51 火の鳥
こんにちは、
三獣士との決着はいかに? 黒騎士の正体とは一体!?
どうぞお楽しみください。
【火の鳥】
「おっりゃぁぁぁ~」
ハッカイは馬鍬のような釘鈀を振り下ろしてきたが、大振りの隙だらけで冗談にも程がある。
「この豚、知の化身とか何とか言ってけど……オークと同じ……馬鹿力だけか」
『ドスッ!』
ハッカイの右足の前にさっと体を入れて入見で肩先で釘鈀をすっと躱すと、釘鈀はそのまま地面にぐっさりと突き刺さった。
「…………てめえ~避けんなよ! ぐぬぬぬ……ふんごぉ~」
ハッカイは私が到底聞き入れられないことを叫びながら、地面に深く突き刺さった釘鈀を、大きなカブでも引き抜くように一生懸命に引っ張っていた。
「ハッカイさん、大きなお尻がガラ空きですよ――」
『パッカァァァ~ン』
私はハッカイの尻をパンチャックでぶったたいた――
「ブッヒィィィ~」
ハッカイは大きな叫び声を上げながら、ざざっと音を立てて顔を土につけると、
「言わんこっちゃない、このエロ豚が……」とゴクウは呆れ、
「豚の耳に念仏か……」とゴジョウが憐れんだ。
「ペペ……ぺっぺっぺっ……こんにゃろぉ~」
ハッカイは口に入った土を吐き出すと、私を睨みつけた――
「もっ、もう~あったまきた……てっ、手加減なんか止めた……やちゃうぞ馬鹿野郎~」
頭に血が上ったハッカイは何の考えもなく、釘鈀を頭上に振り翳して襲い掛ってきた。
私はささっと両腰に交差してパンチャックを収め、振り下ろしたハッカイの釘鈀を受け流した。
それから手首を極めながら逆関節に捩じって小手返しにとり、勢いよく豚を地面に転がした。
「りゅうせいかわらわりぃぃぃ~(流星瓦割り)! アチョォォォ~」
私は足元に転がっているのハッカイの腹目掛けて、真っ赤に燃え上がる流星チョップを振り下ろすと――
「ブヒィィィ~」
ハッカイはまるで屠殺される豚のような断末魔の叫びを残して、東雲色の光の粒となって宙に消えた…………。
「黒紫色の魔素ではないので、やはり『魔のもの』とは違うようだな」
「……次は儂が相手をしようぞ!」
強面の河童のような風貌のゴジョウがずんずんと歩み寄り、首を回すように振ると、最後にグィッと睨んで見得を切った。
『タタン、タン、タン』
「よっ、鎌倉屋!」
私は思わず小さく大向うを掛けてしまった。
「儂の名はゴジョウ、儂の勤めをなさん……いざ、いざ、いざ、候」
「我が名はダイサク、そちが申し出に奉じて参るでござる」
――郷に入れば郷に従え(When in Rome, do as the Romans do.)ということだ――
「ウォリャァァァ~」
『ブン、ブン、ブン!』
ゴジョウは降魔の宝杖を頭上でびゅんびゅんと回転させると、その勢いのまま私を薙ぎ払った。
『ト〜ン、ト〜ン、ト〜ン』
しかし、私はゴジョウの頭上を縦横無尽に飛び回り、河童の攻撃をあざ笑うかのように躱した。
『ブォォォ~』
私を打ち払おうとして、降魔の宝杖が更に勢いよく空を切る。
五条の大橋のお話の弁慶と牛若丸のような、地対空戦が暫く繰り広げられていたのだが…………。
「こっ、この~蠅のようにちょこまかと逃げおってぇ~」
ゴジョウは業を煮やしてとうとう妖術を使い始めた。
「乱水刀!」
ゴジョウが妖術を唱えると、複数の水の刃が私に襲い掛かってきた。
私は宙を舞いながら鋭い水の刃を身体を半身にして紙一重で躱す――
「趙雲子竜!」
『シュゴゴゴゴッ~』
ゴジョウは間髪入れずに水蒸気を纏わせた4本の水竜の牙で私に攻撃した。
『ギャギャギャギャ~ン』
私は4本の水竜の牙をパンチャクで受け流してゴジョウの懐に飛び込むと、河童の分厚い胸板を前蹴りで蹴飛ばした。
「うぐっ、逃げ果せるのもここまでだ――水籠!」
『シュバ、シュバ、シュバ、シュバァァァ――』
