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『花皇国の悲劇』 第一幕 『砂漠世界の花咲少女』

アレスは語る。



かつての、『花皇国の悲劇』を。

ー『その世界は、飢えと渇きと灼熱と極寒に支配されていた。』ー


      ー 序列第5位天使 アダマシィア ー



ーーーーーーーー

吹き荒れる風が黄色に光る砂を集落の中へ運んで行く。


その風は、正しく、死を運ぶ風であった。


「この地域も、もうダメかも知れぬ。」


髭を蓄えた、痩せこけた老人がテントの中で呟く。


テントの中には、7人の男達が円状に座っていた。


痩せこけた老人の隣に座っていた男が反論する。


「しかしっ!族長っ!まだこの地に辿り着いてから、たったの3日ですよ!


家族達は、、、度重なる移住に疲弊していますっ!」


周りの男達は、そうだそうだ!、と重ねて言う。


7人の内で一番若いであろう男が切り出す。


「族長!この世界に安寧の土地なんて、存在しませんっ!」


「ワシもその事は重々理解しておるっ!、、、しかし、この地には、食物は無く、湧水も池から取れる僅かなものしか無い、、、しかも、その水ももう少しで尽きそうじゃ。」


老人はやるせなく呟く。それに対し、若者は怒りを含んだ声で呟く。


「私が言いたいのはっ!


我々が苦しんでいると言うのにっ!他の民族は、水と食糧が採れる土地で幸せに過ごしているということですっ!


我々にはっ!ヤツらの食糧と水を奪う他、生き残る道はないのですっ!


どうか、ご英断をっ!」


男は必死に頼み込む。しかし、老人は俯いて首を振り、答える。


「ワシらに勝ち目はないじゃろう、、、


奴らは食糧と水を得る術を持っておる。兵力も雲泥の差じゃ。」


「しかしっ!!っっ!クソっ!


どうして、、、どうして、僕らが飢えて、ヤツらは腹一杯食えるんだっ!!」


若者が床を殴る音がテントの外にまで響き渡るのだった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ここは死の風が吹き荒れる『砂漠世界』。


