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1-2 存在




 一年待たせてすみません

 ひさしぶりの更新なので、自分のためにもざっとおさらい






 パートナー

 この世界の人間が生まれたときに必ず握っている卵から、十二歳になったときに生まれてくるモンスター。

 片方が死んだときにはもう片方も死ぬ、不思議な共生関係にある。


 その関係の一番の妙は、パートナーの力が人間にフィードバックされる点。

 パートナーが犬の人間なら嗅覚に優れたり、巨人なら力が強くなり、スライム型なら傷の治りが異常に早くなったりする。

 この世界に『普通の人間』はいない。


 多種多様なパートナーの中で、格の違う生物がいる。竜だ。

 彼等をパートナーに得た者――竜使いは、それだけで貴族に列せられるほどだ。

 名ではなく、その圧倒的な単純な生物としての力の格の違いで。


 主人公である歩はそんな竜使いの一人。

 それもただの竜ではなく、パートナーの中でもただ一体人語を解することができる、伝説上のインテリジェンスドラゴン。

 特別な竜の中でも特別な、そんなパートナーだった。


 しかし産まれてから五年間で特別な意味が変わった。

産まれたときの姿のまま全く成長しなかったのだ。

 元エリート

それが歩とアーサーが受ける周りからの視線であり、自分達もそう思っていた。


 転機は、高校二年に起こる。

幼竜殺しと呼ばれる、若い竜ばかりを狙った連続殺人鬼に狙われたのだ。


しかし幾多の竜を食べてきた幼竜殺しと対峙した瞬間、それが起こる。

アーサーが巨大な竜へと変身したのだ。

その力はいくつもの竜を食べてきた幼竜殺しにも負けておらず、なんとか撃退することができた。


それは間違いなく特別の枠を越えた奇跡だった。

 だがその奇跡のキーは、アーサーが生まれながらに魂の奥深くに隠れていた『竜に対する殺意』

いわば竜殺しの竜だったのだ。


 その後も歩とアーサーの周りには事件が起こる。

幼竜殺しの一件で友人となった平唯、彼女の家の権力闘争に巻き込まれる形での、悪食蜘蛛事件。

小学六年から中学までの間、一緒に暮らした精霊使い能美みゆきの婚約騒動。


 その二つの騒動で慌ただしく日々を過ごす中、アーサーは一度も竜殺しの竜になることはなかったが、

それはただの痩せ我慢でしかなかったことを、歩は後になって理解する。


 高校卒業後、歩はインテリジェンスドラゴンの、竜殺しの竜の、自分達のルーツを調査することを決めた。





以上が三章まで


四章は





・パートナーの世界には龍と呼ばれる、竜とほとんど同じで、人類を敵視する存在がいること。

・龍の存在を隠匿し、彼等と影ながら戦うのが貴族、竜使いの役目であり、驕りの原因であること。

・平唯は名門である家を継ぎ、戦場に出たことでそれらを知ったこと。



 までです。

 では続きを、よかったらどうぞ。


















 インテリジェンスドラゴン。

 その言葉は自分とアーサーを縛りつけると共に、自分達が何者かをわからなくした。

 特別の中の特別、例外の中の例外、異端の中の異端。

 行きすぎた個性は、常識の中では、社会の中ではうわついた存在でしかない。

 歩とアーサーの存在は世界から無いも同じだったのだ。


 だからこそ、旅の始まりは、その単語にしかなかった。


 だがそれは始まりすら困難だった。

 竜殺しの竜なんて話は伝説上のもの。調べたところで浮ついた空想以外何も出てこなかった。

 そもそもインテリジェンスドラゴンとは何か、とはアーサーが生まれたときからの疑問だ。

 調べても出てこなかったからこそ、自分達は無きものだったのだから。


 だが、公算がなかったわけではなかった。


「私の家には、インテリジェンスドラゴンについての情報があります」


 そう言って珍妙な告白をしてきたのがリーゼロッテ・A・バウスネルン、通称リズ。

 彼女は海向こうと呼ばれる外国から来た、歩のファンですと言う金髪碧眼の同級生。

 バウスネルン家の者になるのなら、その秘密を教えてくれるという家からの指令と、彼女の恋心が入り混じった結果の、不器用すぎる告白だった。


 しかし歩は彼女ではなく、能美みゆきを選んだ。

 結果、リズとその家との関係は切れた。


 はずだった。


「頼む、リズ!!」


 ただひたすらに頭を下げたのだ。



――虫のいい話なのはわかる。だけど頼れるのは、リズしかいないんだ。

――ひどい男だと思う、最低だ。だけど……頼む。


 考えるまでもない話だった。

 これまで欠片も出てこなかったインテリジェンスドラゴンという伝説上の存在。

 現実になりかけたのはただ一度、リズの、バウスネルン家の話の中のみ。


 それも交換条件に使われた薄暗い話で、確かな情報ではなかった。

 だがリズにすがるしか、歩達に選択肢はなかったのだ。


――話してみる。


 リズの返答はそれだけだった。


 しばらくして、封筒が歩達に届いた。

 バウスネルン家からの、招待であった。


「以下の条件でインテリジェンスドラゴンについての情報をお伝えします」


 歩達は飛び付いた。

 意外な条件に戸惑いながら。









――高校卒業後から二ヶ月後

――海向こうの国、ケーニッヒブルグ、バウスネルン家、その練武場脇事務室

――午後十二時五十五分



「そろそろ時間だね」


 リズの声に、わかったと、歩はソファから腰を上げた。

 簡素なデスクセットに木枠だけのロッカー、それと申し訳程度のソファ。

 装飾品は鉢植え一つだけの、なんとも殺風景な事務室だが、砂地の地面に直接置いただけのプレハブ小屋なら、それくらいが丁度いいのかもしれない。

 外に出ると、強い日差しが目に入ってきた。一瞬くらっなって、軽く視界がホワイトアウトした。


「休憩時間長めにとったほうがいいかもね。ドリンクも塩分大目のほうがいいかな」


 歩に続いて外にでてきたリズが言った。

そうだね、手配おねがい、と歩が言うと、任されました、とシンプルに茶目っ気ある答えが返ってきた。


 日差しに目が慣れてくると、だだっぴろい砂地のグラウンドと、そこに整列する二十ほどの人影が見えた。

髪の色や肌の色は様々で、顔立ちもそれにあわせるように様々だが、全員黒の簡素なTシャツと迷彩服のボトムで、姿勢よく立っている。

 そして彼等の隣には、その数倍の背丈と横幅を越える生物がいた。

 竜だ。


 歩とリズはその集団に近付いていくと、途中で大きな声が張りあがった。


「全員、気をつけ!」


 ばっと列に緊張感が宿る。人だけでなく、居並ぶ竜も各々の体型に合わせて背筋を伸ばしている。

 おざなりではなく何かに臨む者たちの空気がそこにできた。


 そして歩はその集団の一番前に進むと、彼等の正面に立った。

 体育の授業を開始する教師のように。


「では訓練を開始します」

「一同、礼」


 目の前の色とりどりの頭がばっと下がった。竜も頷くようにだが礼をする。それこそ授業の礼のように。

 違うのは、気の抜けたおねがいしますがなく彼等の頭が上がることと、そのタイミングは測ったように同じなこと、そしてまるで芸術点を競うように、その動きが機敏な点だ。


「よろしくおねがいします、水城教官殿」


 彼等の視線が歩に集中する。

 誰かに教える立場になったんだ、と実感する瞬間だった。


短いですがこのへんで

明日続きあげます

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