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パートナー ~竜使いと竜殺し~  作者: MK
第二章 悪食蜘蛛
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5-1 結末

すみませんめっちゃ短いです







 直の誘導で帰っている道中、聖竜会直属のギルドに出会った。

 たくさんポケットの着いた黒色の強い迷彩服を着た人間が十名ほど、大きな荷物を抱えた巨大な猿型のパートナーが五体、そして大小様々な竜が五体いた。

竜を見た瞬間、アーサーの胸中で炎が舞いあがるのがわかった。

 咄嗟に覗いたアーサーの顔は平然としていたが、確かに竜殺しの竜が刺激されていた。

 幼竜殺しの時の、脳裏を埋め尽くす敵意の感覚は忘れていなかった。


 その反応もこの場で激発してしまいそうではなく、ひとまず置いておき、話を進めた。

彼等の対応は予想に反し、丁寧なものだった。

奢りの無いきちんとした敬語だったし、悪食蜘蛛を倒したことを知ると、素直に驚いて称賛の声を上げた。

奢れる貴族という印象はそこで消えたが、だからといって自分達を始末しようとしている現状を知っている歩達は、慣れ合うことはなかった。

それを知らない慎一や直も、仕事を横取りされた岡田屋のメンバーだ。

好意的な反応をするわけもなく、大人の対応ですませた。


 しかしその間に事件が起こり、終わっていた。

帰りの案内を断っているころになって、綾辻明乃が消えていることに気付いたのだ。

悪食蜘蛛を倒した解放感やそれまで脱力したままだった態度もあり、縛ることもしていなかったことをいまさら後悔したが、後の祭りだった。

当然、目の前の聖竜会を疑ったが、彼等に嘘をついている様子はなく、こんなところではぐれて大丈夫なんですか、と別のところで驚いていた。

聖竜会と別れた後、みんなと話し合ったが皆同じように感じたようだ。

現場には知られていない何かが動いたのだろう、と適当な結論を出したが、一つ確かなことは、逃げられたということだけ。

明乃と共に全ては闇の中へ消えてしまった。




 そして翌日。


「色々あったけどひとまず、依頼達成に、乾杯!」

「乾杯」


 歩の家でグラスがぶつかり合う音が響いた。ささやかな打ち上げの合図だ。

 鋼金虫のときと同じノンアルコールシャンパンで喉を潤し、ふうと息をついた。


「まあ誰も死なずにすんでよかった」

「全くだ」


 慎一もしんみりと返してきた。

 ふと見回しても、被害が目立った。

松葉杖をソファにたてかけた唯と、全身包帯まみれの歩、キヨモリはともかく、慎一とみゆきにも包帯がまかれていた。

歩が気付かなかっただけで、二人とも怪我をしていたようだ。

各種パートナーも同じで、不定形のイレイネ以外は、皆どこか激闘の後を身体に刻んでいる。

 そのせいか、鋼金虫のときと比べて、落ち着いた宴会になっていた。


「はい、歩」

「あ、あんがと」


 みゆきが料理をよそった皿を歩の前に置いてくれた。


「おうおう甲斐甲斐しいねえ。羨ましい嫁だこって」

「誰が嫁だ。腕動かすと痛いの知ってるくせに」


歩は悪食蜘蛛に槍を突く際、かなり深い切り傷を折ってしまった。

あの場を切り抜けるためには必要な代価だったのだが、そのため力を入れるとひどく痛む。

先程乾杯するのにグラスを持ち上げた際も、顔をしかめていた位だ。

 それを知っているため、みゆきは気を配ってくれたのだが、慎一やアーサーはいたわるどころか逆に煽りを入れてくる。


「みゆきも過保護だのう」

「ほんとほんと」

「湿布臭いチビは黙れ。もう一人は――黙って食え」

「俺の扱いひどくない?」


 慎一は流して、アーサーを見た。

 アーサーは見た目いつも通りだが、全身から鼻につく匂いを撒き散らしている。

 激しい運動の結果の筋肉痛で、塗り薬を全身に塗りつけているのだ。

一日経ち、大分ましになったが、朝はひどい匂いを部屋にまきちらしていた。


「酒の味も変わってんじゃないのか? あ、馬鹿舌にはわからんか」

「これも戦士の味よ。それもわからん腑抜けとは情けない」

「戦士は血の匂いはしても湿布の匂いじゃ酒飲まねえよ」


 唯がくすくすと笑った。その反応が妙に目に残った。


「唯、どうした?」

「いや、こうしてられるのって、幸せだねって」

「そうだよなー」


 本当に言われた通り黙って肉を頬張っていた慎一が、相槌を打った。


「本当死にかけたもんなー。岡田屋の経験含めても、あれは最強だった。ほんとよく勝てたよ」

「これも我の」

「筋肉痛のおかげだな」


 アーサーがなんとも言い難い顔をする中、歩は平然とフォークを動かす。

 それを見て唯が再び笑った。やはり違和感があった。


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