黄色い砂に覆われた大地と、雲の殆どない真っ青な空が広がるその世界は、


人に対して敵対的であった。


太陽(サニ)』の出ている間は、灼熱と大地と空気が肌を焼き、


太陽(サニ)』の沈んだ後は、極寒の風が体温を奪い去る。


ごく稀に雨が降ったとしても、大地は人の取り分を残すまいと、水を吸い込み、


植物などは、稀にサボテンがある程度であった。


天の悪戯か、僅かに水源は存在しており、『オアシス』と呼ばれるその土地を巡って、民族同士は争い続けていた。


オアシスを手中に収めた民族は、オアシスを壁で囲み、汗水の一滴たりとも、他の民族へ渡しはしなかった。


誰が彼らを人でなしと責められようか、されど、水を他民族へと分け与えようとする者たちは、長い歴史の中で淘汰され続けてきた。



水を巡って人々が殺し合い、流れた血を大地が美味しそうに飲み干す。



血を飲み干した土地には、サボテンが生え、大地から精一杯、水を吸い上げていた。


棘にまみれたこの植物は、されど人々にとって数少ない食糧と水分補給源であり、


都市に属せない人々は、テントをや家具を、家畜を使って運び、水源やサボテンを求めて、灼熱地獄と極寒地獄を移動し続ける生活を行なっていた。


ーーーーーーーーーー


月が空へ浮いていた。


青白い月は、地の底で虫ケラのように生きる人類を、天から嘲笑うように、光っていた。


気温は2℃程だろうか、分厚い布地に体を包んだ少女は、砂の大地に座って、


何を考えているのかわからない、ぼんやりとした表情で、月を眺めていた。


サボテンの毒々しい深緑ではない、輝く緑色の眼と髪を持った少女は、月の光を反射して、さながら、砂漠に咲く一輪の花のようだった。


「また『(ルナ)』を眺めているの?翠蓮(スイレン)。」


翠蓮と呼ばれた少女は振り向いて答える。


「ん、黒龍(コクリュウ)。 月、綺麗。」


黒龍と呼ばれた少年は、少女の隣に座って話し始めた。


「翠蓮、族長が呼んでたよ。


・・・父さん達の話を聞いたんだけどさ、、、水がもう少しで尽きるらしいよ、、、」


少女は少し悲しそうに俯いてから答える。


「ん、わかってた。 黒龍のお母さんも。」


「ごめん、その話は、、、」


「ん、ごめん。」


「いや、話し始めたのは僕だしね。こっちこそごめん。


水不足での口減らしは、、、避けられないとはいえ、もう二度として欲しくないけど。」



少年は泣きそうになるのを堪えて、月を眺める。



水不足での口減らしとして、追放されたのは、黒龍の母親だけではなかった。



族長以外の老人、もう子供を産めない女性も、度々追放されてきた。



この世界において、民族から追放されることは、死刑宣告を受けるのと同義であった。



しかし、誰も不平を言わなかった。



言えなかった。たとえそれが母であろうと、たとえそれが祖父であろうと。




皆、家族のうち、誰かしらが追放されていた。




追放された者達は、死を待つ中、一体何を考えながら過ごしたのだろうか。




彼らも僕らと同じ月を眺めているのだろうか。



それとも眺めて『いた』のだろうか。



彼らの体に、涙を流す為の水分は残っているのだろうか。






  (残っていないだろうな。きっと。)




他の民族の中には、『追放』ではなく、『吸血』を行う民族もあるらしい。



死にゆく者から、血という水分さえ奪い去ろうというのは、流石は『砂漠世界』の住人らしい。


古代の伝承によると、この『砂漠世界』の他の世界には、甘い『実』とかいうものが、成る木があるらしい。



他の世界への道など、、、広大な砂漠を歩いて過ごして13年、一度も見つけられなかったというのに。



「ん、黒龍、大丈夫?」


幼馴染の翠蓮が心配そうに、顔を覗き込んでくる。


「・・・大丈夫だよ。


・・・大丈夫に決まってる。」


貴重な水分を涙にする訳にはいかない。


そんな黒龍の心情を察しているのか、翠蓮は何も言わずに月の方を向いて言う。


「ん、涙は、水の無駄じゃ、ない。」


全く、幼馴染には敵わない。


男の頬に流れた一筋の水が、月の青白い光を反射して、大地に吸われるのだった。


ーーーーーーーーーーー


翠蓮が族長、いや、自分の父の居るテントに入る。


「ん、お父さん、来たよ。」


老人は、やつれた様子で答える。


「皆の前では、族長と呼びなさいと言っているだろう。」


「ん、もう、族って、言うほど、残って、ない。」


そう言われた族長は顔を真っ赤にして怒る。


「なんだとっ!お前、言わせておけばっ!


ッゴホッゴホッ!」


老人は咳き込み、翠蓮は心配そうに尋ねる。


「大丈夫?」


「大丈夫な訳があるかっ! ゴホッゴホッ!





・・・今日お前を呼んだのは他でもない。




お前を追放する事にした。


元々、自分の娘を庇っていると、族の者達から非難されていたのだ!



つい先程までは、躊躇っておったが、、、


もう、庇うのはやめだっ!父親の面子を立てられないなんて、お前は娘の資格がないっ!



出てけっ!二度と戻ってくるな!!!」


老人は唾を飛ばして叫ぶ。


少女は、相変わらず、何を考えているのかわからない、ぼんやりとした表情で、答える。


「そ、じゃあね。」


謝って集落に残してくれ、と懇願されると踏んでいた老人は面食らう。


「ッ!ちょっと待てっ!お前!残りたくはないのか!?」


少女はぼんやりとした表情を一切崩す事なく、答える。



「ん、なんで?」



「なんでって、、、、



、、、もうよい!どこへでも行くがよいっ!!!


