29 流星竜巻
こんにちは、
帝王シャーキンとの戦いの結末は如何に?
どうぞお楽しみください。
【流星竜巻】
アップルパワーの強力な遠心力によって発生した上昇気流は竜巻へと変わり、その竜巻の上方には直径10㎞程の超巨大積乱雲までもが発生した!
それから流星竜巻は全てのペルシア帝国軍を一気に大空へ巻き上げた――
『OMG,It's incredible!(ああ、神様、信じられませ~ん) 』
ペルシア帝国軍の金属製の武器はぶつかり擦れ合って火花を発生させ、その火花は、飛散した燃料、破砕した木片、破れた布等に燃え移った。
すると――流星竜巻は正に火災旋風の如き燃えあがる風姿となって、即座に辺り一帯を炎の渦に巻き込んで行った。
『ゴォ~ゴォ~ゴォ~、ゴォゴォゴォォォ~』
流星竜巻が地下鉄の如き轟音を発し、燃え上がりながらペルシア帝国軍の陣地を駆けずり回る……。
「あぎゃぁぁぁ~、うぎゃぁぁぁ~、おぎゃぁぁぁ~」
兵士たちは悲鳴を上げながら業火に呑まれ、
「パォォォ~ン」
毛巨象は悲しく吠えて宙に浮きあがり、
「ニャ~ゴォ~」
剣歯虎は飼い猫のように泣きながら空を飛び、
『バキバキバキッ、ギュオォォォ~ン』
戦車や荷馬車は木っ端微塵に砕かれて荒ぶる風に吸い込まれた――
風速毎秒100メートルで吹き荒ぶ流星竜巻が、時速100キロでペルシア帝国軍の中を縦横無尽に暴れ回った。
すると、1キロメートル四方にも及ぶ10万のペルシア帝国軍といえども、あっという間に打ち壊され壊滅してしまった
流星竜巻によって大空に巻き上げられたペルシア帝国軍は、最後には線香花火のように燃え尽きて海に落下し、大海原の藻屑となり消えゆきにけり……。
『是非もなし……自然災害の前では余りにも人は無力だ』つくづくと思う。
そして元の場所には、関刀のような形状の『神龍偃月刀』を地面に突き刺して、辛うじて流星竜巻の暴風と業火に耐え抜いた、自慢の白粉の化粧を真っ黒な煤で汚した帝王シャーキンが……一人……膝をついて私の方をじっと睨んでいた……。
「こっ、こっのぉ~、神に盾突く愚か者よ! 貴様はその無残な死を以って罰を償うが良い!」と叫ぶと――、
「ウロロロォォォ~」
帝王シャーキンは低く大きな唸り声を上げると、眩しく輝いて魔の化身に変身した。
「我は魔神シャーキン……この姿を見られたからには絶対に貴様を生かしておくわけにはいかん!」
魔人シャーキンは、白い肌に銀色の瞳、魔法使いのような大きく長い鼻、大きく裂けた口に紫色の唇を持っていた。
また、前腕と足には猛禽類の鷹のような金色の鱗と鋭い爪、左右の側頭部に片翼1.5メートル以上の大きな翼と尾羽を備えていて、恰も人と鳥の嵌合体のような魔物の姿に変わっていた。
「…………、魔人シャーキン!?」――やはり人外の魔物だったか――
帝王シャーキンはペルシア帝国軍の中では魔力量が半端じゃなかった。
魔の化身が神の名を騙って国を乗っ取り、他の国々を滅ぼして人々を片っ端から虐殺していたのだ!
