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なぜ妖達は私にお願いしてくるのか?  作者: 紙絵


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3/4

神隠し

「行ってきます!」

 鞄に付けたお守りが揺れている。


 昨日も夢を見た。

 シロが出てきて、龍燈に貸した帽子はまた返すとの事だった。

 それとやはり……

 お願いを聞いて欲しい妖が沢山いるらしい。

「ずっとお願いしてるばっかりだと悪いから、何か変わりに欲しい物とかない?」

 そう聞かれたが思いつかない。


 授業中も考えていたが、放課後になっても決められない。

「何がいいかな〜?」

 ひとりごとを呟くミカ。

「何か悩み事か?」

 ハルカがいつの間にか隣にいた。

「あ、いや、それがね……」

「欲しい物か……妖にって、難しいな。」

 ハルカも考え込む。

「向こうの世界気になるし、異世界案内ツアーとか楽しそう」

「いや、それは危険だろ?」

 ハルカが即却下する。

「そーだよねえ」

「今日もどこか行くのか? 俺部活あるから付き合えないけど……」

 ハルカはバスケ部である。

「今日は帰ろうと思う」

「そうか、気をつけてな!」

 ハルカが教室を出ていく。

 何か忘れているような……

 あ、お礼言うの忘れてた!

 自分はそそっかしくて、目の前の事に夢中になると色々と忘れてしまう。

「はぁあ」

 ため息を吐きながら教室を出ると、

 あれ?

 学校じゃない……


 いつのまにか、石畳の広い玄関に立っている。長い廊下、広い和室、障子の襖。鹿おどしの音も聞こえる。

「ようこそ、我が家へ」

 出迎えてくれてのは

「シロ!」

 少年が奥から現れた。

 家の中に入ると客間に案内された。

「僕もミカへのお礼を考えてたんだけど、何も思いつかなくて……直接聞いてみようと」

 気付いたら目の前にお茶がある。

「すごい家だね! 圧倒されちゃう。お茶いただきます」

 本当に圧倒されている人は、お茶も喉を通らないと思うのだが……

 シロはミカの図太さが面白い。

「それで、お礼何がいいか決まった?」

 シロもお茶を飲みながらミカに訊ねる。

「いや、私も朝から考えてるんだけど、思いつかなくて」

 なんだか落ち着く空間である。

「私、さっきまで学校にいたよね? シロはどこからでもこの家に呼べるの?」

 疑問に思うミカ。

「あぁ。まぁ、あんまり遠くは無理だけどな」

「すごいね! でも戻った時、私また学校だよね?」

 夜の学校とか、ちょっと怖いな……

「嫌ならミカの家にしてやろうか?」

 何気なく言うシロ。

「そんなことできるの?」

 そうだ!

「私のお願い決まったかも!」

「おぅ、なんだ?」

 シロが期待の目で見る。

「私、色んな所に行きたい!

