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緋色の領域  作者: 斉木 元宣
1/1

笑われて行こうぜ

「お笑いの交通安全、ゆとりシグナル」

♪出囃子♪

「どぅも〜」

「どぅも〜」

(直立する阿賀井の下で斉木が左膝をついてしゃがむ)

「歩けのコットン斉木」

「止まれのロッキー阿賀井です」

「よろしくお願いします!」

「よろしくお願いします!」

「同級生コンビでやってましてね」

「そうなんですよ」

「相方のコットンはですね。出身がカナダのバンクーバーなんです」

「違う、キャナダのヴァンクーヴァー」

「発音の問題かい」

「僕は(真剣なボクシングの動き)、テニスをやってましてね」

「どう見ても、ボクシングの動きやんけ」

・・・・・

「もぅ、いいよ!」

「どぅも、ありがとうございました!!」

拍手を背に捌ける二人。

先輩のピン芸人、チャンス高橋

「お疲れさん」

「あっ!お疲れ様でした」

「お疲れ様でした」

「高橋さん、今日」

「いいや、様子を見に来ただけ」

「そうですか」

「ちょっと、二人に話があってな」

「何ですか?」

「何ですか?」

「この後は?」

「あったっけ?」

「無かったと思う」

-ビルの一室にて-

「えっ!マジですか?!」

「声がデカい」

「す、すいません」

「芸人、辞めるんスカ!!」

「落ちて来たしな」

「憧れでしたのに」

「悪いな」

「辞めて何するんスカ?」

「今日、来たのはな。実は阿賀井、お前に話があってな」

「自分に?」

「お前、元ボクサーやって?」

「相方はもぅ辞めたんです!!」

斉木が珍しく声を上げた。

「そぅ声を荒げるな」

「………」

「無理にとは言わん。俺もこの道の端くれ、いつ下がるか分からん」

「斉木」

「何?」

「前、言ってたよな。芸人も副業をしている時代、一本道で走り切るのは相当な大物が出来る事。負け犬や邪道とは言わないが選択肢は増やした方が良いって」

「言ったが…」

「高橋さん」

「何だ?」

「内容によります」

「あぁ。お前らはまだ、芸歴約十年目」

「はい」

「先はまだまだ分からないが時間はある。頭の片隅にも置いといてくれ」

「分かりました」

プルルプルル

「あっ、すまん。はい!もしもし」

高橋さんは部屋を抜けた。

少し沈黙が有り、先に阿賀井が話を切り出した。

「斉木、俺やってみようと思う」

「・・・」

阿賀井は斉木の方を向き頭を下げる。

「お前が一度誘ってくれた副業の話、あの時はバカなと思ったけど、今になって分かる。俺、ボクシングが好きだ」

「・・・」

「先輩からのこんなチャンス二度と無いし、お前の気持ちも痛いほど分かる。今は俺達にとって登りの途中だ。だけど、名前を知ってもらうという事も含めて良いチャンスじゃないか?」

「漫才やコントはどうすんだ?」

「一旦、休みだ」

「・・・・・考えさせてくれ」

「勿論」

斉木はネタを作り続けたが、阿賀井があまりに腕が下がって来た。

-魚庭高等学校近くの浜田ボクシングジムにて-

ガラガラガラ

「よぅ!」

「多花見!何で此処に?」

「お前に会いたくてな」

「芸人になったんだってな」

「丁度良い、やるか?」

シュッシュッ、シュッシュッ、シュッシュッ

「おい!!」

「あぁ?」

パチン!

阿賀井は顔面をくらった。

「迷いが見えるぞ!」

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