一部の地域、、、俗に言う『鉱床』に生成されているけど、大概そのそばには化け物達がウヨウヨしてるし。

今回はそんな『鉱床』さえ見つからないとなると、俺らは運を使い果たしちまったのかなぁ」


「この場で運使い果たしちゃったら死は逃れられないと思うなぁ」


「縁起でもないこと言うんじゃねぇよぉ」


「ハハハ。警戒を怠らず楽しもう!」


「おう!」


その時だった。





「・・・ (ひ、、、とか?)





命が尽きかけているような掠れ声が脇道から聞こえた。


「んっ!?人!?」


「おいおい!遭難者か?」


僕とアレスは早走りで脇道に進み、壁にある僅かな窪みに寝ている人物を見つける。

茶色い髪と眼をした40代ほどの男性だ。服は僕らのような制服ではなく、本格的な探索者の服装だった。リュックには、二つのサイドポケットがあり、そこに入っている容器はいずれも、、、割れていた。


アレスが駆け寄り、それに僕が続く。


「おいっ!アンタ、大丈夫か!?」


「・・・なぁ、図々し、、、いとは思う、けど、、水を少し、、分けてもらえ、ないか?」


「ああ。多めに持ってきてるから大丈夫だ。ホラ!」


アレスは金属製の水筒に入った水を探検家に飲ませた。


  『ゴキュッ!!ゴキュッ!!』


久しぶりの水を逃すまいという、生命の強い意志を感じさせるような音が喉の方から聞こえた。よっぽど水分が不足していたのだろう。



「ありが、とう。少し、休ませてくれるか?」


声の掠れが治ってきたようだ。

30秒ほどして、男は口を開いた。


「改めて、水を分けてくれてどうもありがとう。その校章は、、、コスモスの学生か。」


「ああ。そうだぜ。そっちは?」


「おっと、名乗りそびれていたな。僕の名前はローレン。ローレン=フラミネアだ。出身はイチジク王国」


その名前を聞いた瞬間、アレスがピクッと反応した気がした。

男は続けて、


「希少な鉱石を友人と取りに来たんだけど、、、。このザマさ」


自嘲するように肩を落とす。


「・・・友人はどうしたんだ?いや、答えたくないなら答えなくて良いんだが」


アレスの質問に、男は天井をぼんやりと眺めながら、


「うん、君の予想通りだ。道中化け物に襲われてね」


「そっか。悪りぃな、嫌なこと思い出させて」


「いや、良いんだ。気にしないでくれ。ところで君たちはどんな用があってこの世界に?

・・・見たところ許可が与えられるような年齢には見えないんだけど・・・」


「ん?まぁ、ノーコメントって事で」


「そっか。まぁ、『コスモス』の噂話はイチジク王国でもよく耳にするよ」


「そんなことより、アンタ、共和国を出たのは何日前だ?」


「「共和国??」」


僕と遭難者の声が重なる。


「ん?セント知らないのか?イチジク王国は、ザクロ王国と同時期に王政を廃止したんだ。名前はイチジク『王国』だけど実質共和制だから共和国って呼ばれてるんだ」


「へぇ。でも、ザクロ王国も議員制じゃん」


「・・・意外と実権持ってるのは王家だからじゃねぇの?大人の事情ってやつだろうよ。まぁ、『教皇』に見逃される程度の支配力なら構わねぇんだろうな」


僕らの会話を聞いて、探検家は少し驚いたように見えた。

(何か驚くような点、あったかな?

・・・それはそうと、これからどうするのか考えないとなぁ)



「へぇ。難しいね。それより、おじさん。これからどうするの?」


「・・・ああ!そうだね、なんとかして元の世界に帰還したいんだけど、君たち、ゲートの場所を知らないかい?」


「・・・ああ、知ってるよ。

ただ、一応コスモスに通じているゲートなんでな。『ゲート管理人』に話をつけて『滞在許可』を貰わないと護衛官に捕らえられちまうから、そこそこめんどくさい手続きしてもらうことになるけど、大丈夫か?」



(アレ?そんな『管理人』だなんて、居たっけ?




・・・『アレスが、嘘をついている』?)



