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異世界でレースしてみない?  作者: 猫柾
第三章 ラ・スルスでの歩み
31/140

29.風呂で反省会

 





 *






「お、もう結果出てるのか」


 教室に入ろうとした俺は、廊下に掲示されている順位表を見つけた。

 もちろんウラクとフィーノもいっしょだ。


「どれどれ?」




 2位 レイナーデ・ウィロー 1'15.387


 2位かよ……。

 15秒3か。

 だが、まだまだ詰めが甘いことは自分でも分かっている。




 5位 ウラク・ダラーレ 1'16.103


「うっそだろ、5位か」


 ウラクが自分の順位を見つけて嘆いた。


「走りを見てて思ったけど、なんかお前突っ込みすぎなんだよな。もうちょっと余裕もってコーナー入った方がいいんじゃない?」


「ムカつくけど反論できねえ……」




 6位 フィーノ・コルサ 1'16.196


「うわ、僕の走りそんなにダメだった?」


 フィーノも同じく。


「フィーノはもっとブレーキ遅らせてもいいと思う。距離が余っちゃってるから」


「なるほど」




 とアドバイスしている俺だが、2位。

 1位は誰だ?




 1位 レグナ・スウェイ 1'14.840


 レグナ……細身のあいつか。

 無口で近寄りがたい雰囲気だから今まではあまり会話をしたことがなかったが、こんなに速かったとは。


 俺よりコンマ5以上も速い。


 俺の走りはまだまだ未熟とはいえ、相当攻めなければこのタイムは出ないはずだ。

 それをあの1回きりのタイムアタックで……?


 悔しいが、負けたのは仕方がない。

 次は絶対に勝たないと。


「なあレイ、次のテストっていつだっけ?」


「早くても夏休み明けだろうな」


「くっそ……今すぐにでもお前にリベンジしたい」


「シミュレーターでならいつでも受けて立つ」


「レイ、ウラク、授業始まるし席に座ろう。僕まで怒られても困る」


 俺は宣戦布告したまま自席についた。




「おはよう、みんな。もう廊下に貼ってある結果は見ましたか?」


 先生が入ってきた。


「全員が良い走りを見せてくれました。せっかくだし、トップ3は前に出てきてください!」


 うわ、なんか恥ずかしいな。

 俺とレグナと3位のリカールは、席を立って前に並んだ。


「素晴らしいタイムを出した3人に、拍手!」


 パチパチパチと生徒から拍手、歓声が湧く。

 それを聞いて俺は思わず笑顔になるが、隣に立っているレグナの表情は浮かなかった。


「レイナーデ、いい走りだったよ。おめでとう。次は俺が勝つからね」


 リカールが俺に声をかけた。


「ありがとう、リカール。覚悟しておくよ」


 俺も、隣のレグナに声をかける。


「1位おめでとう、レグナ。速かったな、俺の完敗だよ」


「……ありがとう」


 鬱陶しそうに返事を返された。


「それでは、模範走行のデモムービーを見ていきましょう」


 サリーン先生はそういうと、映像を流し始めた。






 *






「あぁー、いい湯だな」


「にしてもレイに負けたのは納得いかねえな……」


「もうその話はいいよ、聞き飽きた」


 風呂に入ってるときは愚痴しか言わないな、ウラク。


「そういえば、そろそろ夏休みだな。二人はなんか予定あるか?」


「俺はバイトかな」


「ああ、レイはバイトしてるんだっけか。ガレージで働くとか羨ましいぜ」


「結構作業はキツイけどね。フィーノは予定ある?」


「僕は家族旅行でアマレイクに行くよ」


「いいな、海外旅行か」


「向こうで速い車見つけたら写真撮ってこいよ」


「わかってるって」


 いつも週末にしか働けないから、夏休みぐらいはおっちゃんの力になれそうだ。


「僕はそろそろ出るよ」


「おう。俺らはもうちょっと長風呂してくぜ」


「りょーかい」


 フィーノが風呂から上がり、俺とウラクだけになった。




「なあ、ところで」


「ん、何だ? レイ」


「風呂でレグナを見かけたことある?」


「……いや、ないな」


「やっぱりないか。風呂でならゆっくり話せると思ったんだけどな」


「もしかしてお前、負けたの根に持ってんのか?」


 俺に対して負けたことを認めないお前が言うな。


「違うよ」


「まあ、俺も話したいのは分かるぜ。14秒台を出したのはレグナだけだしな」


 俺とコンマ5の大差をつけて1位になったのだから、走りについて聞きたいことは色々とある。


「でもあいつのことだし、一人で風呂に入れる時間狙って入ってんじゃないのか?」


「あー、ありそう」


 寮の風呂は基本的に、その日の授業が終わってから翌日の授業が始まるまでは自由に入っていいとされている。

 だから一人でゆっくり湯船に浸かりたいと思えば、混み合わない時間帯に入ることができる。




「ふぁー、眠い。風呂あがったらさっさと寝よ」


「俺も」




 次のテストは負けないからな、レグナ……。












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