第六話 ネスティスさんとの決闘 後編
大変お待たせいただきました諸事情のため執筆ができませんでした。
ネスティスさんを中心として紅蓮の炎が燃え上がっている。その炎は一瞬にしてドレスと化した。
まるで本物のドレスだ...いや本物のドレスに変わったのかそれも聖具として。
よく見るとネスティスさんがぼんやりと揺れて見える。
ネスティスさんの周囲が高温になっていて陽炎が出ているようだ。
「おお、それがネスティスさんの本気ですか?とてつもない熱気ですね。」
「そりゃそうさ、見た目はただの布でできたドレスだけど実際は燃えてるからね。アタシ以外が下手に触るとドレスに焼かれちゃうよっと」
ネスティスさんはそう言い切るとマシンガンのように魔弾を打ってきた。
僕は難なく魔弾をかわすが何かがおかしい。
魔法発動自体にクールダウンというものはないけど、発動時には必ず魔法陣を展開しないといけない。そもそも魔法陣は数学で言う公式なんだ。そしてその公式で導き出した答えが、発動される魔法になる。だから公式なしでの答えの確立はあり得ない。
「どうしたんだい?回避ばっかじゃ全然楽しくないじゃないか。こないならどんどん上げていくよ!」
ネスティスさんの行動にブーストがかかり魔法と剣術を使い合わせてきた。
「やばい、見切れてもここまで多いいと捌ききれない。ってアッツ」
炎をまとった剣が頬をかすった。
熱い、てかめっちゃ痛い。
「顕現せよ火炎竜」
「うわっと!」
いきなりの上級魔法。ネスティスさんめっちゃ本気だ。
...ってあれ?今魔法陣展開してた?てことはどういうことだ?
あれがあーなって、あーだから。絶対に......そうか、そういうことか。
よく思い返してみたら簡単に出る答えだった。
「聖剣妲己と炎剣の合わせ技ですね。」
「なに、私の魔法のトリックに気が付いただと⁉」
「はい、聖剣妲己の特殊効果の魔法複製と炎剣の効果の魔法付与を使っていたんですね。魔法陣が出ないと思っていたら聖剣がその代わりをしていたんですね。」
と僕は回避しながら説明したら、ネスティスさんは魔法を打つのをやめた。
「あたりだよ。なんでわかっただけ教えてくれないかい?」
「ヒントはネスティスさんが途中に挿んで打ってきた上級魔法火炎竜からもらいました。」
「火炎竜から?」
「はい。」
僕は頷き説明をした。
★
「そ、それでは改めましてバトルスタート‼」
僕の説明のおかげでバトルが止まってしまったので再スタートのゴングが鳴らされた。
ネスティスさんは初めから本気だ。僕も初めからフルスロットルで戦うことにしよう。
「では先手を打たせてもらうよ!顕現せよ炎帝」
バカでかい魔法陣がネスティスさんの上空に現れた。
「おーーーっと、ネスティス様いきなりの上級魔法だー!チャレンジャー蓮治いきなりのピンチかー?」
翻訳したところ火炎竜の上位互換だ。
今まで使ってた普通の剣だとどうしようもないな。百鬼夜行の魔法消滅を使って対応する手もあるけど翻訳魔法の力を試してみるとしますか。
「ネスティスさん、その魔法借ります。」
「え?」
「魔法陣翻訳」
「おっとチャレンジャー蓮治見たことも聞いたこともない魔法を使うようだー!」
『翻訳完了タイムロスをもたらすデータが何件かヒットしました。』
翻訳した脳内に直接メッセージが聞こえてきた。
魔法発動に不必要なものがあるのか。こいつらを消して性能を上げるためにプログラムを再構築しよう。
魔法陣をいじるのってパソコンでプログラムを書くのに似てるな、これなら簡単にできそうだ。
『プログラム再構築が完了しました。新プログラム消失防止のためスキル全知全能に保存します』
それじゃあさっそく...ってヤバイ、ネイティスさん発動し終わってる。
「け、顕現せ......っておいちょ、ヤバイ」
ドーーーーーーーン
詠唱が終わる前に魔法が発動されてしまった。翻訳魔法で作り替えた魔法は無詠唱で発動されるのか。しかも威力減無しとか強すぎだよ。
「ま、まじか。アタシの炎帝が打ち消された。しかも無詠唱魔法に。」
「おーーっとチャレンジャー蓮治、ネスティス様の魔法を相殺させた―!しかしどんな手を使ったのか全く分かりません。」
僕自身もまったくもって意味が分かりませーん‼
だけど無造作に翻訳魔法で構築しなおした魔法を使わないほうがいいことはわかった。
こうなったら百鬼夜行だけを使ったほうがいいな。戦闘用の魔法まだそんなに使えないし。
「それじゃあ、顕現せよ血を啜り肉を喰らう神の刀よ〖百鬼夜行〗」
すると落雷と同時に僕の目の前に紅い雷を帯びた百鬼夜行が現れた。
僕は百鬼夜行を手に取り自分なりに構える。やっぱりこいつのほうがしっくりくる気がする。
「魔法が使えないようなので、こいつでいきます。」
「おおっとあれは何だー⁉落雷とともに血のような色の刀身の剣が現れたぞ。チャレンジャー蓮治一体何をしたのでしょうか。」
こいつのスキルを試してみるか。
僕は百鬼夜行に自分の魔力を注ぎ込む。意識を集中させるとスキルの使用方法が頭の中に浮かび上がってきた、それと同時に体の自由が奪われるような感覚が襲ってきた。
僕の体は勝手に動き自分の胸に赤黒い刀身を刺していた。そしてものすごい激痛とともに脳内に直接声が聞こえる。翻訳魔法のアナウンスとは違う種類の声だ。
『契約完了。我が力を存分に使うがよい』
僕の中の何かが壊れた......
