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パートナー ~竜使いと竜殺し~  作者: MK
第一章 幼竜殺し
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0-i 幼竜殺し

 アーサーが生まれるずっと前、似た場所にて。








「おめでとう!」

「ありがと」

 ×××は、○○○のパートナーの誕生を祝福した。○○○は全身で喜びを表しており、×××も人ごとながら嬉しく思った。○○○とは同じ施設で暮らしており、友人と家族の間のような関係で、○○○の喜ぶ姿を見ると×××も嬉しくなる。


 今二人が一緒にいるのは、来たことのない病院。誕生日が同じ日だからで、十二歳の儀式を一緒に迎えている。


 それにしても――驚いた。


「竜なんてすごいね」

「へへへへ」


 友人のパートナーは竜だ。いわゆる宝くじに当たった感覚だろう。黄褐色の鱗に包まれた細長い竜は、○○○の手のひらで穏やかに身を伏せている。大きめの翼はおさまりきらず、手のひらから外れて、だらりと垂らしていた。

 ×××は正直羨ましく思った。パートナーが竜である人、竜使いともなれば後の人生は約束されたようなものだからだ。両親がいない自分達にとってみれば、それは何にも増す保証になる。

 自分の卵を見る。

 全く動きはなかった。


「○○○君、おめでとう」

「あ、ありがとうございます」


 大人の人がやってきて○○○に声をかけた。病院の人らしく、書類やらなにやらの記入を進めてきた。


「それにしても、竜とはね。すごいな」

「ありがとうございます」


 本当に――うらやましい。手のひらにおさまるほどの竜を見て、そう思った。

 再び、自分の卵に視線を移すと、既にヒビが入っていた。

 孵るのだ。

 慌てて近寄り、両手で包むようにして持ち上げた。


「お、君もか」


 病院の人が興味深げに覗いてきた。

 卵のヒビはすぐに広まっていく。ものの数秒で――生まれた。


「これは」

「おやおや」


 炎に燃えるたてがみに、獅子の勇壮な顔。身体もライオンのものだが、ところどころ鱗も見える。尻尾はヘビとなっており、尾の端には蛇の下が覗いていた。

 その姿は、今日まで思い描いてきた中でも最悪を想定したものと、余りにも似通っていた。それは多種多様な姿を持つパートナーの中でも、特に様々な姿を持っていると聞く。これが確実にそうだ、という証拠はない。

 しかし。

 しかし、余りにもテンプレートな姿だ。

 この雑多なパートナーは――


「キメラだね」


 最も忌避されるパートナーを引いてしまった。他のパートナーを糧に成長する、忌まわしい存在。百人に見せれば百人ともが顔をしかめる、そんな忌み子だ。

 絶望感が押し寄せてきた。


 うなだれていると、肩に手を置かれた。


「そんな肩を落とさなくていいよ。大丈夫、全部おじさんにまかせなさい」


 病院の人の声がいやに優しい。

 声はすぐ後ろから発せられており、自分のすぐ後ろに立っているのだろう。すこしぞっとしながらも、視線は目の前のキメラから外せない。

 病院の人が言った。


「さあ、眠りなさい」


 いきなり口に何かを当てられた。息が苦しくなり、必死であがくが、大人の力には叶うわけもない。

 よくわからないまま、意識は消え失せた。


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