ただし!黒龍には話しかけるなよっ!



ヤツは大事な働き手だ!


お前について行くなどと言われてはたまったもんじゃない!」


少女は不思議そうに尋ねる。


「なんで、黒龍が、私に、ついてくるの?」


「、、、貴様には人の心がわからんのかっ!」


娘に事実上の死刑宣告をしている自分を棚に上げて、老人は怒鳴る。


少女は、黒龍から向けられている好意には、気づいていなかった。


少女は怒鳴られても不思議そうに首を傾げ、何も言わずにテントから出た。



少女は自分が普段暮らしていたテントに入り、


母の形見の鞘付きの剣と皮でできた水筒を持って、集落を出る事にした。


ーーーーーーーーー


集落の外縁のテントを通る際に、黒龍と出会う。


黒龍は、信じられないものを見るかのような目で、翠蓮を見る。


「・・・翠蓮、どうしたんだ、その剣に水筒、、、



、、、まるで旅にでも出るみたいじゃないか。」


少年は現実を受け入れられないように、乾いた笑い声を上げる。


「ははは、冗談だって、言ってくれよ、、、、、、、



、、、、、、なぁっ!翠蓮!!



、、、まさか、、、まさか、追放されたのかっ!?」


少年はまた、泣きそうな顔をして叫ぶ。


「ん、ちょっと、出かけるだけ。


追放じゃない。


確認、してくれば、良い。


族長に、聞けば、わかる。


ここで、待ってるから、行って、くれば?」





少女は世界一優しい、あるいは世界一残酷な嘘をついた。





「本当だなっ!今確認してくるから、そこで待ってろよ!」


僕は、翠蓮を背に、族長のテントへと走る。


挨拶もせずにテントの中に飛び込み、叫ぶ。


「族長っ!翠蓮はっ!!追放じゃ無いですよね!?」


すると老人は、突然の訪問に驚いた様子で、答える。


「なんの話じゃ!?翠蓮が追放して欲しく無いと泣きついたのかっ!?


ワシに謝るならば、撤回してやると告げよっ!」


  (『追放』は嘘じゃ無い!!)


黒龍は翠蓮のことを思い浮かべ、泣きそうになるのを堪えて、懇願する。


「僕からも謝りますっ!どうかお願いします!


追放を撤回して下さい!!!」


すると老人はそっぽを向いて、


「まずはヤツを連れて来いっ!!


