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異世界でレースしてみない?  作者: 猫柾
第二章 異なる世界で学ぶこと
13/140

12.違う言葉と違う車

 



 *




 ――あの握手から4年。




「「いってきます」」


「いってらっしゃい。気を付けてね」


 下級校5年生、つまり最高学年の俺は2つ下の弟とともに家を出た。


「ちょっと寝坊したから急がないとな」


「兄ちゃんわがまますぎる……僕だけ先に学校行っててもいいじゃん」


「文句言うなって。明日は早起きするよ」


 ちょっと前まであんなに可愛かった弟はいつのまにやら大きく成長し、少し生意気になっていた。




「ふぅ、間に合った。じゃあな」


「帰りは先に帰ってるよ」


「わかった」




 玄関で弟と別れた俺は、5年生の教室に向かった。

 教室のドアを開けるのと同時に、ウラクが俺に気付く。


「お、レイおはよう」


「おはよー」


「そろそろ受験勉強の時期だよな」


「もうそんな時期かー」


「そういえばレイはどこ受験する予定なんだ?」


「わかってるくせに。ラ・スルス自動車上級校」


「やっぱお前もラ・スルスか」


「え、ウラクも?」


「当たり前だ。車好きなら受験しない手はないだろ」


「でもあそこめっちゃ倍率高いらしいよ」


「俺も噂には聞いたが――」




 ウラクと俺は、4年の時を経て大親友になっていた。

 それ以外の友達はいなかったが、俺たちにとってはお互いがいればそれで充分だった。

 そんな俺たちも、今年で5年生。

 あと1年も経たずして離れ離れになり、それぞれの道を歩み始めると思っていた。

 だがウラクもレーシングドライバーを目指しているらしく、俺と同じ志望校を目指すと聞いた。


 その志望校というのが、ラ・スルス自動車上級校だ。


 下級校を卒業した子供は上級校に通うこととなるが、その上級校は受験が前提となる。

 そして、各々が選んだ上級校で学びたいことだけを学べるというシステムだ。


 その中でも車に関する知識を専門的に勉強できるのが、自動車上級校。

 ラ・スルスはその自動車上級校のなかでもトップクラスに位置する超エリート校だ。


 前世にもこんな高校があれば、中卒の烙印は免れたのに……。




「――のつもりだ。ん、レイ、そろそろ1時間目始まるぜ」


「あ、ほんとだ。準備しないと」


 俺は急いで学習用具を取り出す。


 1時間目は言語学の授業だ。

 教科書やらを机の上に並べ終わるのとほぼ同時に、若い男の先生が教室に入ってきた。

 この世界は下級校からすでに教科担任制。つまりはこの先生が言語学の先生だ。




 この世界で使われている言語は、一言で言えば日本語だ。

 もちろん日本なんて国は存在しないことは言うまでもないが、日本語とほぼ同じ言語がここの公用語らしい。

 まあ、この世界に住む人間からすれば、慣れ親しんだ言語がどっかの異世界のどっかの島国で母語として使われているなんて夢にも思っていないだろうけど。


 過去に『異世界でも言語などは共通の場合がある』と誰かから聞いたような覚えがあるが、この世界でもう一度学びなおした際にそれを思い出した。


 さらにこの世界では、世界各国で言語が統一されているらしい。

 どこに行っても日本語が通じるというのは、さすがに俺にとって都合が良すぎる話だと思うが。


 昔は言語がバラバラだったらしいが、歴史は詳しくないので何があったのかいまいちわからない。


 日本語改め異世界語(仮)は言語としては難しい部類に入るので人工言語ではないと思うが、すると過去にこの言語を公用語としていた国が他の国々を植民地化でもしたのだろうか?




 話を戻すと、1時間目は言語学の授業だ。

 前世でいうと国語と同じようなものだから、特に難しくもない。


 俺はプリントをかなり早く解き終わり、空き時間は自由だったので読書をすることにした。

 口語だけじゃなく文字も日本語なので助かった。

 読むのはもちろん車の本だ。


 この世界の車は元いた世界の車と比べて特に異なる部分は見当たらない。

 俺が高校に行かず引きこもって蓄えた知識がそのまま使えるので安心した。

 だが、これだけはどうしようもない点がひとつある。


 車そのものが、違うのだ。


 この世界には日産もトヨタもフェラーリもないから、車種を一から覚えなおさないといけない。

 前世じゃエンジン音や内装からでも車種や年式を特定できただけに、結構悔しかった。

 その気持ちをバネにして俺は、下級校卒業までにこの世界の車を8割覚えるという目標を立てた。


 結論から言うと、その目標は卒業まで1年以上を残す去年の冬あたりに達成した。

 さすがにエンジン音から特定できるかと言われれば話は違うが、外装を一目見れば年式までは区別できるようになった。

 ウラクは俺と出会った時点でそのレベルだったらしいが。




 授業が終わったので、気晴らしに今日の給食を確認しに行った。

 えっと、今日はサンドイッチか。


 たまには和食も食べたいが、この世界にいる以上は自分で作るしかないだろう。

 まだ上級校へ進学する前に、料理の練習でもしてみようかな。



 そんなことを考えながら、休み時間を過ごしていた。





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