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稽古

――翌日――

「...…はぁ。情けない…」

この俺、洸ははっきり言って悩んでいる。

原因は先ほど、上司である多江姐から「最近よく頑張ってくれてるから、今日は休みにおし!偶にはゆったりして身体を癒しな!」と朝から言われたせいだ。

いや、正直休みはありがたい。

ここ数ヶ月のこき使われようは(異常だ。現代社会の企業様もびっくりのブラックぶりだ、あんまりだ。クソが。) と、常日頃思っていての休みだ。嬉しくない訳がない。...が、このブラックっぷりに感化されたか、元現代人だからかわからないが、いざ自由だ!何でもしていい!と言われても何をしていいのか検討すらつかなくなってしまった。

「…前は大型連休とは言わない普通の休日でも、夜ふかしだ!ジャ◯プだゲームだ!!なんて、目をキラキラさせながら舞い上がって堪能してたのになぁ。今は休み方すら忘れるとは……はぁ…情けない。」

とまぁこんな感じに悩んでた。と、

―トントン―

?「ごめんくださーい。多江殿はいらっしゃいますか?」

「?!その声は、!」

と、ついウキウキな感じが出ながら戸を開くと、

「お、洸平殿か。」

「佐古様!!。どうしたんだい朝っぱらから」

「いや失敬、実は多江殿に頼みたいことがあってね」

「いや、今日は俺だけですわ。多江姐は仕事だね」

「ふむ。ということは、今日は君一人かい?」

「そうなんですよ、いきなり休みをいただいちゃいまして^^;」

「そうか!...なら、今からうちに来ないかい?実は私も非番でね」

「?!佐古様の⁈...ということは。」

「そ、稽古の続きといこうではないか」

「行きます支度してきます少々お待ちを!!」

よっしゃ!!いきなり休みが嬉しくなってきたぁ!!

と、まあ舞い上がったところで、佐古様の紹介といこう。

佐古 柴左門(さこしばさもん)殿。

俗に言う町方同心。

だが、よくある権力を振りかざし我々一般市民を陥れる!!というような悪徳同心ではなく弱きものに寄り添ってくれるそんなお優しいお方だ。

そんな方に俺は剣の稽古をつけていただいている。

佐古様はお優しいだけでなく剣も立ち、非番の時やお暇があるときは成り行きではあるが、稽古を付けてくれることになってる。

「では、行きましょう!」

「ハハッ相変わらず元気だなぁ。しかし、君のように月謝を払うから稽古をつけてほしいなんていう人は珍しいよ」

「毎回いいますねそれw」

「うん。だって、武家の生まれならともかく、多江さんとこの見習いとはいえ商人として生きてる君が剣の腕なんて磨いても良いことなどないと思うのだが...?」

「いやいや!だってね佐古様!。やっぱ男ってのは強くなりたいじゃありませんか!」

「んー...そういうものかなぁ...。まぁ強いに越したことはないとはおもうがね」

「でしょ!それにこの物騒な江戸の街。力をつけるのに損はないはずなのです!」

「物騒か...まぁ盗人相手を取り押さえるくらいの腕前はいるかもだな。...さ、着いたよ。入りたまえ」

「お邪魔します!」

と、話しながら着いたここは佐古様のご自宅、つまりは同心屋敷だ。ご本人様は「私みたいな下級役人はこんなちっぽけな屋敷にしかすまなくてね」と苦笑されるが、言っても俺ら一般庶民には身近なお城に見えてしまうのは身分の差だと思ってしまう。

「よし、早速だが準備はいいかい?」

「無論です!」

と稽古用の木刀を構える。と言っても木刀とはいえどっしり構えれるようになったのは最近だ。

(...重さでフラフラで、構えるだけでゼェゼェいうくらいの2月前の自分が懐かしいぜ...)

と、少しウルッときた俺に「隙あり!」と佐古様が突いてくる。

「うぉ?!」となんとか紙一重で躱した俺に「ふむ。少しはマシになったかな?」と言われ、今日になってようやく一撃目を躱せるようになった自分を褒めたくなる。

そう、俺がが佐古様から教えていただいてるのは主に不意打ちへの対応、または反撃だ。

初めてこの木刀をなんとか持てるようになった際に、少し調子に乗った瞬間に真正面からボッコボコにされたのが今や懐かしい。

「ふむ、やはり君は覚えがいいな。ある程度の殺気ならもう読めるんじゃないかい?」

「に、にしてもいきなりですね...」

「敵は待っててはくれないからね。ただ、やはり君は慢心の念が強いのかもしれないな。」

「うっまた言われた...」

「確かに今の一打を受けたのは成長だと思うが、そこで調子に乗らず、逆に私に一撃加える。それぐらいの動きはもうできるとは私は思う。常日頃冷静に物事を考え行動し、そしてウンタラ...」

…もちろん稽古って言ったのは俺だ。

だが、それを抜きにしてもお釣りくるくらい稽古が厳しい。少しの油断で容赦なくボコられ、反省点をたっぷり数十分下手したら1時間近く述べられる。

もちろん尊敬もしてるし、そのおかげで強くもなれてるけどよ...剣術素人な俺にはあまりに酷な話だと思

「また油断」

ズパーーーン!!