僕は違和感を感じながらも、なんらかの意図があっての嘘であると予想し、口裏を合わせる。


「・・・あー、あのゴツいおじさん、『管理人』だったんだね。」


「あれ?言ってなかったっけ?」


アレスも即興の嘘に乗ってきた。やはり、なんらかの意図があるようだ。


「・・・構わないよ。案内してもらえるかな?無論、お礼に出来る限りの事はするよ。とはいえ、希少鉱石を取りに来なければ、家族の治療費も稼げないような甲斐性なしだけど。」


「いいって!旅は道連れ世は情け、って言うだろ?」


「ああ、ありがとう。」


こうして、探検メンバーにイチジク王国の探検家が加わった。

僕らは、アレスの案内のもと、時に穴をよじのぼり、時にくだり、左右に曲がり、ゲートへ向かう。


「ねぇ、おじさん。おじさんの家族は病気なの?」


一言も話さず黙々と歩くのは、思っていたよりも退屈だった。


「おい!セント!少しは気をつかえよ!」


アレスは本気で怒っているようだ。確かに、改めて考え直してみると無神経なことこの上ない発言だった。


「あ!すみません!無神経でした。」


「いや、良いんだよ。

・・・その通りさ。母親が『黒疫』という病に罹ってしまってね。」


「ん?『黒疫』だって?そりゃまたどうして?」


「どうしても何も、、、知らないよ。僕らは普通に生活をしていただけなんだ。なのにあの病は、、、。」


きつく握り締められた男の拳から血が滴り落ちる。

やるせない現実に怒りを抑えられない様子だった。


「・・・・・・・・・・・・なるほど、そういうことか。・・・・・・クソッ!」


アレスまで、悲しそうな表情になる。

彼が何かに納得するまでに僅かにタイムラグがあったが、考え事をしていたセントはその事に違和感を覚えることはなかった。


(『黒疫』、どこかで聞いたことがある病だ。どこで聞いたんだっけ?まだ能力は使えそうにないからもどかしい。能力、早く復旧してくれないかなぁ)


「・・・なぁ、オッサンまさかとは思うけど、、、アンタこの辺りで、『違和感を感じるナニカ』とかそういうもん、、、具体的には『黒い金属製の鳥籠(とりかご)』みたいなものを触ったりしたか?」


「ッ!?よく分かったね!黒い鉄製の鳥籠みたいな物があって、それを触った途端、仲間が消えてしまって、僕もどこかわからない場所に飛ばされたんだ!」


「立方体状の箱か?」


「そうだ!君はアレに心当たりがあるのかい?」


「・・・全く、運命ってのは、どうしてこうも・・・・・・」


アレスは泣きそうな顔で頭を抱える。


「アレス、勿体ぶらないで教えてくれよ。僕も気になってきた」


「・・・何から話せば良いってんだよ、こんなの」


普段はスラスラと知識を語るのに、今回に関しては、アレスは話す内容を吟味しているようだった。どうやらただごとでは無いようだ。


「なぁ、オッサン、アンタもしも家族が死んでいたら、後を追ったりしないよな?」


「なんだい?急に!縁起でも無いことを言わないでくれよ!」


「そうだよアレス、君も大概不躾だよ」




「答えてくれ!!!オレはアンタを死に追いやりたくないんだっ!!!!」


アレスの絶叫が洞窟中に響く。

親友のこんな一面は初めてだ。彼がここまで取り乱したのは、、、クロノス教授に謝罪した時くらいな物だ。心の底から探検家の事を心配していて、何かに葛藤しているような口調だった。


アレスの真剣さが実感できたのか、探検家も真剣そうに考えて、


「いや、そんな事はない。母が亡くなったとしても、僕には養う家族がいるんだ。」


「・・・息子だろ?」


「?よく分かったね。その通りだよ。ちょっと待ってくれ、、、。ほら!」


男はリュックの中から、額縁付きの1枚の写真を取り出す。


そこには、高齢の女性と探検家の男と、その妻らしき若い女性と、2歳ほどの子供が写っていた。


「・・・・・・ああ、やっぱりか。やっぱり、、、この世は、、、最悪だ」


「さっきからアレスは何を言ってるの?僕、ついていけてないんだけど、、、」



「悪い、セント。」




   『少し静かにしてくれ』






アレスの声が洞窟にこだまして、背筋がゾッとする。アレスは本当に余裕を失っているようだ。ここは、黙っていたほうが良いだろう。





しばらく僕らは無言で歩き続けた。

何も考えず、足場の悪い洞窟を愚直に歩き続けた。



ーーーーーーーーーー



やがて僕らはゲートにたどり着き、石造のゲートを潜り抜け、『幻想世界(アカデミィア)』に戻る。



話に聞いていた『管理人』が不在であることを不思議に思っている様子の探検家に対して、ようやくアレスが口を開いた。







「・・・昔は、、、昔は『魔法』っていえば、オレらの能力の事を指す言葉だった。」



「「・・・・・・」」





それが、今の状況どう繋がるというのだろうか?




