おしとやかに見えて実は
「・・・汚い手でべたべた触るな!!」
言い終わると同時に、美菜が20㌢以上も背の高い男を、軽々背負い投げで投げてしまったのだ。
美菜は、ぱんぱんと手を払い、もう1人、私にしつこかった男を睨む。
男はビクッと体を震わせ、伸びてしまった男を引きずりながら逃げた。
だが渉は、まだ私を羽交締めにしながら、私の後ろに隠れるように下がっていく。
体をひねりながら
「・・・渉何してる
の??美菜ちゃんが怖いの?」
と聞いた。
しかし渉は
「違う違う!!美菜ちゃんの後ろ、後ろ。」
と言いながら指を指すだけ。
私はまた正面を向くと、怒りながら美菜に近づく少年を見た。
美菜の後ろに立ち、がしっと肩をつかむ。
「みーなーっ・・・。」
「亮!?」
少年は、美菜の彼氏=渉の弟の亮君だったのだ。
渉とは逆の印象を与え、スポーツ少年のイメージがあってカッコよかった。
(さぞかしもてるんだろうな・・・髪さらさらなのは一緒だ。)
そんなことを考えながら、亮と美菜を交互に見る。
亮はぶすっとしている。
美菜は美菜で、一生懸命謝っている。
「美菜!!いつも言ってるだろが!!危ないから手を出すなって。相手が伸びただけでよかったものの・・・。」
(・・・亮君の心配って相手!?)
私は思わず突っ込んでしまった。
そして
「それに」
と言って、目線が私に向いた。
正確には渉に。
「・・・兄貴!!仮にもこいつは女なんだから、助けてやれよ。」
「だって、美菜ちゃん手出されるの嫌いだって言ってたし・・・。」
「はい。嫌いです。・・・渉さんの行動は間違ってませんでしたよ☆」
にこにこと、話す美菜。
渉もそれに、笑顔で返した。
亮はこの2人を見て、顔を下にし、ため息をついた。
それから、顔を上げ私を見て
「はじめまして。こいつの彼氏でそっちの弟の亮です。いつも兄がお世話してもらって・・・。」
美菜をこいつと言い、渉をそっちと言う亮に笑った。
「はじめまして。渉の彼女をさせてもらってる、永田 咲生です。こちらこそ、迷惑をかけてるんで、お世話をしてるとは・・・。」
苦笑しながら言った。
「さっちゃん、もう行こう!!」
渉が手を引っ張りながら歩き始める。
「美菜ちゃん。今日は楽しかったよ。また今度遊ぼうね☆それじゃー2人ともまたね。」
言い終えたとき、亮が私を捕まえ、小声で言ってきた。
【兄貴、今まで女の子をあだ名で呼んだことなかったんだよ。それに、家でも甘えないし。】
そして
「咲生ちゃん、ばいばい☆」
と言って、美菜の手を引き行ってしまった。
呆気にとられていた。
「さーっちゃん。」
ボソッと言った渉の声に、ビクッと肩を震わせゆっくり後ろを向く。
目は笑っているが、本当の笑顔ではなかった。
「渉??」
苦笑しながら尋ねる。