発覚した罪。
「き・・キイチさん、重いです。ぜぇ、ぜぇ。」
玄関まで引き摺るようにして袋を運ぶと、膝に手をついて息を整える。
「・・・軟弱だな。おまえ。」
ひ、ヒドイ。皆があなたみたいにムキムキな訳じゃあ、ないんですよ!!
僕がぜぇぜぇしていると、パタパタとひとつの足音が聴こえてきた。
僕とキイチさんが、視線を遣るとサブオーナーが走り寄って来るのが見える。
ああ、ぼら、キイチさん。こんな生ゴミ持って来たから、怒られちゃいますよぉ。
オロオロとする僕を尻目に、しれっとした顔のキイチさん。
そんな二人の目の前まで来ると、サブオーナーは袋に視線を落として言った。
「な、なんですか?それは。」
眉間に皺を寄せて困った顔のサブオーナーが、慌てて袋に手を伸ばしてくるとその腕をキイチさんが掴んで、口を開く。
「グレープフルーツ。」
ぼそりと言うと、サブオーナーの顔色がサーっと更に青くなるのが判った。
「・・・・・。」
「ナリンジン。ジヒドロピリジン系高血圧症薬。暖房の利いた部屋。・・・・。」
キイチさん?なんですか?ナリ・・ナリ、なんとかって?
更にキイチさんは続ける。
「土地開発。」
ギクリ。
「あの一人客の男性、あんた顔見知りだな?」
狼狽えるサブオーナー。
なんですか?この展開。
「な、なにおっしゃってるんですか。あ、あのお客様は、初めてお見え・・」
被せるようにキイチさんが口を開く。
「これが昨夜に貴方がたの密談してる姿を目撃してるんだよ。」
これ。と僕を顎で示すキイチさん。
キイチさん、僕は”これ”じゃあないんです。”か・な・め”ですよ!!
そんな事はどうでもいいサブオーナーは、目を見開いて僕を睨むように凝視する。
怖いです。目が。真面目に怖いですから、僕を見ないでください。
「まさか!そんなはずは・・・」
途中まで出かかった言葉を止めて、はっとしたように両手で自分の口元を覆い視線を下げた。
そんなサブオーナーの様子をじっと観察しいたキイチさんは、唇に当てていた右手の人差し指を離す。
「ああ、やっぱりか。サービスのワイン。」
と、言いながら、さっき拾ってきたワインの瓶を掲げて見せる。
軽く揺らしたそれを細目で見ながら、呟くように言った。
「出るだろうな、調べれば。睡眠薬の成分が。」
え?ええええええええ?睡眠薬ですか!?!?
僕は、吃驚してアニメのように両手を顔の横で思い切り開いてしまった。
ああ、キイチさん。視線が氷の刃のように僕に突き刺さります。
「それから・・・」
キイチさんは、続ける。
「昨夜の夕食にグループフルーツの果汁でも入れたんだろう。ディナーがウリの割には、味が濃かったな。それに、香草も多かった。」
あ、皆さん、水をガバガバと飲んでましたね。
「その後で、薬を飲むよう促した。・・・わざと激昂させた。開発反対派だったオーナーと推進派のあんた、対立していた・・・それが動機か?
あんたは、買収されたんだな。
あの男は、建設会社の人間だ。」
「え。なんで判るんですか?」
断言するキイチさんに、僕が尋ね。
「さっき観てた番組で、あの男がいただろ。建設会社側の奥の方に。」
え。顔なんて覚えてないですよ。サブオーナーは、視線をさまよわせていた。




