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58 魔人ジャマイカ

どうぞお楽しみください。

【魔人ジャマイカ】


 私はこれからの戦いを想定して、アイアンカイザー(鉄拳鍔)を両手に嵌め、怒り狂う魔人邪魔烏賊ジャマイカに対して即座に戦闘態勢をとる……。


「フゥォアァァァァ~」

 怪鳥のような声を発して腹から息を吐きながら、足を大きく開いて右手と右足を前に出し、魔人ジャマイカに対して身体をぐっと低く横向きに構えて、左手の親指で左頬に付いた烏賊墨をすっと拭らった――


『クイックイッ!』

 そして、右手の人差指と中指をくいと曲げて魔人ジャマイカを挑発する……。


「イカッカツカッカッァ~……我と戦うだと……この魔人ジャマイカ様と只の人族如きが同じ土俵で戦う……思い上がりも甚だしい! お前は特別に我が裂きイカにして食ってやろう! まぁ~安心して逝くがいい……お前が心配せずとも、全てが七日と七夜の大洪水に流されこの世界は終わるのだ! これが魔王ルシファ様により定められた人類の運命なのだ!!」

 魔人ジャマイカはそう言うと、目をかんかんと光らせていきなり襲い掛かってきた――


「人族など魔人の足元にも及ばぬ……戦いはこの唯の一撃で終わりだ!」


『シュゴォォォ~』

「槍イカ!」

 魔人ジャマイカはしゅっと私の真横に回り込むや、右腕の触腕を伸ばし槍のように叩いてきた……。


「……一騎打ちだぞ!? 合戦じゃないんだから……そんな虚を突く攻撃じゃ当たるはずもないじゃないか……欠伸が出るぜ……」

 私は魔人ジャマイカの隙だらけの横槍に得意の左のクロスカウンターを合わせると、続けざまに拳の連撃を浴びせた――


『ドッゴッ~ン、シュ、シュ、シュ、シュ』

「コンビネーション攻撃だっ! こめかみ、ジョー、ストマック、レバー、みぞおちに、パンチ、パンチ、パンチィ~……地獄の悪魔、魔人ジャマイカよ……受けきれるものなら受けてみろ!」

 まさにサンドバックの蛸殴り、烏賊だけど蛸殴りでリーのように格好よく決めたつもりだったのだが……。


「お前、何をしている……我を殴ってはイカ~ん!」

『ピカピカピカッ、シャララララ~ン』

 魔人ジャマイカは、痛かったのか、怒ったのか、ストレスからなのか、烏賊の活き造りのように、触腕と烏賊ゲソをきらきらとメタリックな七色に輝かせた……。


 烏賊が皮膚の色を瞬時に変化させるのは、その神経細胞の働きであることが判明している。 

 烏賊のメタリックな輝きは、微小な板状構造の集まりを持つ、皮膚細胞の虹色素胞が光を反射して生まれる。その虹色素胞は神経系の胚組織である色素胞の一種で、反射した光は短波長の青色となっているようだ。

 攻撃の意思を示したり、カモフラージュとして活用しているのだろうか?

 魔人ジャマイカの皮膚も同様に非常に鮮やかな色彩となっていた……。


烏賊飛行イカフライ!」

『シュォォォ~ン、キューンキューン、キューンキューン』

 魔人ジャマイカは巡航ミサイル――トマホーク――のように上手く高波を回避しつつ、海面すれすれを飛ぶと――


烏賊様矢波イカサマヤロウ~」

『パシュ、パシュ、パシュ、パッシュシュシュシュシュッ!』

 対戦車ミサイル――ジャベリン――の如き音を立てて、八発の烏賊ゲソミサイルを同時に発射した。


「ふっ……俺の左手にはこいつが宿っているんだぜ!」


流星りゅうせい捕食者ラプタ~!!」

『キュォォォォォ~ン……ピカ~ン――ドドドドドドドド~ン』

 私は流星ラプターを繰り出して、烏賊ゲソミサイルを全て迎撃するが――


烏賊輪切イカリング!」 

『ギュギュギュギュギュュュ~』

 どのような原理なのかは全く分からなかないが、突として七色に光る束縛の三つ光輪が現れ、私の身体を固く縛り付けた――


錨降ろしイカリオロシ~」

 魔人ジャマイカがそう叫ぶと、虹の光輪はいきなり重くなって、子泣じじいに抱き着かれたかのように私を押し潰そうとするが――

――やらせはせんよ――


「ダブルパンスラッガ~!」

『スッパパパパッ!!』

 アップルパワーによって限界まで加速されたパンチャックは、白い軌跡を残して魔人ジャマイカの拘束の光輪をあっさりと切断してしまった……。


「イッカさまぁぁぁ~、それはイカがなものかとぉ~……イッカァァァ~」

『ギュルギュルギュルギュルギュル~ル~ルルル~』

 魔人ジャマイカの怒りが浸透に発すると、邪魔烏賊の腰にある2つの目が風車のように突然凄い勢いでぐるぐると回り出した……。


烏賊拡張イカクチョウ、グゥアッオオオォォォ~」

 魔人ジャマイカが更なる気勢を上げた――


『ブゥルゥルゥルゥルゥ~!』

「……なんじゃ、そりゃ~?!」私は思わずそのような声を上げてしまった。

 魔人ジャマイカは巨大な大王邪魔烏賊ダイオウジャマイカ――全長80m、触腕30mの烏賊の怪物――へ大変身を遂げると、ムーの神殿を離れ主戦場をその巨体の動きやすい海へと変えた……。