話はそれからだっ!」


老人は、心の底では、翠蓮を追放したくはないようだった。


つい、口が滑ってしまって、プライドが邪魔して取り返しがつかなくなってしまった、と言った感じだった。




  『 この失敗が土地の歴史を動かすなんて、全く知りもせずに。 』




少年は老人の言葉を最後まで聞かずにテントを飛び出す。


汗が流れるのも厭わずに、先程、翠蓮と別れた場所へと向かう。


息が上がってゆく。肺が負荷に悲鳴を上げる。


「翠蓮っ!!!!!」


テントの横には、、、、、、、、、、、、、、、、











、、、、、、、、既に、翠蓮の姿は無かった。



ーーーーーーーーーーーーーー



私は赤ん坊の時以来、泣いた事がないらしい。



『砂漠世界の民』は、分別のつく年になると、泣くことを禁じられる。



水が無駄になるからだ。



しかし私は、物心ついた時から、一度も泣いた事がない。泣けた事がない。



だから、涙というものが、、、泣くということが、、、どういうものなのか、全くわからない。




だから、、、だから、泣けるみんなが、、、羨ましかった。




私は、、、きっと泣きたかったんだろう。



泣くという事がどんなものなのか、、、知りたかった。



分別のつく年になって、泣く人たちは未熟者だって言われていた。



けど、他人のことで泣ける幼馴染は未熟者ではなく、、、きっと優しいだけなのだろう。



「ん、少し寒いかも。」

死の風が服の表面を撫でる。



「やっぱり、泣けない。追放されても。」

少女は月を眺めながら、極寒の砂漠を一人で歩く。






老人は、族長は、翠蓮の父は、気づいていなかった。



彼が、少女の、、涙を流す機能を、、、ズタズタに壊し切っていた事に。


ーーーーーーーーーーーーーーーー


『砂漠世界』を歩き始めて早くも月が沈みかけ、夜が明けようとしていた。


「ん、この服は、暑い。


肌を覆う、一枚を、残して、それ以外は、捨てよう。」


少女は合理的だった。


わかっていたのだ。水を僅かにしか持たない自分は、


もう、、、、次の夜を迎えることはないのだろうと。


だからこそ、彼女は、夜が明けるまで、月を眺めながら歩いていたのだ。


月に、人生最後のお別れを言うつもりで。


「ん、さよなら、『(ルナ)』。」


そして、後ろを振り向き、昇りゆく太陽を見ながら、


「ん、こんにちは、『太陽(サニ)』」


人生最後になるであろう、太陽への挨拶を済ませ、歩みを再開する。


「ん、行くあてが、ある訳じゃ、無いけど。


とりあえず、行けるとこまで。」


歩みに意味がないと知りながらも、少女は歩みを諦めたりはしない。


ーーーーーーーーーーーー


どれだけ歩いただろうか。


一向に変わらぬ砂漠の景色は、まるで自分がずっと同じ場所にいるかのような、同じ場所をぐるぐると回っているだけなのではないか?といった錯覚を生みだす。


まるで、足掻く人々を嘲笑うかのような太陽に、灼熱の大地。


少女は、水筒の蓋を開け、水を飲もうとし、、、


「ん、水、無くなった。」


最後の一滴が舌に落ちるのを感じると、水筒の蓋を閉めた。


「これは、捨てられない。」


寒さを凌ぐ民族衣装は捨てられても、母の形見の剣と水筒は捨てられなかった。




少女は合理的では無かった。


合理的ではなくなっていた。







乾く喉が恨めしかった。



照りつく太陽が大嫌いだった。



足裏を焦がす灼熱の大地が憎たらしかった。






死にたくなかった。







不思議だった。





砂漠を渡り歩く中、死ぬ覚悟はできていたはずなのに、







どうして、私はサボテンを探しているのか。




どうして、私はオアシスを探しているのか。




どうして、一縷の望みをかけて、砂の山を登り、


そこから見渡せる景色にそれらが無い事を知るたびに、落胆しているのか。




死にたくなかった。




「ん、そっか。私、、、死にたく、ないんだ。意外。」




死にたくなかった。



死にたくなかった。死にたくなかった。





「ん、この山、越えて、何もなかったら、諦めよ。」





少女は山を越え、その先を見渡した。


























何もなかった。
















吹き荒れる風と、雲ひとつない空と、砂でできた山々が広がっていた。





サボテンもオアシスもなかった。






「ん、次はこそは。」


少女は嘘つきだった。少女は歩みを止めなかった。



「山を、降りるのは、楽。」


降りきって、また、次の山を登り始める。


「登るのは、辛い。」


右足を前に、左足を前に、ひたすら進める。




死にたくなかった。死にたくなかった。死にたくなかった。死にたくなかった。




山を登り切る。







しかし何もない。








「次で、最後。」


死にたくなかった。死にたくなかった。死にたくなかった。死にたくなかった。死にたくなかった。死にたくなかった。


山を降り、、、、次の山を登る。


死にたくなかった。死にたくなかった。死にたくなかった。死にたくなかった。死にたくなかった。死にたくなかった。死にたくなかった。死にたくなかった。死にたくなかった。死にたくなかった。




膝が震える。



右足を前に出す。死にたくない。死にたくない。死にたくない。



身体中が悲鳴を上げ始めてから、どれくらいの時間が経ったのだろうか。



左足を前に出す。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。



太陽が、私の前の方に見えて来た。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。




右足を前に出す。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。




防寒着を捨てた時に、日の出が、背中の方で起こっていたから、死にたくない。死にたくない。



左足を前に出す。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。



きっと、もうすぐ昼が、死にたくない、終わるんだろう。死にたくない。死にたくない。



視線が、山の頂を超え、死にたくない、山の向こうが見え、












やはり、、、、何もなかった。








 





