起きないオーナー。
飛び込んできた声に、キイチさんは素早く反応して、階下へ向かった。
僕も慌てて、その背を追う。
階下に行くと、スタッフルームに飛び込むキイチさんの姿が見えた。
「どうしました?」
僕がスタッフルームの扉から顔を覗かせると、キイチさんがその奥に二つある扉の一つを開いて中へ声を掛けていた。
「あ・・・中野、オーナーが・・。」
サブオーナーの震える指先が、示したのは部屋の左側のベッド。
ベッドの上には・・・青白い顔で静かに寝ているオーナーが横たわっていた。
ん?どうしたんでしょうか?
「声を掛けても起きないんで、触れてみたら・・・・冷たいんです。身体が。」
と、声を震わせて説明してくれた。今にも倒れそうに、顔が蒼白になっている。
「失礼。」
そう言うと、キイチさんはベッドの上のオーナーの首に手を当てて、脈を確認した。
「・・・亡くなっているようですね。」
それから、遺体のシャツを捲って、背中を覗きこむ。
「大分、死斑が出てる。・・・・完全に硬直してるな・・・。」
それから、ブツブツと小声で、部屋の温度にも依るが・・・。
「死後十二時間は、経ってるか。」
僕は、壁に掛けてあった時計を確認する。
現在、午前七時十二分。
つまり、午前零時頃には亡くなっていたと・・・。
・・・・あ、僕が、階段にいた頃には既に亡くなっていたって事ですか!?
それから、キイチさんはサブオーナーに向き直り、質問を投げかける。
「オーナーの病歴は?」
「ええ。ええと、高血圧で・・。常に高血圧症の薬を飲んでいたと思います。」
ああ、昨日も怒鳴ってましたね。
「血圧上がり過ぎちゃったんですかね?」
キイチさんは、部屋中を見回してから僕が言った言葉に反応した。
・・・スルーされませんでした。
「いや、テーブルに水と薬の包装があるからな、血圧は寧ろ下がっただろうな。」
と。
僕もテーブルの上に視線を遣る。
水を常備しているのか、半分くらい水の入った水差しと、一センチ程度水が残ったコップ。
それに、高血圧症(そう言っていたので)の薬の包装(市販薬みたいな、プチプチ押し出すやつ)が置いてあった。
「・・・この頃、自室に籠るのが多くなってたから・・・体調が思わしくなかった・・・のか。」
サブオーナーは、オーナーを悲壮な顔で眺める。
怒鳴られてたけど、本当は仲良かったんですかね・・・。
なんか、悲しそうです・・・。ぐすん。
「病院と警察に連絡してきます。」
そういうと、オーナーの部屋を出た。
キイチさんは、右手の人差指を曲げて唇に当てて部屋の中に視線を走らせていた。
今回は、出番ないですね。僕たち。