私はこれからの戦いに備えてアイアンカイザー(鉄拳鍔)を装備した。
「フゥォアァァァ~」
私は怪鳥のような声で腹から大きく息を吐きながら、右手と右足を前に出して足を広く開いてうんと低く構え、魔人シャーキンに対して体を真横に位した。
それから、親指で左の頬に付いた煤をすっと拭った後で、右手人差し指をくいっくいっと曲げて奴を挑発する。
『メェ~リィ~クリスマス……さぁ……煙突掃除の始まりだ!』
魔人シャーキンはまるで鳥のようにばさっと羽を広げ羽ばたいたかと思うと、私との間合いをさっと詰めた――
「ゴォットキャプチュ~ド(神之足爪捕獲)!」
奴はそう叫ぶと、猛禽類の如き鋭い足爪に魔力を乗せて、鷲のようにばっと襲い掛かってきた――
『チュィーン、チュィーン、チュィィィーン』
私は神之足爪捕獲をアイアンカイザーで受け流す――
「ゴォットクロ~(神之鉤爪)!」
魔人シャーキンは大きな声を張り上げると、直ぐに両手の爪で追撃をかましてきた。
私はそれらの連続攻撃を防御するために、すっと奴の右斜め前の死角となる有利な位置に位した。
それから、立ち技最強のムエタイの防御技である、前蹴り、肘膝防御、片手払いを併用しながら、魔人シャーキンの鉤爪による攻撃を全て相殺してゆく……。
「破魔矢!」
魔人シャーキンが私に向かって左右の側頭部の翼から羽を放った!
それらの白い羽は空中でどす黒い羽の矢へと変わり、私目掛けて猛スピードでかっ飛んで来る――
『林檎加速』
私は韋駄天となって破魔矢を一瞬で躱すと、魔人シャーキンとの間合いを一気に詰めた。
「アッチォッオッー」
私は気合を入れて奴の腹に電光石火の左のストマックブローを叩き込む!
「ドォゴォッ、グッ、グッグワッ」
魔人シャーキンはアヒルのように呻いて体を『くの字』に曲げながらも――
『ブンッ』
私を引き裂こうと右手の鋭い鉤爪を振り下ろした。
私はその手を軽く掴むと手首の関節を捻りながら270度転身し、奴の右手首を返して小手返しで投げ切り地面に転がした。そして、流れるように眉間へ閃光肘打を打ち落とした。その刹那――
『キュキュキュッ、キュィィィィィーン!』
魔人シャーキンはシュッと長い舌を筒状に丸めると、私の顔面に向けてその先端から超音波光線が放たれた――
『林檎加速――』私がすんでのところでそれを躱した。
『ドッドンパァァァァァー』
魔人シャーキンの放った超音波光線は、私の背後でぽっかりと空の暗雲に大きな穴を空けた!
…………魔人シャーキンは殴り合いの接近戦では分が悪いと判断したのか、私が一瞬ひるんだ隙に空へ飛び上がると、神龍偃月刀を手に私の頭上で飛行を始めた。
「神之光輪」
魔人シャーキンは神龍偃月刀の柄の真ん中をその大きく裂けた口で咥えると、肘から先の両腕をぎゅんと飛ばした。
腕はそれぞれがぎゅんぎゅんと高速回転を始め、光輝く空飛ぶ円盤となって弧を描いて私に向かってきた――
「二重片手鍋硝子」
私はパンチャックを切り離すと、神之光輪目掛けてそれをしゅっと投げつけた。それらは白く輝く線路のような軌跡を残して一直線に走ってゆき、神之光輪と空中で正面激突する……。
『カッキィィィーン、キィキィィィーン』
神之光輪の高速回転攻撃を止めることはできたが、それらを破壊するまでには至らなかった。それどころか、奴の左右の両腕は伝書鳩のように自身の元に戻ってしまった。
一方、私の投げた相棒たちは…………。
「母さん……僕の一対のパンスラッガーはどうしたでのでしょうね? 神之光輪と相殺した……あの二つのフライパンですよ……」
『次からはブーメランのように投げてから捕るまでをワンセットにしよう』
魔人シャーキンは神龍偃月刀を両手でしっかりと持ち直すと、
「うごぁぁぁ~、貴様など脳天から真っ二つだ!」
『キィィィィィーン』
神龍偃月刀を打ち下ろしてきた――
『林檎加速』
私がその一撃を紙一重で躱すと、その斬撃は私が今いたまさにその場所を大きく切り裂いた!