少女は、膝から崩れ落ちる。



砂が舞い散る。
















右腕を前に出し、体を前に進める。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。


左腕を前に出し、体を前に進める。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。



ガラス質の砂により、服が摩耗し、肌から血が滲み始める。



死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。



『どうして私は、歩けなくなっても』死にたくない



『地を這ってでも、進んでいるのか』死にたくない死にたくない。



『いったい、死にたくない、どうして』






「ん、、、、、そっか。




本当に、、、、死にたく、、、、ないんだ、、、、、、、私、、、、。」




身体の悲鳴を無視して、無理矢理腕を動かす。




「やだ、、、いやだ、、、まだ、、死にたくない、、死にたくない


ゴホッ!ゲホッ!、、、」


喉が枯れきったようだ。もう声は出ない。



死にたくない死にたくない


『こんなに辛いのに?』


死にたくない死にたくない


『辛いのに?』


死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない。


ーーーーーーーーーーーーーーー


少女は、月と再開するとは思っていなかった。


しかし、天高くで輝く月は、もはや、地を這う少女の視野には入っていなかった。


世界がら灼熱から極寒へと移り変わり、死の風が少女から、微かな体温さえ奪ってゆく。


防寒着を捨てたのは、誤りであっただろうか、、、いや、防寒着を持ったままならば、少女はここまで辿り着けなかっただろう。


しかし、少女の頭の中には、もはやそんなことを考えるだけの余裕は残っていなかった。


ーーーーーーーーーーーーーーー



死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない


もはや、越えた山の数を数えるのはやめていた。


死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない



また少女は、山を越え、、、、、、、、、、





















壁に囲まれた都市を見つけた。














少女は、喜ぶ気力さえ残っていなかった。




















少女は、ボロボロの身体を引きずって、地を這い、壁へ向かう。


















「オイッ!あそこ!人がいるぞっ!」壁上の、兵士達が少女に気づく。





















少女は水が欲しかった。















































「侵略者だっ!!撃てっっ!!」






















ーーーー与えられたのは、無数の矢だけだった。























矢が少女の

『手を』

『肩を』

『背中を』

『腰を』

『足を』穿つ。



矢が刺さるたびに少女の身体は痙攣し、跳ね上がる。


しかし矢は止まらない。






















少女は、痛みに叫ぶ気力さえ残っていなかった。





既に、少女の体は、摩耗によって、痛みの限界を迎えていた。




矢を受けても、全身の痛みの量は、さほど変わらなかった。




強いて言えば、、、『心』と呼ばれているものに、取り返しのつかないヒビが入った音がした。















「撃ち方やめ!矢の無駄だ!木を使った矢は貴重なんだっ!あんな死にかけの小娘一匹っ!一本で十分だろっ!」最も偉そうな兵士が怒鳴る。






あらゆる生命に牙を剥く『砂漠世界』において、




少女の命の価値は、木製の矢の価値よりも、




   遥かに軽かった。






大地が少女の血を美味しそうに吸う。




『少女は、自分の頬を撫でている水を自覚した。』


(ああ、これが、涙。


こんな、辛い、ものだったんだ。


そっか、辛かったんだ、私、辛かったけど、泣いちゃ、ダメだったんだ、


族長の、娘だから、)













少女は、目を閉じて、、、、、





































       『フォン』

























  『そして、少女と、都市の間に、『ゲート』が開く。』









数百人の人々がゲートから飛び出て、ゲートから離れ、集まる。


何人かは負傷しているようだ。まるで何かから逃げているかのようだった。







そしてしばらくした後、3人の男と、1人の女が最後にゲートから出ててきて、


グレーのスーツに身を包んだ眼鏡の青年が、右手をゲートに向け、


   


