発覚した昨夜の人物。
現在、八時になったばかり。
「き、キイチさん。」
僕は、もう駄目です。限界です・・・。
「お・・・お腹空きました。」
の、言葉とともに、ぎゅるるるる・・・とお腹も主張する。
あ、またです。また冷たい目です!!
コンコン。
悲しんでいた僕の耳に、ドアをノックする音が聞こえて来た。
僕は立ちあがって、扉を開けると立っていた人物に応える。
「はい。なんでしょう?」
扉の前にいた人物、サブオーナーが口を開いた。
「こんな時ですが、朝食の準備が出来ました。警察もお医者様もまだ見えませんので、どうぞ食堂までいらして下さい。」
ぱああああ。
救世主です!!僕のお腹の救世主が現れました。
「キイチさん!!行きましょう!!」
僕は、キイチさんの腕を引っ張って、食堂へと階段を下りた。
「はいはい。よかったな。カナメ。」
食堂に行くと、既に皆さんが揃っていたようで、僕らのテーブルの他二つにそれぞれ着席していた。
若いカップルは、僕たちに気が付くとぺこりとお辞儀をし、食事を再開する。
もう一つのテーブルは、男が一人で座っている。
僕は、目を見開いた。
ツンツンとキイチさんの袖を引っ張ると、小声で伝える。
「あの人。あの人ですよ。」
「なにが?」
キイチさんは、身を屈めて僕の高さに合わせてくれた。
・・・どうせ僕は、小さいですよ。
「昨夜、サブオーナーといた人。」
そう僕が言うと、キイチさんは男をマジマジと見た。
ちょ、ちょっとキイチさん!!失礼ですよ。
あ、ほら、気が付いて不快そうな顔してるじゃないですか!!
と、思っている間に、キイチさんは男に近づいて話しかけていた。
「アナタは、泊り客ですか?」
あんだ、お前?みたいな顔で不快を表していたが、ちゃんと答えてくれた。
「そうだ。」
「お一人で?」
「そうだが、問題でも?」
淡々と質問し、淡々と答える。
「いいえ。ここへは、何度も?」
「いや、はじめてだ。」
「ご趣味で?」
「男一人で秘湯に来た。悪いか?」
あああああ、ますます不穏な雰囲気です。
と、そこへお腹の救世主・・いや、サブオーナーが現れて間に入った。
「どうかなさいましたか?」
二人に向けて、サブオーナーが問う。
「なんだ。この不愉快な男は。」
と、キイチさんを指さしてご立腹。
対して、キイチさん。
「いやあ、ただのご挨拶ですよ。」
ご挨拶って、質問攻めだったじゃないですか。
あーあ、怒って食堂を出て行っちゃいましたよ。あの人。
「ところで、あの男性とはお知り合いで?」
急にサブオーナーに質問を振る。
「・・・いいえ。初めてお見えになったお客様です。それがなにか?」
いや、と軽く頭を振ってキイチさんは、テーブルに着いてしまう。
「す・・すすすいません。ごめんなさい。勝手な人なんです。」
代わりに謝る僕。
サブオーナーは、お気になさらずと笑ってくれた。
ああ、サブオーナーさんいい人で良かったです。