 妖のお願い聞く時に、シロがその場所まで飛ばしてくれたら……私も色々な場所に行けるし、お願いも聞けるし、一石二鳥じゃない?」

 我ながらいい考えである。

「なるほど……いいね! それならお願いも頼みやすいし!」

 シロも乗り気である。

「じゃあ手始めに、どこかに飛ばそうか?」

「そうだなぁ……やっぱり今日は元の所でお願い」

「そう? わかった」


 玄関へと向かう。

「帽子預かってたから、返す」

 シロは、龍燈に渡した帽子をミカへ返した。

「ありがとう!」

「じゃあ、またね」

 シロが手を振る。

 ミカも手を振り玄関から外に出ると、教室にいた。

 夕方の教室にはミカだけだ。

 鞄を持つと下駄箱へ、そのまま体育館に向かう。


 部活は終わった時間のようだ。生徒はまばらである。

 もう帰っちゃったかな……

「ミカ、どうした?」

 体育館からハルカが出てきた。

「よかった、まだいた!」

「うん、いちお部長だから、最後までいるようにしてて……」

「ハルカ先に帰るな!」

「あぁ、また!」

 友達が気を利かせて先に帰る。

「友達良かったの?」

 ミカはちょっと気が引けた。

「大丈夫だよ。帰ろう」

 ハルカは気にしていないようだ。

 二人で歩き出す。

「あの、お守りありがとう! この前ちゃんと言えなかったから!」

 やっと言えた。

「いや、そんなの全然……つか、それ言う為にわざわざ待ってたの?」

 ハルカが驚く。

「えっと……待ってたというか、この時間になってたというか」

 言う為に、学校に戻ってきたのは事実である。

「まぁ、ミカが喜んで良かったよ」

 ハルカが優しい笑顔で笑った。

 その笑顔にミカの心は暖かくなる。

「う、うん」

 下を向くミカ。

 そんな顔されたら照れてしまう。

 ん? なんで照れるんだろう?

「あれ、帽子」

 ハルカがミカの鞄から見えている、帽子に気づいた。

「シロに返してもらった。それと、私のお願い決まったよ!」

 お願いの内容を伝えるミカ。

「それ、いいんだけど一つ問題がある」

 ハルカがミカを睨む。

「問題?」

「重大な問題だ。わかる?」

 さらに睨む。

 ぽかんとするミカ。

「なんでしょう?」

 思わず敬語になる程、睨みをきかせている。さっきの優しい笑顔はどこに行った?

「俺が一緒に行けない!」

 ハルカが訴えた。

「ああ!」

 ん? ハルカ一緒に行くつもりだったんだ。

 とは言えない。

「今度シロに聞いといてみる!」

 そう提案してみたが、そんな都合のいい事……


「他のやつも飛ばせるぞ」

 え? いいの?

 この日の夜、シロに話したいと強く願いながら寝たら、夢に出てきてくれた。

「もしかして、シロってすごい妖なの?」

 我ながら、今更ヤバい妖なのかもしれないと思うのも遅い気がする。

「僕は神様の仕いだから、別に僕が凄いわけじゃない」

「ふぅん?」

「ハルカだっけ? 一度夢で会ってくる。信用できる奴なら、妖の事を僕からも頼むよ」

 シロはそう言うと夢が終わった。


 翌朝ハルカに会うと、開口一番

「昨日夢に男の子が出てきてさ、びっくりした……で、俺も妖のお願い聞くことになった」

 と、説明してくれた。

「そっか、それはよかった……?」

 良かったのかは不明だが、これでしっかりと二人での活動が決まったのであった。


 その日の放課後。

 ミカは学校からの帰り道、横断歩道を渡ると急に靄に包まれた。


 ハルカは部活を終えて帰宅する。

 ベットでゴロゴロしていたら、いつの間にか寝ていたようだ。ドアをノックする音で目が覚めた。

「ん?」

「ミカちゃんのお母さんから連絡があって、まだミカちゃん帰ってないみたいなんだけどアンタ知らないって?」

 母が不安そうな顔をしている。

「まだ帰ってない?」

 ハルカは一気に目が覚めた。時計は二一時を過ぎている。

「心配よね……」

「俺探してくる!」

 ハルカは外に飛び出した。

 とりあえず学校まで走る。ミカが寄りそうな場所、通学路のコンビニ、ファストフード店……

 いないとなると、妖関係か?

 シロに頼みたいけど、向こうから夢に出てくるだけで、こっちからはどうしたら会えるんだ? そもそもシロは何の妖だ?

 最初にミカと行った場所は……


 ハルカは錦帯橋へと走る。

 料金箱にお金を入れると同時に照明が消えた。夜遅くのそこは、昼間とは違う場所のようだった。

 シロお願いだ! ミカがいなくなった! 助けてくれ!