    『ゲートがグシャリ、と押し潰された』




「おや?『砂漠世界』ですか。ついていませんね。」

と黒いコートを着た少年。


「仕方ねぇだろ?どのゲートがどの世界に繋がってんのかなんて、知らねぇんだからよぉ。つーか、お前が丁寧な言葉使うなんて、やっぱ気色悪りぃよ!」

と赤いローブを身に纏った少年。


「あらら?ドレスに砂がついてしまいますわ。ニヒルお義兄さま。風を止めてくださらないかしら?」

と、白いドレスを着こなした少女。



「ふむ、とりあえず、ニヒル先輩、ここ、魔素濃度はかなり高いようですよ。」

とグレーのスーツに身を包んだ眼鏡の青年。



「おやおや、私の名前は、もうニヒルではありませんよ。」



「わけがわからねぇけど話は後だっ!とりあえず今は、負傷者の確認だ!


オイッ!『神の復活(アナスタシス)』、負傷者の手当てを頼むッ!!」



「わかっていますわ、、、皆さん!負傷いらっしゃる方は手を上げてくださいまし?」


「いやはや、何はともあれ、上手く行ってよかったですね。



これで、しばらくの間は、時間を稼げ、、、、、





、、、おや?ッ!ディケニアッ!。



こちらに矢で負傷した少女が居ますッ!最も負傷の度合いが激しいです!」



「ニヒルお義兄さま、何を基準に!?」



「半径50メートル内の全員の心拍数、身体的疲労を測定しました!


明らかに彼女が1番負傷しています!」



「お義兄さまが人間をやめたって事は分かりましたわ!




ッ!確かにこれは1番かもしれませんわね。


この方の治療が終わり次第向かいますわっ!


それまでどうか耐えて下さいまし!


   『神の復活(アナスタシス)』!! 」


白いドレスの少女がそう言うと、白い光が負傷者の身体の周りに集まり、時間が巻き戻るかのように、傷が治る。



「これは、間に合いませんね、、、



一か八かです!





貴方、生きていたいなら、、、














死にたくない(●●●●●●)』なら!!!













この実を食べなさい!!!!」




黒いコートの男は自分の周りに、白い光を纏いながら、少女に青い木の実を渡す。



男の言っている事は何一つわからなかった。

全く未知の言語だったからだ。

『砂漠世界』で、このような言語を聞いたことなど、一度もなかった。




しかしそんな事は些細な事だった。



飢え、渇いた少女にとって、木の実は、自分をこの世に留める楔のように思えた。





そして、少女は目の前の人々以外の世界の全てを怨みながら、青い木の実を食べた。





直後、少女の胸の中央に、新たな内臓が生み出されるような、くすぐったい感覚が体を走る。



「!!!なんとっ!!!」


黒いコートを着た少年は、心の底から驚いているようだった。




身体中が痛い、けど不思議だ。『死ぬ気が全くしない』



今度は目の前に緑色の木の実が浮いていた。



その実を一目見ると、食べたくてたまらなくなる。



しかし、この実を食べると、何かの禁忌を犯す事になる気がする。



越えてはいけない一線を越えてしまう気がする。



世界から、『食べてはいけない』という命令が聞こえた気がした。



『食べるな。』



『絶対に食べるな。』



『この実を食べてしまったら、もう2度と元には戻れない。だから、絶対に食べるな。』
















『元には?』















『元の日々にいったいなんの未練があるのか?』












『戻ることを望むような日々だったか?』


















「そんなわけッッ!!!! ッ!ないッッッッ!!!」



少女は、緑の木の実を齧り、、、、、、






自分の『根本』が組み変わるのを感じた。




まるで新たな生物になったかのような、しかしそれでいて、全く違和感を感じない、むしろ、どこか懐かしささえ含んだ、奇妙な感覚に陥る。






身体中の傷は、身体が普段の何倍ものスピードで傷を塞ぎ、完治する。





少女の背中には『翼が生えていた』。





黒いコートを着た少年は驚く。


「なんと!もう『羽化』なさったのですか!?






