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何でも屋

――半年後――

「はぁーいまいどぉー!洸ちゃんはやく動きなさんな!」

 何でも屋!!と高々に掲げられた旗を背負いながら、

「...やっぱ思ってたのとちがぁーーう!!」

と洸は叫んだ。

「だいたい、何処にいきなり半年も進むアニメや小説があるんだよ。筆者はバカkkかぁ⁈」

「相変わらずやかましい子だねぇ...はいさっさとおし!」

「だいだい多江姉のしごきがおかしいんじゃないのかい?!毎日毎日大根運んで、白菜運んで、またまた大根運ぶ!!!!。ていうか八百屋以外の仕事とってきてよねぇ!?」

その魂の訴えに多江がピキッと、

「仕方ないじゃないのそこの八百屋様以外仕事ないんだから!?大体この天下の大江戸で商売(あきんど)できて食べていける。それが如何に奇跡かアンタにはわからないよ!?」

とまぁ壮大にキレられる俺であった。

お父様 お母様 僕は元気です(泣)


「とまぁそういう事だから、はやく担ぎなさいよ男なんだからさ!」

「くっそぉこの時代の男女差別エグすぎるってぇぇ!!」

 そして、山ほど白菜だの大根だの人参にネギ...それらの野菜をパンパンに天秤の桶に入れ、それを担いで売り捌く。

 いわゆる振売(ふりうり)棒手売(ぼてうり)棒商い(ぼうあきない)っていう商売らしくて、ホントは店の人間が出張的な意味で担いで売るんだが、なんせご贔屓にもうちの何でも屋を使っていただいてる八百屋さんは、天使のように優しい爺さん婆さん二人で切り盛りしてるからわざわざうち使って野菜を売り買いしてるって訳らしい。

「...くっそ、重い。ただひたすらに重い!」

「ほんとなれないわねぇ...ほら弱音ばっかだとゼニが寄らないよ!ほら笑顔で堂々と^_^」

...と、"顔だけ"は良いこちらのお姉さん。半年前に知り合った多江と言って、数年前からこの江戸で、今の職業"何でも屋"を始めたらしい。

何でも屋ってのは、...今の時代でいう便利屋?ってわけでもないけど、とにかく銭さえいただければ何でもする。

ある時は赤ん坊の子守り、またある時は喧嘩の仲裁、またまたある時は...今みたいに他の商いさんのお手伝い...みたいな感じでとにかく見境なく儲けようとする。...俺が思うにこの江戸で合法的に最も醜い金の儲け方をしてる人、それがこの多江姐様だ。(ちなみに結構な美人なのに、一文でもネギろうとする。取り分は7/3。ケチ通り越してガメついくらいと、今の時代で言うところの残念な美人様)

どうやら"先代"と呼べる存在も居たらしいが、今はいないらしい。そして、その人からの教えを受けて今は立派に独り立ち...というわけにもいかず、その日暮らしに近い感じになってる。まぁそれこそここに来たばっかの俺を雇ってくれるお人好しではあるけど。と、そんな話をしてる間に昼だったのが夕方になっとる...

「…終わった…」

「はいはい。ご苦労さま。そろそろ身についてきたんじゃないか?^_^」

「…」

と毎日毎日このように、言い返す力も無くなるくらいヘトヘトになって一日を終わる。悲しいかな、それがここ半年のルーティンになりつつあるがそれでも、この江戸に半年近く生き抜いてきたからか顔見知りになった人や話しかけれる人も"ある程度"は増えてきた

例えば、ここの多江姐と

「おや。いつもご苦労さまダネ^ ^」

「青田のおばさま!!いいえェ〜♩毎日毎日ほんとにどう感謝すればいいやらで〜♩」

「(.…くっそ猫被りおって……)婆ちゃん。これ今日の売上ね」

「洸ちゃんもいつもありがとねぇ毎日辛いでしょう?」

「...//。ハッ別にこれくらいで根を上げるような俺じゃねぇよ!」

「(……アンタこと猫被っとるじゃないの)ふぅ〜〜ん。なら、明日はもうちょい量増やすか。おばさま〜次はもっと持っていきますので^ ^」

「勘弁して」

「おう、帰ってきたか。おかえりよ!」

「...おじちゃん。多江姐がいじめる」

「はぁ?!言いがかりは良しなよ。そもそもアンタが猫被るから行けないんでしょうよ!」

「いや誰が言うてんねん!」

「ハハッ相変わらず仲良いなぁ」

「そうですね爺さん」

と、こんなしょうもない会話を聞いてた青田のばあちゃん。

ここ数ヶ月、毎日のようにうちの何でも屋を使ってくれる青田青物という、俗にいう八百屋を経営してるよくアニメとかに出てくるような聖人のように優しいおじいちゃんとおばあちゃん。

