3話
「ねえ、見て!カブトムシの幼虫、五ひきもいた!」
教室のうしろで、男子たちがさわいでいた。
4年生の理科で「春の生きもの」を学んでから、クラスでは昆虫さがしブームがはじまっていた。
「わたしも、バッタつかまえたよ!」
「アリのすあな、ほったら、たまごがあった!」
みんなが虫かごを持ってきて、休み時間になると校庭にとびだしていく。
でも——
「……わたし、虫はちょっと……」
結菜は、そっと目をそらした。
「ぼくも、あんまりさわれない」
湊斗も、すこしだけ顔をしかめた。
「じゃあ、べつの“はる”をさがそうよ」
陽翔が、にっこり笑った。
「たとえば、これとか」
大翔が、ランドセルからノートを出した。
中には、いろんな葉っぱのスケッチがならんでいた。
「これ、すごいね」
結菜が、ページをめくると、あるページで手がとまった。
そこには、葉っぱのうらがわが、うすい紙にうつしとられていた。
まるで、木の血管みたいに、すじが広がっていた。
「これ……きれい」
結菜が、つぶやいた。
「葉っぱの中に、道があるんだよ」
大翔が言った。
「水がとおる道?」
「そう。葉脈っていうんだって。」
陽翔が、葉っぱを手にとって、光にすかしてみた。
「ほんとだ……光がとおると、もっときれい。」
湊斗は、じっと見つめていた。
「……これ、にじに、にてる。」
4人は、虫かごのにぎやかな教室のすみで、
しずかに、葉っぱの中の“ひみつの道”を見つけていた。