突然周囲に鳥かごのような水の檻ができて、私はそのまま球状の籠に閉じ込められてしまった。
「主、もう逃がしはせんぞ、太刀を寄越せ!」
何と言うことか、戦いの最中にもかかわらず、ゴジョウは私の武器を手に入れようとして攻撃を止めてしまった。
「この武器が欲しければ……差し上げますので……ご自由にどうぞ♪」
私が水檻の間からパンチャックを左右同時に投げ渡すと、ゴジョウは目の色を変えてそれらの武器を手に掴んだ。
「ぬぬぬっ、おっ、重いっ!」
ゴジョウは私の武器を持ち切れずに前屈みになった――
「勝機っ!」
私は縮空を使ってゴジョウの目の前に水籠を飛び越え瞬間移動すると、河童の両脇の下に自分の腕を差し入れて羽交い締めにした。それから首の後ろで組んだ両手で後頭部を押し曲げてから持ち上げ、頭上で両脇を抱えて十字架に磔たような形にして必殺の流星技を繰り出した。
『流星☆彡ハイジャックボ~ム!』
私は空気との摩擦熱で真っ赤に燃え上がる河童の頭を、高速で回転しながら地面に思いっきり叩きつけた!
『グワッシャ〜ン……』
武器に目が眩んで勝利を逃したゴジョウは額の宝石を砕かれ、髑髏の瓔珞の首飾りを飛散させて東雲色の光の粒となり宙に消えた……。
「ははははっ……やっぱ、豚と河童じゃ……おめえには全く歯が立たなかったな。おめえは強え~、俺には分かるぜぇ~、わくわくするぜ~」
ゴクウはそう言うなり如意棒を右脇に抱え、左の掌を出して私との間合を計りながら臨戦態勢に入った。
「フゥォアァァァァ~」
それに対して私は、腹から息を吐きながら怪鳥のような声を出し、足を大きく開いて右手と右足を前に出した。
ゴクウに相対して体を低く真横に構え、繋いだ片方のパンチャックを左の脇に挟んだ。それから親指で左の頬をすっと拭うと、右手の人差指と中指をくいくいっと曲げて猿を挑発した。
「敵も猿もの引っ掻くもの! かっちょよく、やってくれるねぇ~、あちょぉぉぉ~」
私が構えるのを待って、ゴクウは一気呵成に打ち込んできた
『パッカァァァン! パッカァァァン! パッカァァァン! パッカァァァン!』
如意棒とパンチャックが突き当たり、2人の周囲に幾重も衝突音と衝撃波が重なり合う――
『ギュルルルル――』
ゴクウは如意棒にコークスクリュー式の回転を加えて鋭く突いてきた。
『ガッギュルルル~、バシュッ! パッパッ?』
私はその攻撃を受け流しゴクウの右脇下の急所に右肘を打ち込んだが、猿はその攻撃を残像拳で避けて右に回り込み蹴りを入れてきた。
「林檎加速」
私はアップルパワーを使ってゴクウの攻撃を躱しながら横に回り込み、パンチャックによる裏拳で顔面をぶっ叩いた。しかし、それもまた猿の残像だった――
「気猿斬!」後方でゴクウが何かを唱える声が聞こえた。
『ギュォォォ~ン』
ゴクウの『気』が円盤上のギザギザのカッターの刃となり、私の胴を真っ二つに切断せんとかっ飛んでくる――
「片手鍋硝子!」
私はパンチャックをそれぞれに切り離すと、気猿斬目掛けて片方のパンチャックを投げつけた――
『パッリィィィ~ン』
パンチャックは林檎引力により超加速されて空気との摩擦で白熱化し、空中に真っ白な残像を残す。そして、ゴクウが繰り出した気猿斬を電光石火の早業で破壊する――
『ヒュゥゥゥゥ~』
間髪入れずにゴクウが自分の頭の毛を毟り、頬を膨らませ勢いよく吹き飛ばしすと、
「ウキャキャキャキャ~」
頭の毛は小さな猿の軍団となって、私に向かって全員で一斉に突撃して来た。
『流星☆彡フォティフォマグナム(44MAGNUM)!」
十八番の流星技を使って小猿の軍団を蹴散らすと、小猿たちは再び散り散りの毛となり硫黄の臭いを残して燃え尽きる――
「觔斗暈! おりゃぁぁぁ~」
その刹那、ゴクウは蜻蛉を切りながら、如意棒で光り輝く光速の突き放った!