「やがて、科学が発展するにつれて、世界には2つのルールがある事がわかってきた。


『魔法』と『科学』だ。とはいえ、『魔法』というものも、所詮は系統化出来る学問であることに変わりはない。『幾何学』なんかはまさにそうだ。決められた図形を決められたサイズで決められた顔料で決められたように描けば、決められた現象を引き起こす事ができる。


だが、それでもこの世には『系統化』出来ないものが存在する。


『真の魔法』とでもいうべき物だ。

ありとあらゆるルールを捻じ曲げる、童話の中に存在するような物。

本来、『実世(リアリティ)』に存在してはいけないような物。



それを、『聖神教会(セイント)』は『 世界の悪戯(パンドラ)』と呼ぶ。



『パンドラ』は、、、まるで世界を生み出したやつの性格の悪さを凝縮したみてぇな、、、悪辣で、、、最悪な物しかねぇ。





そして、オッサン、アンタが触った品物は、、、

かつて『石壁の迷宮世界(ストーン・ダンジョン)』に生成された事のある『パンドラ』だ。


名前は、、、『悪魔の黒檻』。触れた者の真摯な願いを最悪な形で叶える『パンドラ』だ。








・・・・・・なぁ、オッサン。アンタの母親は今でも『黒疫』に苦しんでいると思うか?」



新しい情報が多すぎて、頭が追いつかない。

探検家の男も僕と同じ様子で、少し考えてから、



「まだ生きててくれているなら、きっと苦しんでいると思う。」


そんな真剣な答えに、アレスはーーー、やりきれない、と言った様子で、吐き捨てるように言った。




「・・・・・・不正解だ。」


「え?」


「『黒疫』は、確かに死に至る病だった。小動物を媒体として、瞬く間にアトラス大陸中に広まり、先代のザクロ王を含む数多くの人々を死へ追いやった。











・・・・・・これが、、、、、『20年前』の話だ。」





「え?」





探検家の口から声が漏れた。


その場の時が止まったようだった。

アレスはそんな男の様子を見て、声を絞り出す。


「若き天才生物学者リーフレイ=ド=ヴィロメントが、完全な治療薬の開発に成功したんだ。これが『聖神暦2100年』、つまり今から20年前の出来事だ」


「ちょっと待ってくれ!!!?君は何を言っているんだっ!??




今は、、、今は『聖神暦2090年』だろ!!!!???」



男の悲痛な叫び声が狭い部屋に響く。



「・・・なぁ、誤魔化すのはやめにしようぜ、クラン=ハイストラ」


(ハイストラ??それって、レスター教授のーーー、)



「なっ!?何故僕の本名を!?」


「旧アラントの役人どもから聞き出したスパイの記録の中に、ローレン=フラミネアの偽名があった。アンタの子供とは知り合いでね。霧のように消えたアンタの事で旧アラントの上層部はヤキモキしていたみたいだぜ?」


(つまり、男がイチジク王国出身だというのは、嘘だったってこと!?だからあの時、イチジク王国が共和制に変わったって聞いた時に驚いていたのか。そして、アレスの話が本当なら、この人は、、、)


「そ、そんな、さ、さっきまで、、、。」


「残念ながら、『さっき』じゃない。『とっくのとうの昔』だ。アンタが工作員としてこの世界に入ったのは。


大体予想はできる。アンタは、仲間とあの世界に入り、そしてなんらかのアクシデントに見舞われ、瓶を割っちまった。金属製の容器に入れなかったってことは、金属を溶かすような薬品だろう。きっとアンタは任務に失敗してしまったんだろうな。

そして、水が尽き、たまたま見つけた『パンドラ』に触れちまったんだろうよ。


『悪魔の黒檻』は、触れた知的生命体の心の底からの願いを聞き取る。ごまかしは効かない。きっと、『水を飲みたい』だとか、そんな感じの事を願ったんだろうな。


そして、アンタは破壊不可能な岩か何かに変えられて『アンタの時間は止まり』、アンタの仲間は待ちきれずにどこかへ行ったはずだ。


そして、水を与えてくれるようなオレらが近くを通りかかった事で、それが解除されて、無事に水を得る事ができた、ってことだろうな。」


茫然自失としている探検家を横目で見ながら、僕は今の話に違和感を覚えて、思わず質問する。


「ちょっと待ってよ!アレス、それはおかしいんじゃ無いか?もしもそんな事を願ったっていうなら、『悪魔の黒檻』とやらは『水を出す』んじゃないのか?なんたってそんな面倒な事を!?」


