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34 神ノ島

こんにちは、

神ノ島へ向かったダイサクたち一行が目にしたものとは……。

どうぞお楽しみください。

【神ノ島】


 私たちは気絶している6人の冒険者たちを蛸糸で捕らえて縛り、冒険者ギルドより急遽派遣された保安官に引き渡した。

 あの七人の侍方は、後日ジノーヴァ公国の危機的状況の折に、世のため、人のため、己が信念のためにその凄腕を振るい、救世主として八面六臂の大活躍をすることになるのだが…………。


「ダイサクさん、無頼な冒険者サムライたちを追い払っていただき、ありがとうございました。でも……ごめんなさい……わたし、お約束した報酬の金貨が払えません」と言って、

 キャロは耳と尻尾を垂らして、申し訳なさそうに口籠った。

 私にはその仕草がめっちゃ可愛くて愛らしいく――スコティッシュフォールドみたい――思えた。


「いえいえ、キャロさんとお約束した依頼クエストは、まだ半分しか終わっていませんよ。それに、報酬はキャロさんが払える時に払ってもらうという約束でしたよねっ♪」

 私は軽く笑ってキャロに答えた。

「そうは言っても……人の力では竜神様や津波には敵いっこありません。もう十分です……ご自身の命は大事にしてください」

「いえいえ、全ての依頼が達成されなければ報酬は頂けません。最後までクエストに挑戦させてください……それが西部……じゃなくて、冒険者の掟さぁ~ね☆彡」

 私はそう言ってパンツの前のポケットに左右の手を各々入れると、前途洋々、口笛吹きつつキャロの前をどんどん歩き始めた……。


「もう~西部の掟って……まったく何なんにゃの!?」

 キャロは不可解な面持ちをしながら、慌てて私の後を追いかけたのだった………。


◇◇◇


 次の日の夕刻、モレアの漁村の沖にある竜神様が住まうというバリハイ島へ、予定通り3人の生贄を捧げに行くことになった。

 ちなみに、モレアの猫耳族の人々はバリハイ島を『神ノ島』と呼んで、その島を、畏怖し、敬畏し、崇めていた。


 結局のところ、神ノ島バリハイへ向かう生贄として選ばれた3名は、猫耳族のキャロ、完全女装したダイサク、悲劇のヒロインのオーレリアとなった。

 オーレリアは、年の頃14歳から15歳、身長155㎝、体重40キロ位の人族の娘で、艶のある赤い髪、金色の美しい瞳、白い肌が美しい女の子だ。

 長い旅の途中で両親が亡くなり、一人で祖父の所へ向かっていた所を、何とも運の悪いことにあの七人の侍に捕まってしまったらしい……。


 魔獣や魔物が徘徊する物騒なこの世界を、こんなにも小さな子供がたった一人で旅するのは如何なものかとは思ったが、つい最近、母親が道中で病に罹って亡くなったらしく、祖父に会うため仕方なくそのままの旅を続けているとのことであった。


 竜神様への生贄として一緒に連れて行く女性について、モレアの漁村とは全く関係がない人族の女の子ではなく、この漁村にいる他の女性を手配できないかとキャロからボーラ村長へ繰り返し頼んで貰ったのだが……。


「この村にはとっくに生贄として差し出せるような女は一人もおらんのじゃ……」

 ボーラ村長は泣きたいほどつらい気持ちで、彼女キャロに許しを求めて泣きを入れたそうで、私たちはやむなくオーレリアを生贄として一緒に連れていくしかなかった……。

――君は私が守まもるから、オーレリア、ごめんにゃ、ごめんにゃぁ~――


 結果として、当初の3名が生贄として手漕ぎの櫓ぎ舟に乗って、神ノ島バリハイへ行くことになったのだが――えっこら、よっこら――と櫓を漕ぎ進んで行くのは、体力パワー技術スキルこつトリックが必要でかなり大変な労力だ!


「片道であればなんとか頑張って私か漕ぎます!」

 殊勝にもキャロがその役を買って出てくれたのだが、私の計画では猫娘の体力を帰り道に取っておく必要があった。そこで『行き』は林檎引力アップルパワーを使って神ノ島バリハイまで向かうことにした。

――行きはよいよい~帰りは恐いにゃ~――


 私たちの乗った櫓ぎ舟は、人力による櫓漕ぎではなく理外のアップルパワーを主機関として、45ノット――時速83㎞――で海上をかっ飛び、僅か5分足らずでモレアの漁村沖合7キロメートルの位置にある神ノ島バリハイに向かった。


「イャッホォォォー」

 私は楽しさの余り大声を出して――驚き、桃の木、山椒の木~ブリキに、タヌキに、ケンタッキ~、ぶっ飛べぇ~櫓漕ぎターボォォォだべぇ~――心を躍らせた。


「なっ、なんにゃ、のぉぉぉ~」とキャロは驚いて大声で叫び、

「ひっ、きゃぁぁぁ~、もう、やめてぇぇぇ~」とオーレリアが悲鳴を上げた。

 私が喜び興奮している一方で、キャロとオ―レリアは櫓ぎ舟の速度が余りにも速すぎて、まるで生まれて初めてジェットコースターに乗ったかのようにびっくり仰天していた。


「あん、あんにゃの~?」とキャロが小さな声で呟き、

「ほっ、帆もないのに……」とオーレリアが自身に問い掛けた。

 二人はふらふらになりながらも、ちらちらとこちらに視線を送って、櫓ぎ舟の速さの理由を聞きたそうにしている。

 そこで…………。

「ここだけの秘密でお願いします。ねっ♪」

 私はけんもほろろに彼女たちに口止めを行って、林檎引力アップルパワーが外に知られないように先手を打ったのであった…………。


 神ノ島バリハイは岩の隆起により形成された断崖絶壁の火山島で、私たちの櫓ぎ舟はこの島で唯一の砂浜に着いた。

 砂浜の眼前には大きな洞窟があって、私たちは上陸するとボーラ村長に言われていた通りに洞窟を抜けて神ノ島バリハイの中心に向かった。

 暗い洞窟の中は陸地と浅瀬が混在し、活火山特有の硫化水素いおうのつんとした匂いが立ち込めていた。それから、ところどころに白骨化した頭蓋骨が落ちていた……。


 洞窟を抜けると火山活動によってできたと思われる大きな凹地カルデラの大広間に出た。

 その中央には20平方メートル程の一辺4.5メートル程もある正方形の台座が、暗闇の中で月明かりに照らされて薄っすらと浮かんで見えている……。


「あ、あれがボーラ村長が話していた『生贄の台座』にゃの?」とキャロが呟いた。

 暗闇の中をじっと目を凝らすと、台座の上には以前の生贄と思われる、濡羽色の艶のある黒髪、艶めかしく透き通った白い肌、鴇色の虚ろな瞳の猫耳族の女がひとり静かに横たわっていた…………。

ありがとうございました。

次回をお楽しみに!

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