「ホッワッタァァァ~」
『ギャギャギャギャギャ~、ザシュッ――ガシッ!』
光の輪を纏った如意棒をパンチャックで往なしながら、私はその力を受け流し如意棒をパンチャックで地面に抑えつけると――
『ガバッ』
ゴクウが棒先を持ち上げた。私はその場でさっとパンチャックの上に飛び乗った……。
「なっ、何だと……伸びろ、如意棒――」
『グッグィィィィィィィィィィ~ン』
ゴクウは如意棒を伸ばして、私との距離を稼ごうとしたが……。
「やらせんよ――流星☆彡テールブラントスライドアタッ~ク!」
私はパンチャックに乗ったまま、スケートボードのような姿勢で伸びる如意棒の上を逆方向にアップルパワーで加速した。
パンチャックは電磁加速砲の如く火花を放ちながら、如意棒という単線路の上を真っ直ぐ突っ走ると、真っ赤に燃え上がってゴクウと衝突した――
『ドォギュワァァァ~ン、フゥゴォォォ~』
ゴクウは真っ赤に燃えながら呟いた。
「おめえ、やっぱ強えな、久々に楽しい戦いだったぜぇ~」
ゴクウはそのように言い残すと、東雲色の光の粒となって宙に消えたのだった……。
「…………よもや……ゴクウまでもが負けるとはな! お前……名は何という?」
高みの見物と洒落込んでいた黒騎士が聞いてきた。
「ダイサクです」
「……ダイサクか……覚えておこう……」
『ガシャッ』
黒騎士がすっく立ち上がると、何たることか黄金の王座は『炎の馬』に変わった。
「ブッヒィヒィヒィヒィ~ン! ブルルルルゥ~」
「…………ダイサクよ……これが最後の試練だ。我を馬から降ろして見せよ……さすればお前の望み通り……火の鳥の結晶をくれてやろう」
黒騎士はそう言って鞍に跨ると、腰の黒刀を抜いて天に掲げた。
「炎の馬よ、天地を駆け抜けろ……はぁっはっはっはぁ~」
「ヒヒィィィ~ン」黒騎士の呼びかけに呼応して火の馬が力強く嘶いた。
炎の馬は黒騎士を乗せたまま勢いよく飛び出すと、私に向かって一直線に突撃してくる。
そして、黒騎士はすれ違いざまに私の首を狙って斬り掛かった――
「ふんぬっ!」
「林檎加速」
私はその鋭い斬撃を躱して、忍者のように炎の馬の腹側に潜り込んだ。
「ふんっ……それで隠れたつもりか?」
そう言うと黒騎士は私を串刺にしようと刀を振り下ろした。その刹那――
「縮空」
「なにっ!?」黒騎士は私を見失った――
『流星雪崩式リバース・フランケンシュタイナ~』
私は黒騎士の背後の空間に突然現れると、鎧の肩に肩車のように飛びついて両足で奴の首を挟み込んだ。そして、そのまま後ろ向きに跳んで後宙返りのような体勢で回転しつつ、巻き込んだ相手の後頭部を地面に垂直に打ちつけた。
『ドォゴォォォ~ン』
黒騎士は真っ赤に燃え上がって地面に突き刺さり、熱で溶け落ちた真っ赤な鎧兜が、そこら中ばらばらに散っていた……。
「うわっ……やっ、やりすぎたか…………えっ!?」
私は地に落ちた黒騎士を見て、思わず驚きの声を上げた。
なぜならば……その鎧の中身は空っぽだったのだ!?
