婚約破棄を猫から見た感じの話
『ジュリエッタ、婚約を破棄する!』
『そ、そんな。どうして、ロメオ様!』
僕のママが番から拒否されました。
それ以来、ママが泣いています。
僕が昆虫を持って行っても・・・
『グスン、グスン・・・』
いつもは褒めてくれるのに見向きもしません。
『ミャア』
遊ぼうとお願いしても。
『グスン、グスン』
と泣いています。
『ミャン!ミャアー!』
『グスン、あら、キジ・・・・ケリーにご飯をもらいなさい。ケリー、この子にご飯をあげて』
とポンと部屋を出されました。
ママから毛繕いもしてもらえません。
そもそもメスの誘いを断るのはオス猫としてあり得ないことです。
僕はママの番が憎くて仕方ありません。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「・・・ですから聖メス猫様、どうしたら良いでしょうか?」
僕はキジ、猫集会で聖メス猫様にお伺いをした。
ここは女神教会の庭だ。
ここを縄張りにしている聖メス猫様は白く長い毛を後ろ足でカキカキして顔を洗った後、こう仰った。
「キジや。教えにこうあります。右の猫パンチを受けたら左の猫パンチも受けなさい・・・」
お魚をくわえた猫が走って来たら、追いかけて分けてもらおうと思わずに、追ってくる大きな猫を横切って逃走を助けなさい・・・と女神様は仰せですわ。
「つまり、仇に報いるのに恩を以て返すのですよ」
「あの、具体的には?」
「坊やのママの番にネズミを持って行くのよ。そしたらママに気持が返ってきますわ」
「なるほど、大きな猫は狩りが出来ないからネズミは貴重ですしね」
「「「「ニャー!ニャー!」」」(協力するぜ)
「皆さん・・・グスン」
仲間達が協力してくれてネズミを沢山狩ってくれました。
番の家に行きます。
「ニャア!」(開門)
聖メス猫様は扉を開く魔法を使えます。これは羨ましいスキルです。
仲間達と一緒に番の寝床に向かいます。
「グー、グー」
「・・・ロメオ様・・グー」
浮気です。大きなメス猫を隣に寝ていました。大きな猫は本当にしかたないです。
「皆様、二人の周りにネズミや虫を置くのですわ」
「「「「ニャー」」」
それからも毎晩忍び込みました。
きっと喜んで改心してくれるでしょう。
僕たちは番を観察することにしました。
狩りの獲物を見定めるように真剣にジィーと見つめます。
「な、何だ。猫たちが俺を見ているぞ!」
「ロ、ロメオ様、怖いわ」
感謝してくれるはずです。
しかし。
「あっちに行け!」
追い払われます。おかしいです。
「はあ、はあ、はあ、何で追い払っても安全な場所から見つめているのだよ!」
「ロメオ様、まさか、猫を虐めたりしていませんよね」
「す、するか?はっ?そう言えばジュリエッタ、猫飼っていたよな!」
ママの家に番が来ました。効果あったようです。
「ジュリエッタ!猫を使って嫌がらせをするな!」
「グスン、しませんわ・・」
何故か怒っています。
おかしい。聖メス猫様が間違った事を言うはずはないのです。
この様子を報告するのです。
女神教会に行くと・・・
「ウミャー!ニャン!ミャー!」
「ミーシャ、良い子だ。ネズミを捕って来てくれて嬉しいぞ。おかげで女神教典がネズミにかじられずにすむ。おお、抱っこか?ヨシヨシ」
聖メス猫様は子猫のようにパパに甘えている真っ最中なのです。
確かに大きな猫はネズミを捕ると喜ぶのは本当です。
おかしいのです。
「ニャ!」
「あ、泥棒猫?」
泥棒猫との名前の野良の子に話しかけられました。
「ククク、皆、大きな猫のことを知らなすぎるだわさ。大きな猫はカラスのように光輝く物が好きだわさ」
「本当かよ」
彼女はオレンジの毛並みで大きな猫が嫌いなはずです。
チャリン!
光輝く物が入った小袋をくわえて来ました。
「これが、大きな猫の好きなもの?」
「これ大事そうに持っていたから肉かと思ったら違うだわさ。ママのために使いな」
「有難う。泥棒猫・・・グスン」
「良いってことよ。発情期一緒だわさ」
「発情期・・?」
「まあ、いいだわさ。ママのために持って行っておあげ」
今夜も忍び込み。番の寝床に入れました。
これで本当に効果があるか信じられません。
だけど、数日後に番の家に行ったら。
「ロメオ!逮捕だ!」
「貧乏子爵家の令息が高価な紳士服を買えるはずがない。財布は盗難被害者の物だと判明したぞ」
「これは・・起きたらベッドの上にあったのだよ。猫を使って嫌がらせをしていたジュリエッタの仕業に違いない!」
「訳の分からないことを・・・」
「同じくドレスを買ったマリア嬢も取り調べだ」
「ヒィ、これは違くて・・・・知らなくて買ってもらったのよ!」
何か、大きな猫たちに番はつれて行かれたのです。
結局、失敗です。聖メス猫様も間違いを犯すのだな。
ママの所に帰ります。
すると、ママは笑顔になっていました。
「あら、衛兵分隊長殿、ロメオ様がそのような事を・・・」
「ええ、どうせほら話かと思ったのですが、役目でしてお話を聞きに参りました」
「ところで、大変な思いをされましたね」
「いえ、もういいのです・・・」
「実は・・・・」
何か、良い雰囲気になっているのです。
やっぱり聖メス猫様は正しかったのです。
だから、僕はお祝いにネズミをあげたのです。
「ニャン!」
「まあ、キジ、偉いわね。ヨシ、ヨシ」
ヨシヨシからの抱っこをしてくれるまで回復したのです。
「ほお、お嬢様の猫ですか?」
「はい・・この子拾ったのです」
「衛兵分隊長殿、この子、時々、獲物を持って来て下さいますの。喜んで迎える事にしていますわ。ご協力お願いします」
「分かりました。私はロビンです。そう呼んで頂けたら嬉しいです」
「私は・・・ジュリエッタですの・・・」
「ジュリエッタ嬢、まるで赤子をあやすようですね。鮮やかです」
「キャ、あの・・・」
「申訳ありません!」
「いえ、良いのです・・・」
「ニャア!」
ママはまだまだ僕の助けが必要らしい。
夜の集会に泥棒猫を連れて行こうと思っている。
・・・その後、キジ色とオレンジ色の子猫達を連れた泥棒猫が屋敷に住み付く頃。
ジュリエッタとロビンは婚約をした。
猫女神教典口伝に。
『ママが番に拒否されたらネズミを贈れ』が定番になったことは人族の知ったことではない。
最後までお読み頂き有難うございました。




