「ククク……だがヤツは四天王の中でも最強」
「これでトドメだっ! 『神なる裁きの剣』ッ!!」
「うがァアーーッ!! み、見事……!」
魔法と剣が交錯しあう激闘が、必殺の一太刀によって終わりを迎えた。
聖なる力に焦がされた魔王軍四天王のひとり、「闇のファウスト」の身体は跡形もなく崩壊。その様を、俺は強者に対する敬意の眼差しで見送った。
聖剣を鞘に収め、「闇の間」に静寂が訪れたのも束の間。俺の目の前に、3人の魔族が現れた。
「誰だ! お前たちは!!」
彼らに問いかけると、ご丁寧に自己紹介をしてくれた。
「俺様は「炎のセカンディ」! 魔王軍四天王のひとりにして、誰よりも熱く炎を使う者!」
「私は「水のサドラ」。魔王軍四天王のひとりにして、誰よりも冷静に水を使う者……」
「オレは「風のフォスリィ」。魔王軍四天王のひとりにして、誰もよりも荒々しく風を使う者ォ……!」
この感じ……残りの四天王かっ!!
「ハッ……まとめておでましってワケか。人間相手に四天王の名が廃るぜ」
軽口を叩いてみせるが、内心かなり焦っていた。
闇のファウストでさえギリギリの戦いだったんだ。3人まとめて相手なんて無理に決まってる。
しかも、この流れって"アレ"だろ……?
「ハッ! ファウストがやられたか!」
ほらね?
「たかが人間風情に倒されるとは、少々見くびっていたようですね……」
はい、次で来るよ? 次。
「ククク……だがヤツは四天王の中でも最強ォ……」
はいやっぱり来たー! 「四天王中でも最弱」いただきましたーーっ!
……って、あれ?
「……今の聞き間違い? もう1回言ってもらえる……?」
風のフォスリィはナイフをペロリと舐め、一言一句違わずまた言った。
「ククク……だがヤツは四天王の中でも最強ォ……」
うん、言ったな。「四天王の中でも最強」って。
「……つまり?」
「私たち3人の中に、勇者……あなたに勝てる者はいないというわけです」
「えぇ……」
水のサドラはメガネはカチャッとして、冷静に言い放った。
なんで出てきたの?
「な、なんか妙に拍子抜けだが、こいつは都合が良い。このまま3人まとめて……」
「ターイムっ!!」
炎のセカンディは屈強な両手でTの字を作り、タイムを要求。それでいいのか四天王。
「少し作戦会議をさせてくれないか!!」
情けねぇなぁ……。
まぁ、こっちが有利とわかってれば心に余裕ができてくる。ちょっとくらいなら待ってやろうかな。
「よし、じゃあ5分待ってやる。その間にお前らでどうするか結論出せよ?」
「感謝する!!」
礼儀正しいお辞儀を見せたセカンディは、2人と円陣を組んで会議を始めた。
黙って待ってるのもつまらないな。
「スキル発動。『神の耳』」
神の耳とは、周囲の微かな音をすべて拾い集める便利スキル。これであいつらの作戦会議を盗み聞きしてやろう!
3人の方に意識を集中させると、最初に聞こえたのはセカンディの声。
(お、おい……。とりあえず出てきたけどどうするつもりだ!?)
あっ、すごい焦ってるっぽい。
(どうしたもこうしたもありません。今すぐ我々でこの勇者を始末しなければ)
(でもよォ……ファウストはオレたちが束になったところで敵にすらならねェほど強かったんだぜェ……? ファウストを倒した勇者なんてよォ……)
……こいつら3人より強かったんだ。
流石に四天王ワンマンチームすぎないか?
(とにかくやるしかないのか!? 魔王様が到着するまでの足止めくらいはできるかもしれない!)
(フム……自ら死にに行くのは少々……)
(あァん? サドラテメェ、ビビってんじゃねェよォ……!)
(おや、私はビビってるわけではありませんが。そもそも勝てない相手に挑むのは勇気や覚悟ではなく蛮勇ですよ)
(お前たち! こんな時にやってる場合かっ!!)
そうだそうだ。俺という最大の敵を前にして喧嘩とかみっともないぞ。四天王なんだからもう少し連携とれる仲になっておけよ。
それからしばらくあれでもないこれでもないと、案を出してるうちに、たぶん5分経った。
「さて、そろそろ答えを聞こうかな?」
俺が声をかけると、3人は肩をビクッとさせた。
「ままま、待ってくれ! 延長、延長を!!」
「俺は5分だけって言ったからな。それじゃ、遠慮なく……」
聖剣を構えて斬りかかろうとした瞬間、背後にドス黒いオーラを感じ、攻撃を中断した。
バッと振り返ると、「闇の間」の入り口に黒い鎧の男が立っている。まさかこいつ……!
「「「魔王様!!」」」
「フフフ、ハハハ、ハーッハッハ!! よく四天王最強であるファウストを打ち破ったな! 褒めてやろう、勇者よ!」
こいつが……魔王!
「なるほどな。この3人は茶番にすぎない、あんたからが本番ってことだな。……正直勝てる確信はないけど……平和のためにお前を倒してみせるッ!!」
改めて聖剣を構えると、魔王は一瞬にして俺の視界から消えた! は、速い……ッ!
次の瞬間、魔王は俺の目の前に現れた! そして何かを取り出して……まずい、やられる!!
「あっ、これをどうぞ」
俺の命は絶え……てない。しかもなにこれ、魔王がくれたのって……封筒?
「ど、どうも……?」
魔王軍のシンボルである悪魔の顔があしらわれた蝋封。……急に敬語になるし、なんのつもりだ!?
「いやぁ、ファウストがやられたと聞いてすぐに書き上げたのだが、少し時間がかかって申し訳ない」
「なんだよ、これは……?」
「貴様の国との平和条約についての手紙だ。帰ったら国王に渡してくれないか?」
「はぁ……?」
魔王が、平和条約だと……!? いやいや、ありえない。何かの罠かっ!!
戸惑っている俺に、魔王はゆっくり説明する。
「先程のフォスリィが、ファウストは四天王中で最強と言ったが、実は少し間違っているのだ」
「間違ってるだと……? 何を言って……」
「ヤツは四天王最強どころじゃない、魔王軍最強の兵士なのだ」
「つまり?」
「ファウストは我より強い、そしてファウストを破った貴様は我より強い! よって、勝てないと判断し、平和条約の締結に向けてがんばろうと思ったのだ!」
「諦め早くない!?」
理にかなってるけど! なんかこう、魔王としての威厳とか!!
「というわけで頼んだぞ、勇者よ!」
「は、はぁ……」
◇◆◇
帰ってすぐに俺は事の顛末を王様に伝え、それからしばらくして、魔族側が労働力を提供するとか、危険な生き物から守るとかそういう色々のもと平和条約が締結された。
そして、俺の今までの冒険が描かれた本なんかも発売された。
……公には明かしてないけど、事実に加筆修正を加えて。
具体的にはどこかって? それはファウストのところに決まっている。
ファウストは四天王最弱で、残る四天王と魔王とも俺がギリギリの戦いをしたってことになった。
俺は別にいいけど……かわいそうだな、ファウスト。
ファウストは平和のために犠牲になったということで……
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P.S. 私の作者ページから続編(?)が読めるので、そちらもぜひ!
タイトルは「元四天王最強なんだが、転生したら最弱扱いされてた件」です!