「…………死んじゃいないよな……どうしよう……オ~パッキャマラド~パッキャマラド~パオパオパオ~ン」
私は黒騎士を、ケレニャガ山の火口が大きく陥没するほどの勢いで、馬から降ろしてしまったぞう……。
「降ろせと言われていたけれど……まぁ神様と言われる位だから……この程度、許容範囲と言うことできっと許してくださるはずだよね…………」
私はそういう風に前向きに考えることにした。
そうでないと今までの努力が無駄になって、火の鳥の結晶が手に入らなくなってしまうだろう。
その時、炎の馬が『火の鳥』に変わった。
火の鳥がケレニャガ山の上空を旋回すると、大きく揺れる巨大な虹のカーテンが発生した。
そして、火の鳥の言葉が直接私の脳に響いてきた……。
「ダイサクよ……万物は流転する……死すら恐るることなかれ! 忌むべきは停滞……ダイサクよ常に想像せよ……さすれば道は自ずと開かれん!!」
火の鳥はそう私に言い残すと、天を裂いてその割れ目に消え去った…………。
「神も見かけによらぬもの……火の神様エンカイは、黒騎士ではなく椅子の方だったようだ……」
私は黒騎士の鎧の近くに落ちていた『火の鳥の結晶』『如意棒』『降魔の宝杖』『釘鈀』をさっと拾ってアイテム袋に仕舞い込んだ。
それから、気を失っているロビンを背負って急ぎその場から離れたのであった。
◇◇◇
私たちが洞窟から出るやいなや、ケレニャガ山が微振動して硫黄の臭気が強くなった。おまけに地鳴りまで聞こえてきたので私が十分に警戒していると……。
『ドッォゴォォォ~ン』
ケレニャガ山の火口が噴火して私たちの背中で洞窟が塞がってしまった。
――危機一髪、危なかった――
しかしながら、未だ危機は去っていなかった……。
『ガガガガガガ~ン、ドガッ、ドゴッ、ドッゴ~ン』
直径十センチメートルから1メートル程のサイズの火山弾が、時速360キロから720キロの速度で私の頭上から一斉に降り注ぐ――
『カカカカカ~ン、カンッ、カンッ、ガッカ~ン、ガガガガガ~ン、パッカァ~ン』
私はパンチャックを使い、火山弾をホームラン競争のように弾き飛ばすが、いくら弾いても切りが無い……。
「縮空!」
それで私はアップルパワーを使い、ケレニャガ山の麓のサバナ草原まで瞬間移動したのだが……。
「あっ……」私は移動先で小さく声を上げた。
「ミャッ……」ミーアキャットも呼応するように小さな声を上げた
その時、たまたま噴火という異常事態を警戒し、巣の入り口で2足で立ち上がっていたミーアキャットの尻尾をうっかり踏みつけていたのだった……。
私はミーアの瞳をじっと見つめ、ミーアも私の瞳をじっと見つめ返す……。
互いに見つめあう瞳と瞳、温もりを信じあう野生王国の仲間……地球の夜明けはもう近い♪
この瞬間、間違いなく二人の心は種族の壁を越え一つになっていた!
――ふっ、これもダイバーシティか――
ありがとうございました。
刀匠ガンツは人生の最後に如何なる刀を打つのでしょうか?
次回をお楽しみに!