「・・・『パンドラ』はそんな優しい代物じゃねぇよ。もしも水を出すっていうなら、きっと願ったものの血を搾り取って、そこに塩を可能な限り加えて渡してくるはずだ。『パンドラ』ってのはそういう物だ。」


「でもっ!それでももっと他の苦しめ方があるじゃ無いか!どうしてわざわざそんな回りくどい方法をとったのさ!?」


「・・・オレに聞かれてもわからねぇよ。


なぁ、アンタ、『悪魔の黒檻』に触った時の事を思い出せるか?」


男は狼狽しながら、なんとか言葉を捻り出す。


「・・・それが、、、あまり、思い出せないんだ。君たちは、、、僕を、、、騙そうとしているんじゃ無いのか?本当に、、そんな事が、、、。」



(ねぇ、『科学者(サイエンティスト)』、そろそろ能力使えないの?)


『ーー1回分くらいなら、保つかもしれない。


・・・君の言いたい事は分かるよ。セント。でも、悪い事は言わない。やめておいた方がいい。』


(どうしてさ?)


『ーー『パンドラ』、特に『悪魔の黒檻』を使用した者の『悲劇』は想像を絶するものなんだ』


(だから、何を根拠にそんな事を言っているのさ!?)


『ーー・・・知り合いから聞いた話だよ。』


(知り合いって誰さ!?)


『ーー言えない。』


(じゃあ、僕も能力を使うのをやめない!)


『ーー待っ』



  「 『科学者(サイエンティスト)』 」


視界が真っ白に染まっていきーーー、


ーーーーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーーーーーーーー


(アレ?使えなかった?)


『ーーちゃんと発動したよ。そして、君は発狂したんだ。2回目なのに学ばないね。記憶は消させてもらった。』


(何てことを!!?)


『ーー安心して、というべきでは無いんだろうけど、僕も君と一緒に『追憶』をしたんだよ。彼の願いに関してなら、質問権を一回使用する事で教えられるけどどうする?』


(無論、教えて。)


『ーー即答だね。





『息子にもう一度会いたい』だってさ』




(え?そうなの?じゃあ、やっぱり息子って、、、)



『ーー全く、記憶を消すのだってタダじゃないんだ。これから5時間くらいは休ませてもらうよ』



(あ!ちょっと!どさくさに紛れて休まないでよ!)



科学者(サイエンティスト)』からの返事はなかった。



(ちょっとアイツサボりすぎじゃ無い!?



・・・さて、僕はどうするべきなのか。)



「どうしても、、思い出せない、、。一体どうしてッ!?」


男は狂ったように頭を抱えて涙を流す。


「・・・あの〜、もしかしてなんですけど。」


僕は、たまたま思いついた、という体で答えを教えることにした。



「その〜、『息子にもう一度会いたい』とかじゃ無いですか?」



男が震えた。


「あ、ああ、ああああ、ああああああああああああああっ!


そ、そうだ、ぼくは、あの時、それを願って、、、」
















「通報が来て見に来てみれば、君たち、何をしてるっスか?」















部屋の入り口から聞き慣れた声が聞こえた。


「あ!レスター教授!」


(ルールを破って異世界に行った事がバレてしまった。いや、でもレスター教授もかつては僕らと同じく異世界を探検していたはずだし、無問題か?)



「・・・クジカ・・・クジカなのか!?」



探検家は、涙をボロボロ流し、縋るように声を紡ぐ。






























「 誰っスか?アンタ 」




























「・・・・・・・・・・・・・・ぇ?」


「いやいや、アンタ、『滞在許可』もって無いじゃないっスか。重罪っスよ?理解してます?」


「いやっ!そのっ!」



「とりあえず、僕の生徒2人を解放して、その場で両手を上げて膝をついて下さいっス。」



「違っ!」
















男はリュックの中に手を入れーーー、



     
















     『ガチッ!』『ドォンッ!』



     『ヴォンッ!』






レスター教授の立っていた地面には、とてつもない大きさの力が加えられたかのように放射状の地割れと、かすかな砂煙が残っているだけだった。





セントは、視線を恐る恐る探検家の男が居た方向に向ける。




レスター教授の革靴は、真っ赤に染まっていた。





探検家の男は『この世には』居なかった。






レスター教授は何事もなかったかのように足を下ろすと、部屋の出入り口の方へ向かって歩き始めた。


レスター教授が部屋の外に出るのと同時に、僕はゲートに向かう。



「・・・ッ!待てッ!