これは、、、、なんということでしょう!?」








しかし、男の話す未知の言葉は少女の耳には届いていなかった。








































           『滅びて』




































少女は、そう呟いて右手を前へ、『都市の方』へ、むけた。












次の瞬間、
















「あれ?なんだ?あの女?矢で処分しなかったっけ?」


「本当だ。


・・・ん?なんかこっちに手を向けてないか?」





兵士がそう言うのを最後に・・・



・・・都市は『植物』に包まれた。





壁の上は地獄だった。





あるものは突如生まれた薔薇の棘に引き裂かれ、


あるものは突如生まれた巨大な食虫植物に噛み砕かれ、


あるものは突如生まれた花の毒で腐り果て、


あるものは突如生まれた寄生植物に栄養を取られ、カラカラになった。



同僚が『植物』に蹂躙されているのを目撃した兵士達は、一目散に壁の内側へ避難しようとし、






壁の中での『蹂躙』を見て、膝から崩れ落ちた。





壁の中も地獄だった。





ありとあらゆる『幸せ』を、殲滅せんとする悲劇が、溢れんばかりに生まれていた。





あるものはオアシスから水を汲む最中だった。




水面に生まれたグロテスクな袋のような植物に頭から飲まれ、中から悲鳴が聞こえ、やがて消える。





国の中央、領主の館には、見たことのない巨大な木が君臨しており、真っ赤な花びらを散らしている。




根は都市中に伸びて行き、捕まったものは血を吸い取られ、抜け殻となり、朽ちてゆく。




その血で染まったのであろうか?




知るものがみれば、『桜』と形容するであろうその大木は、



しかして『桜色』とは程遠い『真紅』の花びらを都市中にばら撒き、



その花びらに触れたものは『麻痺』して、動けなくなり、なす術なく木の根に血を吸われる。



父親が捕まったのを見て助けようとする子供も捕まり、それを助けようと石斧を持った母が駆けつけるが、石斧は根に叩きつけられ、『粉々に砕け散り』、母親がそれに続く。







桜の根は、住民の殆どを『吸い付くし』、やがて、新たな水を求めて地面に根を突き刺す。







一本、また一本と、槍のように、





・・・先程少女の身体を刺した矢のように、





『かつて少女の血を美味そうに吸った大地』へと、攻撃を始める。





地割れが起こり、されど、根は止まらず、



地震が起こり、されど、根は止まらず、



かつて大地が人々から奪い続けた水を、奪い返さんとする根は、



地の底の底の底まで進み、遂に、膨大な地下水脈に辿り着く。




根は、数倍に膨れ上がるほど、水を吸い込み、幹へと送る。





同時に、『砂漠世界』各地では、『原因不明の地震と地盤沈下』によって様々な民族が恐怖に震えていた。中には巻き込まれ、滅ぶ民族も居た。



幸いか、あるいは、不幸にか、翠蓮のもといた民族は犠牲者が数人で済んだ。




創造主の怨念を体現したかのような『大桜樹』は、『砂漠世界』中の地下水を吸い上げ、





『世界中の大地の標高を数メートル程下げ』た後に、




『空に向かって巨大な玉を、吸い上げた水と共に打ち上げた』








『その玉は上空数百メートル地点で破裂し』








『数万種類の種を砂漠世界中にばら撒き、』






『数ヶ月ぶりの雨を、、、あるいは、『砂漠世界が誕生して以来、初めてと言っても良いほどの大雨』を引き起こし』







『砂漠世界中の砂漠を、森林に変えた』









ここまで、約1時間。















この惨劇を、悲劇を、復讐劇を、あるいは喜劇を、創造劇を、眺めていた黒いコートの男は、この世界の名前を『砂漠世界』から変更する事に決めた。









      『森林世界(フォレスト)』 と。







    後の、『極彩色の森林世界(カラード・フォレスト)』である。


この世界の悲劇はまだまだ止まらない。

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