「おおっと。チャレンジャー蓮治自分に剣を指した何をする気なのでしょうか?」
「神に創造されしその力を主のために開放せよ...百鬼顕現」
詠唱とともに百鬼夜からドス黒い霧が出てきた。その霧を見て気づいたのか何人かの観客が顔を青色に染めている。
★
「どこかで見たことあると思っていたが今はっきりしたぞ。あの剣は神具だ。やばいぞ。」
「神具?歴代の勇者様たちが覚醒すると天から授けられるっていう伝説の武器だろ?」
「そうだ。だが神具は聖具の倍以上の破壊力があり能力がある。そして神具は書いて字のごとく神が造りし武器だ。」
「それがどうしたんだ?」
「まだわかんねえのか?この世界に神は何人いる?そしてどんな神がいる?神具は造る神によってランクがあるんだ。そのランクの最上位が最高神が造ったといわれる神具なんだが、いまだに最高神の神具を授けられた者はいない。」
「え、じゃああれがその最高神が造った神具だっていうのか?」
「まあ、正解でもあるが間違いでもある。お前最高神と同等の力を持った神がいるの知ってるよな?」
「ああ、異神だろ?最高神と対になるって言われてるあの。」
「そうだ、これでもうわかっただろ?最高神が造った神具は聖なる力を宿す。反対に異神が造った神具は邪悪な力を宿す。そして異神の神具にはⅣシリーズある。あの神具は異神の神具のシリーズの中で禁忌物とされているシリーズ血鬼神の一打ち。破滅の悪魔の力を宿した【百鬼夜行】だ。多分今日この国滅びるぞ。」
★
一人の男を中心に観客が騒ぎ始めた。それもそのはずあの黒い霧から鬼が現れたのだから驚かないほうが逆におかしい。
「れ、蓮治、アンタの後ろにいるそいつは何だい?女の子のように見えるんだけど。」
あのネスティスさんが若干後退の姿勢をとっている。観客たちはまだ青ざめている。この娘がそんなに恐ろしいのだろうか?こんなに可愛いのに。
「この娘ですか?僕の可愛い眷属ですよ。」
「か、可愛い眷属?」
「はい...それじゃあネスティスさん死ぬ気で受け止めてくださいね...」
「ッ⁉」
また一つ僕の中の何かが壊れた。
「姫...滅ぼせ......」
「はい♡蓮治様♡あなたの仰せのままに♡」
姫は百鬼夜行に似た刀を持っていてそれを横に振った。
「...何も起きていない?」
観客席にいた一人の男がそうつぶやいた。
僕はつい笑ってしまいそうになった。なんて馬鹿な人間なのだろうと。
「いや、よく見てみろネスティスさんの剣が折れている。」
「なんだって?あの聖剣がか⁉」
「それだけじゃない...南の山は...どこに消えた?」
「「「......」」」
大勢の観客は静まるしかなかった。
しかし、強烈な攻撃を喰らったネスティスさん本人は笑いながら立っていた。気が狂ったわけではない、強者としての笑い声だった。
「勝負ありだね、蓮治。」
「はい?...何を言ってる...?」
僕は膝をついた。
「蓮治様⁉」
急に視界がぼやけてきて、すごい吐き気と頭痛が襲ってくる。苦しい、痛い、辛い、息ができない。
姫が心配そうに僕の手を握ってくれている......
あれ...この娘...誰だっけ?
「ッかは...ハーーーハーーーハーーー、これは、不完全燃焼による一酸化炭素か...」
「一酸化炭素が何のことかは知らないけど、黒い霧が出てきた時点で嫌な予感がしたからね。仕込ませてもらったよ。」
今気づいたが、ネスティスさんのバトルドレスが本物の炎のように燃え上がっていた。
「そのバトルドレス、活用性高すぎ...ですよ...」
僕の意識はそこで途切れた......
僕は............負けた。
★
ここは三人の姉妹が泊まっている宿屋。何ら慌てている様子。
「わーーーー‼蓮治君が大変だよ!早く行こう。」
「李桜さん、行きたいのはやまやまですけど。あの後蓮治さんがどこに連れていかれたかわかりませんよ?」
「あーー、そうだったー...」
「二人とも~そのことについては~、大丈夫~。すでに係りの人に聞いてるよ~」
「ナイスだよ!愛美姉。それでどこにいるの?」
「この街のギルドの医務室にいるらしいよ~」
「この街のギルドですか。すぐそこですね。急いでいきましょう。って李桜さんもういませんね。」
「あの子蓮ちゃんのことになるといつもおかしいの~」
「李桜さんに関わらず私も愛美同じですよ。」
そんな話をしながら二人は先に走っていった李桜を追いかけるように走っていった。
最高神と対になる神を邪神や破壊神にしなかったのには理由があります。
異神という字で気づく人はいるかもしれませんがこの神については後々説明が入ると思います。
お読みいただきありがとうございます。
ブックマーク、評価をしていただければ私の指が元気になりそうです。