セン 『フォン』 トッ!


ッ!チクショウッ!レスター教授ッ!待ってくれ!『魔素(マナ)』の供給を打ち切るのは待ってく 『パリンッ!』 れ!ッ!!あああああ!チクショウッ!!!!!!」





「・・・あれ?なんか言ったっスか?」 


レスター教授が首を傾げて部屋に戻ってくるのと、

 



アレスが取り返しのつかない過ちを後悔し、地面を殴りつけ、拳から血を流すのと、




セントが『石壁の迷宮世界(ストーン・ダンジョン)』に降り立つのと、





レスター教授に蹴り飛ばされ、ゲートを潜らされた探検家が致命傷を負い、血を吐くのと、










魔素の供給が打ち切られたゲートの膜が霧散し、宙を舞い、消えていくのと、
















































額縁に入った『家族写真(家族の思い出)』が砕け散るのは、同時だった。

《注意》

これより下、少々悪辣な表現と少しのネタバレアリ。

見なくても本作は楽しめます。悲劇が大好きだという物好きな方だけどうぞ。





































































「全く、前任者が千年前にいなくなっちまったせいでこの仕事に就いたわけだけど、、、。

仕方のないこととは言え、待ち時間が多いと言う点では最悪の仕事だなぁ。

みんなもっと『オレ』に触って、願い事を言ってくれれば良いのに。」


おやおや?人の不幸を見るのが大好きでたまらない貴方にぴったりの仕事だと思いますよ?


「うげっ!聞いてたんですか?いや〜ホワイトな職場で最高!」


取り繕わなくて結構です。さて、レスター教授の父上殿の願いは何だったんですか?


「『息子にもう一度会いたい』だそうですよ」


へぇ、それで、貴方はどうやって彼の願いを叶えたんですか?


「そりゃあもう!最高潮まで希望が光り輝いた後、絶望に変色する様を楽しむために、あれこれ頑張りましたとも!


幸い、あの男の息子は幼少期に父と別れ、父の面影や父との思い出なんかも完全に忘れ去られていましたから、それを利用したんですよ!」


具体的には?


「文字通り『息子』にもう一度会わせるために、ヤツを石に変えて機会を待ったんですよ!


『ヤツに水をやるようなお人好し』で『ヤツの願いを文字に直せるような能力者』と、

『ヤツに同情しながらも真実を語れるような歴史の知識が豊富な賢人』が、

『ヤツの息子が巡回している日』にヤツに出会うように!!


ヤツが願いを言って世界の未来を見た時点で、この奇跡的なタイミングを活かそうと思ったんですよ!」


ふむふむ。


「そしたら、まさかの息子さん、思いっきり蹴飛ばしちゃって!肺に大穴が空いちゃってましたし、ありゃもう生き延びられないですよ!

息子さん、パラドクス校長の事を義理の父親って慕うわりに、本当の父親は足蹴にしちゃうんだから滑稽で仕方ない!!


父親の方は父親の方で、あの状況で『家族写真』を取り出そうとするなんて「誤解してくれ」って言ってるようなものじゃないですか!!


いやー、ゲートが割れる音と家族写真の割れる音が上手い具合に同時に鳴って!思わず絶頂しちゃいましたよ!」


それは何より、、と言うべきなのかな?


「どこかの世界科教授にも見せてやりたいものですよ!!まさに最高傑作!!

・・・でも、今同時並行で進んでいる計画はもっと凄いですよ!」



あ、それ最終回のネタバレになるから言わないでね。



「え〜。あぁ!楽しみだなぁ!

こちら側からは世界が進むのを黙って待つことしか出来ないとは言え、、、ああもどかしい!

しかし、この待ち時間こそが悲劇の完成の瞬間の愉悦を限界まで高めてくれるというもの!!!


辛抱強く待つ事にしましょう!


・・・全く!前任者は何でこんな面白い仕事を辞めたんだろうなぁ?」


きっと、情に絆されたんでしょうよ。


「悪魔が情に絆されてどうするんだか。

・・・では、悲劇を肴に!乾杯!」




ええ。乾杯。

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