と容赦なく加えられる一撃

当然私は人間だ、そんなの頭に食らってマトモに立てる訳ない。

「いってェェェェェェ!!!!」

「まともに入ったな...しかし君も君だ。今日は少しよそ見が酷いぞ?」

「いっいえ。なんか、ちょっとずつ強くなっていってるのが嬉しくて、」

「それにしても、だ。全く最近の若い方は我慢というものを知らぬの...」

「隙アリィィィィーー!!!」

「?!」

へっどうよ佐古様!

グチグチが始まったこの隙を突く!

これでもうちょっとは認めてほしi

「ふむ、今のはよかった...だが」

人生甘くないよねぇ...ということで再び脳天にズパーーーン!とされ、俺は意識を失った...

――――――――――――――――――――――――

バシャッ!!

と、何かがかかる。もちろん水なことは潜在的にわかるが、その水のせいの苦しさで、少しの眠り=気絶から覚醒した俺は、

「...あ」

「目が覚めたか?」

と申し訳なさ半分面白さ半分の佐古様の顔を恨めしそうに見上げ

「...ちぇ、やっぱ少しだけ手加減してほしいかも」

「んー、でも、それでは強くはなれんしなぁ。」

「にしても、毎回毎回ぶっ倒れて水かけられての繰り返しは死ぬと思うのですよ佐古様ぁ!」

「だが、今日の成果を見てみな?私の一打を受け止め、そればかりか不意打ちまでできるようになった」

「...ねぇ佐古様。それってカッコ悪くないです?」

「ハハッ!確かにな」

と、イケてる見た目からはあまり想像できないガハハっと一通り笑い、

「だが、まともな武術や剣術を習ってない君には、このやり方でしかまともに戦えんと思うのだよ。真正面から斬り合うなど我ら侍の道。君のような非力な若者はある程度卑怯でも、文句は言うまい?」

「いや卑怯なこと教えてる自覚はあったんすね?...」

「まぁな...だが、それでも強くはいるだろ?」

「そりゃまぁ、最初に比べたら、」

「ならそれで良いではないか?」

と、再びガハハッと笑う佐古様に、納得は一ミリも言ってないが最初は睨むが、釣られて笑っちまう俺。

するとそこへ

「あなたー?洸平様ー?」

と明るく可憐な声が聞こえる。

「早苗か、こちらだ」

「あら、またお稽古ですか?洸平様が泥だらけではありませんか」

「いえ!身体は丈夫なもので!」

「…さっきまで死ぬとか言ってなかったか?...」

「忘れました!」

「全く現金だなァ、」

「フフフッ、相も変わらず仲良くだこと^ ^」

と、まぁ佐古様がツッコまれたところではあるが、こちらのお姉様は佐古 早苗(さこさなえ)様。お分かりの通り小路門様の奥さん。見た目ならウチの店主(銭ケチ)も負けては無いと思うが、中身は比べるまでもな女神な方。リアルに買い物に行くと、今どきベタな『お姉ちゃん綺麗だねぇ!よしもう一つオマケだい』をリアルで引き起こせる方で、それを『あら?オマケだなんて私は大丈夫ですので、別の方にしてあげてください』とニコニコと言い捨てれる、少し?ポヤッとなされてる方だ。

もちろん、そんな方とラブラブな佐古様もとてつもなく良い方だ。俺だけではなくミツや花屋、ウチの店主を含む江戸中の住民に愛されてる方々だ。

「もしよろしければ、握り飯をお作りしましたので昼餉(ひるげ)としてお召し上がりください」

「マジすかよっしゃ!ありがとうございます!!」

「おいおい、食べたら続きだからな?」

「ァァァァアア!やっぱ稽古後のおにぎりうんまい!!」

「やはり聞いてないな...ハハ」

「フフッたくさんあるので、ゆっくり食べてくださいね?」


――そんな日々が永遠に続いてほしい。そんなしょうもないことを思ってしまうほど充実されていた俺を、いいえ俺たちだったが――

 それは稽古で疲れてすぐ眠ってしまい、次の日の朝の事だった。

「はぁ、昨日は疲れた...。身体イテェ、けど強くなってるしな。よし、今日も頑張るぞい!」

と、何でも屋と書かれた暖簾をめくり

「おはようございやーす!」と、元気よく挨拶をした。のだが、そこには

「……洸ちゃん、」

と、いつもは元気に挨拶を返すか嫌味の一つも言ってくる店主の顔が、白かった。

「...ん?どしたんすか多江姐?」

「そこの八百屋のおじいちゃんおばあちゃんが...ァァ...」

「うん、じいちゃんばあちゃんがどうしたんだよ。」

「…殺されたって…」

「……ェ?……ごめん多江姐。もう一回言ってくれn」

「―だから、、。おじいちゃんとおばあちゃんが殺されたのよ!!昨晩に!!」

「………ゥォ」

 

――俺たち三人の物語が、地獄へと続く悪魔の物語が、今始まろうとしていた――

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