烏賊鎚イカヅチッ!」

 ダイオウジャマイカの巨大な2本の触腕の先端が、金槌ハンマーの如くかっちんかっちんに硬化すると――


「ええじゃなイカ~、ええじゃなイカ~、ええじゃなイカ~」

『ブォォォ~ン、ブォォォ~ン、ブォォォ~ン』

 ダイオウジャマイカは狂乱的に歌舞しながら、その巨大なハンマーをあたりかまわずぶんぶんと振り回す……。


 しかしながら、要所要所で林檎加速アプセルを使って回避行動を繰り返す私に、そんな攻撃は一向に当たるはずもない…………。

 痺れを切らしたダイオウジャマイカは、とうとう奥の手を出してきた……。


神蹴球再構築ペレストロイカ!」

 ダイオウジャマイカは臍辺りにある漏斗から七色に輝く虹玉を生み出すや、


「大激怒ォォォ~!!」

 2本の巨大な触腕を使って、こちら目掛けて虹玉を打ち出そうとしている――


「勝機!」

 ダイオウジャマイカのその攻撃の瞬間を逃さず、こちらも切り札を切った!


「アッチョォォォワァ~、流星ぃぃぃ~ペナルティ~キィィィッ~ク――流星PK――!」

 虹玉を避けると被害がバラコアの広範囲に及びそうだったので、私はアップルパワーを開放して超加速すると、空気との摩擦で真っ赤に燃え上がった左足で、ダイオウジャマイカが魔力で練り上げた虹玉をどんぴしゃで蹴った!


『グワァシャッン、ドッゴォォォ~ン』 

――ゴォォォォォ~ル――

 

 その瞬間、稲妻と疾風が唸りを上げた――

 『流星PK』のアタックにより、ダイオウジャマイカは紅玉を腹に抱えたまま、グランマの女神像の方へ海面すれすれにぶっ飛んでいった――

 その刹那、私は縮空シュックウで空間を捻じ曲げてグランマ女神像の目の前に瞬間移動すると、遥か遠くの水平線目掛けてもう一枚のジョーカーを切った……。


「はぁぁぁ~、流星ぃぃぃ~よっこら掌~!!」

『フワッ、ギュル、ギュル、ギュルル、ギュルルルゥゥゥ~……ドッガァァァ~ン!』

 私は両手で蓮の花を形作ると、掌の中に空間を超圧縮した2つの球を作り、それらを掌の中でぎゅんぎゅん回してから螺旋を掛けて打ち出し、飛んできた方向とは真逆のパンサラッサの大洋へ、ダイオウジャマイカをもう一度ぶっ飛ばした。


『ドッドッドッドッドォォォォォ~』

「イイイッ、イッカぁぁぁ~ぁぁぁ~ん」

 『流星よっこら掌』で海面と平行にぶっ飛ばされたダイオウジャマイカは、何処までも続く2本の波柱を高く上げながら水平線まで飛ばされて、遥か彼方に立ち込めた暗雲と一緒にしゃぼん玉の如く大きく弾けて消えた…………。

――波の~線路は続くよ~どこまでもぉ~ぽっぽっ~――


『………………ボッガァァァーン、シャララララ~』

 遥か彼方の巨大な水蒸気爆発によるキノコ雲が消えると、水平線には巨大な5つの虹が掛かった。


『ギュ~ン、ギュギュッ』

「おっ~とっとっとっ……ふぅぅぅ~……あぶにゃ~い」

 一方、『流星よっこら掌』の反動でダイオウジャマイカと逆方向にぶっ飛んだ吾輩は、林檎逆噴射アップルリバースラストで自身に逆噴射のブレーキを掛け、グランマの女神像にぶつかる直前で緊急停止することに成功した……。


「ああっ………………」

「グルルッ………………」

 それを見ていた海王ポドンは、やっと正気を取り戻した水龍レヴィアと一緒に呆気にとられて二の句が継げず、水平線に掛かる巨大な虹を、その虹に繋がる無数の虹のトンネル越しに口を開けたまま眺めていたのだった…………。

ありがとうございました。

次はいよいよバラコア編の最終話です。

ポセの新たな目標とは……

次回をお楽しみに。

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