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なぜ妖達は私にお願いしてくるのか?  作者: 紙絵


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四月 はじまりの季節

 橋を渡る。

 右を見ても左を見ても、真っ白な花畑が続いている。

「どうしたの?」

 一人の男の子が私の目の前にいる

 銀髪で和服姿、小学生くらいだろうか

「ここは……?」

 私はなぜここにいるのだろう

「迷ったんだね」

 男の子は私の手を繋いで橋を戻る


 目が覚めた

「ミカ大丈夫?」

 友達の顔が自分を覗き込んでいる。

「頭痛くない?」

「ハルカが保健室に運んでくれたんだよ」

「鞄持ってきたから、帰れる?」


「うん、ありがとう……もうちょっと横になったら帰るから、大丈夫!」

 ミカは、皆んなに心配をかけないように振る舞う。

「本当に?」

 友達が心配しながらも先に帰る。


 市内の高校に通う山本ミカは、今年の四月で高校三年生になった一七歳だ。

 どこにでもいそうな平均身長、平均体重。

 肩より長い茶色の髪をポニーテールにしている。

 そそっかしいタイプで頼まれると断れない、お人好しの性格である。


 あの夢の男の子、誰だろう? 

 あの橋は……

 まだ夢見心地である。

「ミカ、帰るぞ」

 鈴川ハルカが顔を見せた。


 バスケ部部長で高身長、黒髪の短髪。

 切れ長の目はちょっと怖そうに見えるが、実際は優しい男である。


「一人で帰れるから大丈夫……」

「だめ、俺が心配なの」

 ハルカは頑なだ。


 ミカとハルカは幼なじみだ。

 保育園から高校まで一緒で、家も近所。周りからは「もう付き合っちゃえよ」と言われている。


「わかった。じゃあ、ちょっと行きたい所があるから一緒に来て」

 ミカはハルカに対しては遠慮がない。

「早く家帰って休んだ方がいいよ」

 ハルカが子どもに言うように諭す。

「大丈夫、もう何ともないよ。それに気になるんだからしょうがないじゃん?」

 ハルカは渋々了承した。


 学校を出て目的地へと向かう。

 この季節、桜は満開だ。暖かい風が吹くと、パラパラ花びらが舞う。

 歩いていても心地いい。

「で、どこに行くんだ?」

 ハルカが訊ねる。

「錦帯橋」

「どうして?」

「夢をみて……そこに橋が出てきたの。それが錦帯橋に似てて、何だか気になって」

「ふぅん。どんな夢だよ?」

「男の子が出てきて、私を連れ戻してくれて……そいえば、私なんで倒れたの?」

 体育でバスケの授業をしていて、気付いたら保健室だったのだ。

「ミカの後頭部に、後ろからボールが思いっきり当たったんだよ。覚えてないの? タンコブない?」

 ハルカがミカの頭を撫でる。

「たんこぶ……」

「ほら! ここ、タンコブ!」

「うぅ、痛いかも……」

 ミカはタンコブを自分でも確かめる。

 後頭部に膨らみを見つけた。


 そうこうしている間に、目的地に着いた。

 夢の景色とは違うけど、橋は同じに見える。

「とりあえず渡ってみよう」


 錦帯橋は、山口県岩国市にある五つの木造のアーチ橋だ。橋の幅は五メートル、長さは約一九〇メートル。日本三名橋のひとつである。


 二人は錦帯橋を渡る。

 大きな太鼓橋は階段のようになっている。けっこうな距離だ。

「ミカ本当に大丈夫?」

 ハルカが心配そうに見る。

「ありがとう、でも平気」

 渡りきったが花畑も男の子も見当たらない。

 やっぱりただの夢だったのかな……すごいリアルだったのに。

「あ!」

 ハルカが声を上げた。

「白蛇だ!」

 二人でしゃがんで蛇を見つめる。白蛇は草むらへ逃げていった。

「戻ろうか」

 ハルカが言う。

 ミカは立ち上がった瞬間、いつもの景色じゃなくなった。


 白い花畑だ! 

「あれ? 戻ったんじゃないの?」

 目線を下げると、銀髪の少年! 

「夢の男の子!」

「そうだよ。せっかく僕と戻ったのに、また来たの?」

 少年がミカに話しかける。

「ここは何?」

「ここは君のいる世界と別の場所だよ。君、一瞬死にそうになったでしょ? それでここと繋がっちゃったんだよ。たまにいるんだよ、そういう人間」

「あの世的な……?」

 ちょっと怖くなるミカ。

「あの世とは違うよ。人間じゃない者が住む世界って所かな……」

 ほぅ……よく分からないが、不思議な場所に迷い込んでいるらしい。また私は転んで頭でも打ったのだろうか? 