『これはこれでなかなかの脅威だが、問題は空飛ぶ魔人シャーキンをどうやって捉えるかだな』
私は奴の強烈な攻撃を躱しながら勝ち筋の戦略を練り描いていた…………。
魔人シャーキンは再び鳶のように私の頭上を旋回しながら、攻め入る隙を伺っている様子だった。
飛行速度は然程速くはなかったことを鑑みると、空を飛んでいれば此方からの攻撃はないとでも思っているのだろうか?
「人如きでは此れは避けられまい……その身を以て神の裁きを受けるが良い―― 『神羽陣』」
魔人シャーキンがそう叫ぶと、空から無数の白い羽がふわりふわりと落ちて来た。
そして、それらの白い羽は私の周囲一帯に散らばると、私の僅かな動きも見逃さない電探の役割を果たす……。
『神狙撃必中矢』
魔人シャーキンは大きく羽ばたき、左右の翼から私目掛けて3本ずつ羽矢を発射した。それらはまるで、GPSによって正確に誘導されるハイマースの砲弾のようであった。
「流星六重雷」
『キュイン、キュイン、キュイン、キュイン、キュキュィィィーン』
私は即座にこれを躱すのは難しいと判断し、アイアンカイザー(鉄拳鍔)を使った流星の打撃で神狙撃必中矢を迎撃した――
『ドドドドドドォォォ~ン』
弾かれた神狙撃必中矢は地面に衝突して立て続けに爆発する。
「ハァッハッハッハッ~、貴様、動きが止まっているぞ」
魔人シャーキンはゴォ~と羽ばたき急上昇して頂点に達した――
『神狙撃必中矢』
奴は再び矢を4発放つと矢庭にキラリと光って急降下しながら、神龍偃月刀を振り上げて絶対不可避の必殺技を合わせて放った!
「神の雷を受けるがよい――神龍雷鳥衝――』」
神龍偃月刀から雷が発生し魔人シャーキンが雷の光で覆われると、勝利を確信したシャーキンはにやりと笑った。
奴は自身を電光石火の神の一撃として、零戦の如くこちらに向かって特攻してきた――
「勝機! 『林檎加速』」
私が林檎引力を使って魔人シャーキン目掛け急加速して突っ込むと、瞬時に4発の神狙撃必中矢は方向を転換し私の後を追い駆けた。
『お魚咥えたドラ猫~追っかけてぇ~』
走馬灯のようにあの旋律が私の脳裏を過った……。
「まだ――まだ――まだっ――ここだっ――縮空――」
私が魔人シャーキンと神狙撃必中矢の時空から消えた刹那……。
『ドッガァァァ~ン』
神龍雷鳥衝と神狙撃必中矢が衝突して衝撃と爆裂による大爆発が起きた!
「ぐわぁぁぁ……なんだとぉ~……」
自身の必殺技同士の大爆発で魔人シャーキンの動きが止まった……。
「ばっ、ばかな、やっ、奴はどこへ、どこへ消えた? まっ、まさか奴は神より速いというのかっ!?」
「流星雄猫ォォォ~!」
時空を越えて魔人シャーキンの背後に躍り出た私は、猫が小鳥を捕まえるように、側頭部にある大きな翼を左右の手で鷲掴みにした。それと同時に、私の左右の足で奴の腿の外側から巻き込むように挟んだ――
「ニャンパラリン!」
私は釣り天井固めを極めると、空中で三回転しながらぶっ飛びターボ加速し、真っ赤に燃え上がった魔人シャーキンを大地に叩きつけた!
