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パートナー ~竜使いと竜殺し~  作者: MK
第三章 貴族からの刺客
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5-1 目覚め










 目覚めてすぐそこが病室だと気づける人間は二種類いる。

不幸な人間か、馬鹿な人間だ。

 そして間違いなく、自分は後者だ。


目覚めてすぐそこが病室だとわかった歩の頭に、そんな言葉がふと浮かんだ。

そしてすぐに、今自分頭悪いんだな、と思った。


ノリが効きすぎて固いベッドシーツの感触に身じろぎしていると、お、と声が聞こえてきた。


「おはよう、馬鹿息子」


 声の主は、パイプ椅子に座ったパンツスーツ姿の母親だった。

 口元をニヒルに歪ませ、すっと足を組んでいる。絵になる母親だ、みゆきやリズとは別の意味で。


「おはよう」

「悪口には悪口で返す。そんなことも忘れた?」

「起きぬけには勘弁して……」


 全く、貧弱な息子なことで、と言いつつも、類はそれ以上言ってこなかった。


「慎一達は――学校か。アーサーは隣で寝てんのか」


 ベッドの隣に置かれた机の上の籠を見て言った。

 籠の中は毛布がかけられており、見えなかったが、その中にアーサーがいるのはなんとなくわかった。


「今日平日だからね。後で来るんじゃない?」

「俺、どの位寝てた?」

「一日ほどね。今回は短かったわね」

「そりゃすんません」


 また仕事休ませてしまった。そう思っての割と素直なすんませんだった。

類はほんとよ、全く、と言うと、それで黙った。

 珍しく口数が少なく、何かあったのかな、と思ったが、目元の濃い隈を見て、ただ疲れているように見えはじめた。

 これまでも濃い隈の姿を見たことはあるが、こうして本当に疲れてそうな素振りを見せるのは初めてだ。


 見た目はアレとはいえ、母親も年をとっているんだな、と思うと同時に、自分の今後のことも気になった。


 これから自分は何をしていくのか。どうなっていくのか。

 そもそも卒業後はどうするのか。大学に行く、とは大雑把に決めているが、それだけ。

 適当に入試を受けて、受かったところに入る。それだけ。

 よくある無気力な学生の思考。

 それでいいのだろうか。


 今更過ぎるが、唐突にそう思った。


「何考えてるの?」


 さすが母親。目ざとい。


「色々。そういう母さんも疲れてんじゃない?」

「こっちも色々あんのよ」

「アーサーもねこけてるしね」

「うちはみんなお疲れモードか」


 確かにそうだ。


「じゃあ私帰るから、後よろしく」

「今日はありがと」

「なんか今日は調子狂うねー」

「全く」


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