 心の中で強く願い、一歩踏み出す。

 靄が包む。目の前に立派な家がある。

「ハルカ? どうした? 汗だくじゃないか」

 シロが出てきた。

「ミカがいなくなって、こっちの世界にいるかと思って……シロなら分かるんじゃないかって……」

「そうか、分かった。探してみよう」

 シロは頷くとハルカの肩に手を置いた。


 霧が晴れる。

 ミカはなんだか懐かしい場所にいた。

 田んぼがどこまでも遠くまで広がっている。車が通るような広い道はない。

 夕焼けが綺麗だ。雲がオレンジ色に染まっている。

 後ろから声がした。

「困っているんだ。一緒に来てくれないか?」

 全身緑で甲羅を背負っていて、頭にはお皿が乗っている。いわゆる河童である。

 さっきまでいなかった場所に、突然現れた。

「何に困ってるの?」

 妖に困っていると言われたら、放っておけない。

「僕を怖がらないの?」

 河童はとても驚いた表情をしている。

「あなた河童でしょ? 初めて本物見た!」

 ミカはむしろ河童との出会いに感動している。

「変な子、着いてきてほしいんだ」

 河童があぜ道を進む。木が生い茂った場所に着くと、大きな岩と小川、古い民家があった。

「ここ、僕の家」

 そう言うと、河童は家の中に入っていく。

「お邪魔します」

 家は簡素な作りで、物はあまりない。ちゃぶ台の前に河童が座っている。ミカも向かい側に腰を下ろす。

「で、何に困ってるの?」

 ミカは訊ねる。

「お茶でも飲むか?」

 その疑問には答えずに、河童は台所に行ってしまった。

 お茶を飲みながら、困り事を聞くが、河童ははぐらかして答えない。

「君、お願い聞いてくれるんでしょ?」

 河童がミカを見つめる。

「うんまぁ。私が出来ることなら。河童さんも何かお願いあるの?」

 ミカが答えると、河童は何やらもじもじしだした。

「えっと……それなら、そのーー」

 そんな話をしていると、何やら外が騒がしいのに気付いた。


「ミカ! いるか!」

 私の名前を叫んでいる。

 ミカは立ち上がると、玄関へ向かう。

「行かないで!」

 河童がミカを留まらせようと手を掴む。

 ミカは振り向くと、

「ごめんね、河童さん。ハルカが私のこと呼んでるから行くね!」

 ミカは微笑むと扉を開けた。

 外は夕焼けだ。さっきと変わらない。

 目の前に、私服のハルカとシロが立っていた。

「ミカ! よかった無事で……」

 ハルカがミカに駆け寄る。汗だくで涙ぐんでいる。

「そんなに慌ててどうしたの?」

「ミカが帰ってこないって、こっちでは大騒ぎしてるんだ! シロに頼んで一緒に探してもらって」

 シロは家の中にいる河童を一瞥する。

「河童に気に入られたみたいだね。見つかって良かった。帰ろうか」

 木々を抜けると、靄が包み、目の前にシロの家があった。

「私、少し河童さんと話してただけだよ?」

 ミカはハルカに伝える。

「こっちではもう夜の十一時位だよ。本当に、見つかって良かった」

 ハルカは安心したのか疲れがどっときた。

「妖の中で、ミカを連れて行くとしたら奴くらいだし、ミカなら『困っている』なんて言われたら着いていきそうだからな」

 シロに図星をつかれてたじろぐミカ。

「なんでわかるの……」

 まぁ、本当に困ってる事が無いのならよかった。

「あのまま見つからなかったら、河童の嫁になってたかもな」

 シロがさらっと不穏な事を口にする。

「え! 嫁って」

 ハルカが顔を白くする。

「そんな〜お茶飲んでただけなのに」

 ミカは危機感が足りない。

「じゃあ家に返すぞ。どこにする?」

 シロがハルカに聞く。

 なんだか仲良くなっている気がするハルカとシロである。

「ミカの家で。シロ今回は本当にありがとう」

「どういたしまして」

 靄が現れ、二人はミカの家の前にいた。

「おやすみ」

 ハルカはミカの頭をポンとした。

「うん、探してくれてありがとう……」

 ミカがドアを開けた。

「ただいま!」


 河童の家にいた時間は三十分程だったと思ったのに、こっちの世界だと半日経っていて……両親にとても怒られたのであった。

 両親が警察に連絡しようと決めた時、ミカが帰宅し、ハルカはとても感謝された。また株が上がった事だろう。


 河童と一緒にいたと言ったところで信じてもらえない。ファミレスで勉強していたら寝てしまったと、無理がある嘘をつく事になった。


「ハードな一日だった……」

 ハルカは夢も見ずに、ぐっすり眠ったのだった。

4月1日:31日投稿分に加筆

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