棒商いである程度出張して売る時もあれば、店番をしたり

仕入れを手伝ったりと、まぁ何かと世話になってるからまぁ俺ら二人は頭が上がらない。それに優しい。もう一回言おう優しい。

「すいませーんおじさん!ネギくださ...って姐さんいたんですね。」

「ミッちゃん!今日は早いね仕事は終わりかい?」

「いえ、ひと段落したんで買い出しを。...ってそこにいる影薄い人誰だろと思ったら、風来さんいたんだ」

「おいそこのイヤミ野郎喧嘩売ってる?の前に、いい加減その風来さんってやめろよ!!」

 そしてこいつ、釣り道具職人の三津。

俺がこの街にきて初めて出会った人間...なのだが、他の人にゃまぁニコニコで笑顔振りまいてるくせに、この半年で俺に対する扱いは当初の数百倍ひどくなり"何処から来たかわからない"って意味で風来さん呼ばわりされ、たまに何でも屋として依頼されて行ったら初回の数倍多くの釣竿を待たされ数キロ歩かされ、銭もいまいちしかくれんというまるで畜生くらいにしか思っちゃいない扱いをされている。

そんなケチンボイヤミ野郎だが、仕事の腕前はホンモノで、江戸でこいつ以上の釣竿を作れる人間はいないらしく、しっかりと弾力性しなり、海で大物を釣り上げても折れることはないといい、そんなものを予約制と言って一月に数本しか作らないらしい。そんなオーダメイドだからか値段もそれなりにするが、貧しい人達にも寄り添えるように、既存の釣竿の修繕なども行っており、それに配達までしてると言うさらにお得なサービス付きで(俺はそのナンチャライーツ的な使われ方をこいつからされてる。)

「普段なら人様にそのようなことは言いませんが、何か風来さんには...親近感が湧きますので」

「あぁミッちゃんの言うこともわかるかも!洸ちゃんってなんか...ウン...なんか、そう!何言っても許される気が」

「おいそこのクソ二人。俺が何言われてもウンウンウンウン頷いてるたぁ思ってたらおおまちが「おっとすまん」いっ!!」

と、キレてるのに一言添えただけで一切減速せず俺を突き飛ばした張本人は

「...花屋」

「ありゃ?お錠ちゃんも今日は仕事納めかい?」

「ッ...いえたまたま通りかかって。青物屋からおばさんの声がしたから」

「あらほんと?やだ恥ずかしいィ!やかましくなかった?」

「い、いえ。ただ、その。...綺麗なお声だなと(ボソッ)」

「ん?ごめんなさい聞こえづらかったわ?」

「...ンとにかく、やかましくはなかった...よ//」

「...ねぇ風来さん?」

「...クソが」

「いや口悪」

暴言吐くのも無理はなかろう。

花屋の錠八。

うちの何でも屋のお向かいさんなお花屋を経営してる。のだが、これまたイケメンで...それだけならまだ良いものをこいつも嫌ァ〜な奴で、ケチでネチネチな横の奴とは違いズバッと氷柱のような突き刺さる一言を毎回吐くいわゆるナチュラルイヤミ野郎。なくせに毎週かなりの数の女性が寄ってくるがその理由が、

「...///」

そう。こいつは女性、特にうちの多江姐にゾッコンでちょいと話しかけれただけでこの有様。

まぁこいつの場合、言い寄ってくる女性にも(気持ちはありがたいが...)だの(いや、その。俺には...心に決めた...えっと...ウッ)だのしどろもどろになるからムッツリなのか、女性恐怖症ってやつなのかはわからんが多江姐に特別な感情を抱いてるのは間違い無いだろう。まぁそんな江戸にまで来て、そんな青春ドラマを見させられて、面白半分妬み半分で見てたら、

「おい風来何ジロジロ見てやがる。」

「...ナニモミテマセンヨーダ。オハナヤサン(笑)ノサクライロノ恋事情ナンテキョウミガ1ミリタリトモワキマ「これ以上喋るな顔ォ変えるぞ?」すみませんでした」

「フン 、まぁいい。」

出たよ脅したら済むと思ってるこいつの嫌なところ!!なんて思ってたら、

「あらあら二人とも喧嘩はお良しよ。洸ちゃんはすぐお錠ちゃんを怒らせる!お錠ちゃんもよくわからないことで手を出しちゃいけないよ。あなたは男前なのに、力持ち!それでいて優しいのが取り柄なんだからさ(o^^o)」

「...///、そ、そうかい。」

「そうそ、だからそんなナヨナヨせずにしっかりとしな!江戸一番のお花屋さんはあなたなんだから!!」

「...わかった。これからも頑張るよ。」

と、そんなクッソみたいなやり取りをしてるコイツらと、

「...フフッ」

「何笑ってやがるの?」

「いえ、毎回毎回懲りないなと思いまして。」

「...ケッあんなものを会うたびに見させられる俺も身にもなれってるんだ」

「そこは同情します。」

「だろ?何かいいアドバイスをくれよ。このままなら砂糖吐くわ。」

「簡単ですよ。あなたも僕のように諦めてサッサと無の境地に行けばいいのです。」

それができたら苦労しないのよ。...ハァッたく!、多江姐そろそろ帰ろうぜ。飯の支度だのいろいろあるだろー」

「わ、あらやだいっけない!話しすぎちゃった。じゃあまたね。お錠ちゃんにミッちゃん」

「...また。」

「はい。ではまた。」

「...」


新しい世界で手に入れた新しい日常。だが、その"日常(幸せ)"とやらが地獄に変わるのにはそう時間はかからなかった。


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