『グワッシャャャーン』
「うぎゃぁぁぁぁぁ〜」
隕石が落下する程の強烈な勢いで地面に叩きつけられ、魔人シャーキンは真っ赤に燃えて黒紫色の魔素となって宙へ消え去った……。
クレーターように大きく円形に陥没)した地面の真ん中には、魔人シャーキンが手にしていた剣が突き刺さっていた。
私はその『神龍偃月刀』と『紫魔石』をアイテム袋にさっさと仕舞うと、セイラさんの下へ急いで駆け寄った――
「セイラさん、セイラさん、大丈夫ですか、大丈夫ですか?」
私はピクリとも動かずに横たわったセイラさんの肩先を叩きながら、耳元で大きな声で呼び掛けたが返事はなかった……。
一酸化炭素を吸ったためか、彼女の心肺は停止していたのだ――
「やばいよ、やばいよ、救命救急が必要だよ!」
私はセイラさんを上向きに寝かせて気道を確保すると彼女の真横に座した。
それから、自分の両手を重ねて彼女の胸の真ん中に置くと、体重を掛けながら1分間に100回程度の速い速度での心臓マッサージと、心臓マッサージ30回につき2回の人工呼吸を行った。
――この処置はあくまで人工呼吸であり決して接吻ではない――
私は息を切らしながら、並行して無詠唱で治癒魔法を唱えた。
「セイラさん、帰ってこ~い、帰ってこい、帰って来いよぉ~!」
『ヒール、ヒール、ヒール!』
「うっ」
『ドックン、ドックン、ドックン』
セイラさんが声を上げて息を吹き返し、彼女の脈が再びゆっくりと打ち始めた。
救命救急が功を奏して何とか心肺を蘇生することに成功したのだ! 未だ彼女の意識は戻っていないが、もう命に別状はないだろう……。
静寂の中で私はセイラさんを抱き抱え、連れの冒険者を呼んだ。
「シーラさん、シーラさ~ん」
「…………あ~ら、早かったわねぇ~もう終わっちゃったのぉ~?」
シーラはどこからともなくふっと現れて返事をした。
「思い掛けず強い神風が吹き荒れて、ペルシア帝国軍は竜巻に巻き込まれて海の向こうへ飛ばされてしまいした」と適当に説明したところ……。
「ほんとにぃ~、偶然もこれだけピンポイントで続くと必然じゃないのぉ~、まぁそんなこと分かっているけどねぇ~」とシーラは私の説明を余り信じていない様子だった。
「馬と荷馬車は無事ですか?」シーラの返事に知らんぷりして聞いてみたところ、
「だいじょうぶよぉ~、ほらぁ」
「…………ヒヒィーン、ヒヒィーン、ブッヒヒヒィ~ン」
荷馬車とそれを牽引していた馬が、手品のように何処からともなくパッと現れた。
――流石ですシーラさん――
「今回のクエスト……追加報酬もらわないと……割に合わないわねぇ~」
「……そうですね。冒険者ギルドに追加の報酬を掛け合ってみましょうか」
「それじゃぁ……後は宜しく頼むわねぇ~。私はこの辺でお暇するわ~。またどこかで逢いましょう……」
「はい、ありがとうございました」と軽く敬礼すると、
「……何億年前の御呪いかしらぁ~」
そう言うとシーラは何処ともなく、その場からぱっと消えてしまった。
「シーラはあのシーラパーナだな」私は100%確信していた。
ペルシア帝国軍の兵士たちが一斉にセイラさんに襲い掛かった時、あの場面で私が一番警戒すべき力を持つ強者は、魔人シャーキンではなく悪魔シーラパーナだった。
あの瞬間にシーラから途方もない魔力の奔出を感じたのだ。――駄目元で荷馬車の確保をお願いしたのだが――
獲物に忍び寄る影のような存在ではなさそうだが、あの妖艶な悪魔の目的は一体全体何なのだろう?
深く考えると今夜眠れなくなりそうなので、いつものように考えるのは途中でさっさと切り上げた。
それから、不本意ながらもお姫様――セイラさん――を献上品の荷馬車に乗せて、フランシス公国への帰路に就いたのだった…………。
ありがとうございました。
教会の子供たちに笑顔は戻るのでしょうか?
次回をお楽しみに!