 そんな事を思っていると、前方に人の後ろ姿が見えた。

「ハルカ!」

 思わず走り寄るミカ。

「おい、あんまり遠くに行かない方がいい! 迷ったら戻れなくなるぞ!」

 少年がミカを注意する。

 前方の人影が振り向く。

「ん? 私に話しかけてる、あなた誰?」

 それは薄ピンク色の着物を着た女の人だった。黒髪をお団子にしている。江戸時代の浮世絵にありそうな人である。

「あ、人違いでした。すみません」

 謝るミカ。

「いいのよ。あなた、もしかして人間?」

 女の人は興味津々といった顔でこちらを見る。

「へ? はぁ、まあ……」

 あれ? こればれても平気? 食べられたりしない? 

 焦るミカ。

「人間のお方、私お願いがあるの! 聞いてくれる?」

「お願いですか?」

 なんだか圧がすごい。


 圧の強い女性は桜の精との事。確かに今は桜が満開の季節だ。


「僕はシロという。やれやれ、桜の精、絶対バレるなよ!」

 少年シロに見送られて、私と桜の精は橋を戻る。

「人間の世界初めて行くの! 楽しみ〜」

 桜の精はうきうきしている。

「私とはぐれないように気をつけてください。迷子になったら探すの大変なので」

 なんだかシロと同じような事を言っている。

「はーい! ミカちゃんに従います」

 妖は従順である。

 急にモヤが晴れた。そこには、いつもの景色が広がっている。

「ミカ! どこ行ってたんだ? 急にいなくなったから心配したよ」

 ハルカが駆け寄ってきた。

「え? 私いなくなってたの?」

 キョトンとするミカ、隣の女性が目に入る。

「隣にいたと思って、横見たらいなくて……こちらの方は?」

「私は桜のせ……」

「あー知り合いにたまたま会って! こちらは桜さん」


「人にむやみに妖だって言わないように!」


 シロに注意された事を思い出し、桜の精の自己紹介を慌てて止める。

「初めまして」

 桜さんこと、桜の精がハルカにお辞儀する。

「あ、初めまして……鈴川ハルカです」

 ハルカも同じくお辞儀する。

「桜さんは叶えたい事があるそうで……」

 ミカがハルカに説明する。

「そうなんです。私、毎年美味しそうだなって思いながら見ていて……ほら、あそこにある白い食べ物!」

 桜の精は一つのお店を指差した。

「白い食べ物?」

 不思議な言い回しに、ハルカは首を傾げている。

「あれよ!」

 桜の精はソフトクリームの大きな模型を見て目を輝かせている。

「ソフトクリームのことだったの!」

 ミカは納得したのだった。

 確かに桜の季節、ソフトクリーム食べながらお花見する人もいるだろう。


 ベンチに座り、三人揃ってソフトクリームを食べる。

「これが! 私が夢にまで見たソフトクリーム!」

 桜の精はとても嬉しそうにソフトクリームを見つめる。そして一口。

「つっ冷たい! 甘い! こんなの食べた事ないわ!」

 とてもはしゃぎながら食べている。

 子どもが初めてアイスを食べた時のようである。

 いつもより、桜が輝いて見えるのは気のせいじゃないかもしれない……

「何の知り合い?」

 ハルカがミカに訊ねる。

「んと……いとこの友達のお姉さん」

 咄嗟に謎の関係を伝える。

「すごい感動してるけど、もしかしてソフトクリーム食べるの初めて?」

 こっそりミカに訊ねる。

 ハルカ、鋭い。

「んー、どうだろうねー?」

 はぐらかすミカ。

 桜の精は夢中になっていて何も耳に入っていないようだ。

「はぁ、美味しかった! こんな美味しい食べ物だったのね!」

 桜の精は満足したようだ。

 そんな様子を訝しげに見るハルカ。

「ソフトクリーム食べた事ないって、ものすごいお嬢様なのか?」

 勝手に想像して納得しようとしている。

「ありがとうミカ、ずっと食べてみたかったの! 夢が叶って嬉しいわ!」

 桜の精はミカにお礼を言う。

「そんなそんな!」

 ソフトクリームを奢って、こんなに感謝されたのは初めてである。

「帰りは一人で大丈夫、こっちに来たらまた寄ってって!」

 そう言うと桜の精は、どこからともなく桜の枝を取り出した。

「私の力で作った桜よ。貰ってちょうだい! 毎年咲くから、お水だけあげてね」

 ミカとハルカに一本ずつ渡す。

「手品師?」

 ハルカは桜の枝を見て、首を横にしている。

 彼女は橋を渡っていった。

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